Balto/Strangers

Balto/Strangers
2017年 アメリカ
『よそものとして自身のルーツを探求する』

 引退してしまいましたが、把瑠都というお相撲さんがいました。あの方の名前は自身の故郷である旧エストニアが面していたバルト海から取られたものだそうです。そして本日、ご紹介するバルトというグループ。そのリーダーであるダニエル・シャロンはシベリア(ロシアの南東部)にある、バイカル湖のほとりで生まれ育ったとのことで、やはりバルト海からグループ名を取っています。(バイカルでも良かったのでは、と思わなくもない)

 幼少期をシベリアで過ごしたダニエルは、オレゴン州ポートランドへ移住。そこで2010年に結成された4人組のグループがバルトです。アメリカーナのルーツを探求しているダニエルが音楽性をリードする形でファースト・アルバムを完成させました。オレゴン州にある農業島(田んぼとかしかないのかな)のスタジオを発見した彼らはそこに数多くの楽器を持ち込み、9日間籠って作り上げたとのこと。アルバムでの音楽を「Mercurial(気まぐれな)」アメリカン・ロックンロールと命名しています。
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うーん、このジャケだと中古新入荷でエサ箱漁っててもスルーしちゃいそう。

 メンバークレジットにはありませんが、鍵盤が大活躍しています。ギター、鍵盤ともに残響のある高音が印象的な、抜けのいいアメリカン・ロックをやっており、この辺りは看板通りのサウンド。ただダニエルの出自が影響しているのか、メロディーには哀愁が漂っており、とにかく湿っぽい。アメリカ特有のカラッとしてサウンドとは一線を画しています。隙間が多く、土着的な雰囲気を醸し出しているのも特徴です。これがシベリアの風土なのかは分かりかねますが、異邦を感じるのは確か。感傷的にコブシを回すヴォーカルが素晴らしい。
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 ダニエルはシベリアで孤独な幼少期を送っていたそうです。その後、アメリカに渡ってからはアメリカーナを探求するほどアメリカの音楽を愛しつつも、いざ表現するときには自身のルーツであったシベリアの音が混ざってしまうことに気が付いたのでしょう。そして吹っ切れたタイトル『Strangers』。だからこその個性が発揮されています。次回作が楽しみ。

Balto - Shots In The Dark
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Spitzer/Loose Cannons

Spitzer/Loose Cannons
2017年 フランス
『バグルスとクラフトワークを合体させたような』

 バグルスとクラフトワークを合体させたような、親しみやすくレトロな電子音楽デュオをご紹介。

 フェイスブックは見つけたものの、フランス出身であることと兄弟であることくらいしか素性が明かされておりません。結成時期、拠点都市、ディスコグラフィーなど全て不明。リリースの痕跡が無いので恐らくデビュー作と思われます。
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公式ページでは、蛾が口から出てくる動画がジャケットとして紹介されています。
アルバム・ジャケットの絵を動かしてネット上で公開する時代が来ました。
動くべきかどうかはともかくとして、この絵ではあまりそそられませんでした。

 ヴォーカル曲とインストが混在しています。冒頭、クラフトワークを引き合いに出していますが、ロボットボイスではありません。語りかけるような落ち着いた歌声。AC/DCのアンガス・ヤングのようなギターリフをシンセサイザーで演じており、他にもトロッグスの「Wild Thing」調の曲があったりと、荒々しい70年代ロックのモチーフをスマートな電子音楽へ変換しているのが特徴です。感情を抑えたヴォーカルとシンセ、電子音だけでありながら、キャッチーなメロディーが散りばめられているので親しみやすさは抜群。

Spitzer live in the living room.  Monkey (Talkie)
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Stone Foundation/ Street Rituals

Stone Foundation/ Street Rituals
2017年 イギリス
『洗練されたブリティッシュ・ソウル』

  ストーン・ファンデーションという名前と、ストリート・リチュアルというタイトル。色々混じっています。更にポール・ウェラーがプロデュースを担当(2曲で作曲を担当している他、全曲のセッションに参加)しているイギリスのソウル・グループということで、聴いてみたくなりました。私は今回初めて聴きましたが、日本では既に認知されており、何度か来日も果たしているようです。
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 ウォーリックシャー出身の8人編成グループ。ヴォーカル&ギターを務めるニール・ジョーンズを中心に結成されたのち(結成年度は調べきれませんでした)、2011年にデビュー作を発表。これまで3枚のアルバムを発表しており、本作は4枚目です。ニール・ジョーンズは80年代モッズ・リバイバルを通じて、ノーザン・ソウルに傾倒したルーツを持っており、そのままストーン・ファンデーションの音楽性と繋がっています。尚、本作にはゲストとして、ウィリアム・ベルやベティ・ラヴェットが参加していることもポイント。
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 前作までのアルバムを未聴の為、比較は出来ませんが、ポール・ウェラー・プロデュースらしい、洗練されたブリティッシュ・ソウルを楽しむことが出来ます。うるさ過ぎずに主張するストリングス、爽やかな鍵盤、所々のんびりしたパーカッション、差し込まれるフルートなどからイギリスらしさがプンプン漂ってきます。キャッチーさは控えめながら、十分にポップで聴きやすい。声量控えめながらスマートなヴォーカルもナイス。熱は抑えられており、柔和なソウル・ミュージックとして魅力抜群です。

Back In The Game ft. Paul Weller
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Troubled Horse/Revolution On Repeat

Troubled Horse/Revolution On Repeat
2017年 スウェーデン
『誇張気味な所も素晴らしいヴィンテージHR作』

 マシンガンの応酬のようなツイン・ギターと、けれんみたっぷりにシャウトするヴォーカル、うねるリズム隊。70年代のハード・ロックを彷彿とさせる、荒々しく埃っぽいバンド・アンサンブルが素晴らしい。
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 トラブルド・ホースはスウェーデン、オレブロ出身のヴィンテージ系ハード・ロック・グループ。ウィッチ・クラフト(70年代の機材まで集めてアルバムを録音したことで知られる)のメンバー3人が、よりヴィンテージ色の濃い音楽性を目指して結成したのが、トラブルド・ホース。結成当初はベースが居たのですが、現在のメンバーにはギター二人、ヴォーカル、ドラムの4人しか居ません。2012年にデビュー作を発表しており、本作は2枚目となります。
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 アルバムにはベース、オルガンも加わっています。全編、男くさいハード・ロックが楽しめる内容。最初に書いたことでほぼ全てですが、加えるならブラック・サバスを彷彿とさせるスローで巻き付くようなギターリフや、ジューダス・プリーストのようなメロディックなツイン・ギターが随所で登場。緩急のメリハリがハッキリした楽曲展開と相まって、ドラマティックな印象を与えます。ライズ・アボブやメタルブレイドと契約しているヴィンテージ・ハード・ロック・グループということで期待していましたが、これは素晴らしいクオリティ。

Hurricane
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Rachel Newton/ Here's My Heart Come Take It

Rachel Newton/ Here's My Heart Come Take It
2017年
『ハープ弾き語りによるスコットランド民謡継承SSW』

 BBCラジオのフォーク・アワード2017やスコッツ・トラッド・ミュージック・アワード2016などに参加。スコティッシュ・トラッドを受け継いだ本格SSWをご紹介します。
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 グラスゴー出身のSSW、レイチェル・ニュートン。スコットランド民謡を現代的に解釈、受け継ぐことをコンセプトとして活動しており、英語の他、スコットランドの言語であるゲール語でも歌詞を書いています。自身はヴォーカルの他、ハープ、ヴィオラ、フィドルを担当しており、バンド・メンバーとしてフィドルのローレン、パーカッションのマティ、トロンボーンのマイケル、キーボードのサラの4人が演奏に参加。2012年にデビュー作を発表し、本作はサード・アルバムとなります。
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 一口にスコットランド民謡の現代化といっても色々塩梅があります。レイチェルの場合は、ハープの調べによる室内楽のような優雅さを強調しつつも、かなり原初的な解釈でトラッドをやっており、寒々しさが印象的。熱を帯びて跳ねるリズム隊、絹を重ねるような幻想的なキーボードが素晴らしい。スコットランド民謡における踊りの要素も強調されています。また、厳しさを秘めた清々しい歌声も魅力的。

「Here's My Heart Come Take It」

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