Sinkane/ Life & Livin' It

Sinkane/ Life & Livin' It
2017年 イギリス
『ルーツのスーダン音楽をポピュラーと融合させた濃厚な音楽』

 スーダン系イギリス人、シンケインによる4枚目のアルバム。アフリカン・ビートとロックを融合させる手法は、70年代から多くのブリティッシュ・ロック・グループや英出身SSWによって取り組まれてきたもの。シンケインもそれら先達と同じテーマに向かっていますが、サハラ地方をルーツとしたメロディー、ビートが独自の個性を発揮しているのがポイント。のどかで海の匂いを感じつつも、洗練されたディスコ・サウンドに仕上がっていて癖になる音楽です。
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 スーダン系イギリス人と前述しましたが、現在はニューヨーク、ブルックリンで活動しているとのことです。
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 東洋音階にも通じるゆらゆらとした横揺れが特徴のスーダンのメロディーが、ファンク、ディスコ、ロック等と巧みに融合。シンセサイザーの使い方はスペーシーで、ファンカデリックに影響を受けたとのこと。ブリティッシュ・アフリカンの音楽は、ドロドロとした粘っこさが薄れることがほとんどなのですが、シンケインの音楽の場合、洗練は確かに感じるものの濃厚さは損なわれていません。久しぶりに濃厚な無国籍音楽を楽しむことが出来ました。これはおすすめ。

U'Huh
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Randy McQuay/My Kind of Blues

Randy McQuay/My Kind of Blues
2017年 アメリカ
『ピードモント・ブルースの復活』
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 アメリカの若手ブルース・マンによる2枚目のアルバム。渋く深みのあるヴォーカル、ハンマー・クロウやトラヴィス・ピッキングといった伝統の奏法を駆使した流麗なアコースティック・ギターを、ホンキートンク・ピアノやハーモニカが盛り立てて、奏でられる演奏には酒場音楽のような軽妙さがあります。

 ブラインド・ブレイクやブラインド・ウィリー・マクテルを始めとする多くのブルース・マンを生み出したノース・キャロライナ州。その
地で育ち、ブルースに親しんだランディ・マッケイ。彼は16歳でアメリカ南東部へギターを片手に放浪の旅を敢行した後、ノースカロライナへ戻りバンドを結成。音楽活動を本格的に開始します。コンテストにも積極的に出場し、2012年のリー・オスカー・ハーモニカ賞、2015年のインターナショナル・ブルース・チャレンジといった賞を獲得。一方で2015年にファースト・アルバムである『Solo』を発表しています。
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 タイトルは「私なりのブルース」という意味でしょう。その言葉通り、かつてノース・キャロライナで栄えたピードモント・ブルースの特徴である軽やかなフィンガー・ピッキングは継承しつつも、よりファンキーな味わいがあり現代へと更新がされたブルースという感じがします。一人で盛り上がらず聴き手に寄り添うような優しい歌い方、演奏が素晴らしい。熱が籠っていながら落ち着きも感じられます。オールドスタイルのブルースで聴かれるフレーズが、そこかしこで受け継がれているのも好印象。
ファーストで気が付くことが出来ず申し訳ない、という気持ちになりました。素晴らしいブルース・マン。是非聴いていただきたい。

Randy McQuay Right Here
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Sweet Fuck All/Mission Accomplished

Sweet Fuck All/Mission Accomplished
2017年 アメリカ
『猪突猛進』

 ガラガラ声のヴォーカルに、スラッシーなヘヴィ・メタル・サウンド。モーターヘッドのフォロワーで間違いなし。戦車をあしらったジャケ、バンド名から連想するマッチョで男くさいヘヴィ・メタルが楽しめます。戦車ジャケと言えば、昔タンクというグループがいましたね。あそこまでドラマティックではありませんが、雄々しさではスウィート・ファック・オールも引けを取っていません。

 結成は2015年。フィラデルフィア出身の4人組です。デモ、ライブ盤を経て本作がファースト・アルバムとなります。ルーツはメタルの他にパンクにもあるようで、スキンヘッド・ロックンロールを標榜しています。
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 ほとんどの曲が2,3分で終わってしまう構成。全編疾走するロックンロールで、単純なコードを繰り返すだけのガチャガチャしたサウンドながら、エネルギッシュな演奏で聴かせてくれます。

 近年、彼らのような存在がどれくらい居るのか定かではありませんが、久しぶりにこういう音楽を聴くと新鮮に感じました。このような汚い音のロックンロールが継承されていることをうれしく思います。ギターソロのパートでは拙い部分もあるのですがそれが愛嬌の様に思えてしまう部分もあり。一方でオリジナリティーについてはまだまだこれからという印象。「Paths To Glory」「 Anti-World 」「Nobodys Is Fool」といったタイトルも微笑ましいです。

American Skinhead Pride
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Fleece/Voyager

Fleece/Voyager
2017年カナダ
『どんよりスペーシーなプログレ・サウンドに爽やかコーラスが舞う』

 ピンク・フロイドや中期ビートルズを想起させるファンタジックでスペーシーなサイケ・サウンドが特徴。変拍子を多用するプログレッシヴな音楽性は、クラシック・ロック・ファンにも受け入れられそうなもの。
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 カナダのモントリオールで2014年に結成されたロック・グループ、フリース。シンセサイザーとキーボードによる鍵盤二人体制の5人組です。本作は2ndアルバム。サイケデリック、ジャズ、グランジをブレンドしたロック・サウンド、と自身のページでは標榜しています。映像を想起させる幻想的なキーボードの絡み合ったサウンドも特徴で、先に挙げたようにピンク・フロイドやイエス、キング・クリムゾンなど、プログレッシヴ・ロックからの影響が伺えます。ベース、ドラム共に乾いており、エレクトロのような無機質さが印象的。このリズム隊のおかげで複雑なメロディーが続いても全くブレない芯が通っています。透明感のある高音ヴォーカル、厚みのある爽やかなコーラス・ワーク共に見事。強固なバンド・アンサンブルにより、重厚なプログレッシヴ・ロックを楽しむことが出来ます。重厚さから来る重々しさの他に、内省的な暗さが全編から漂うこともポイント。

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 一方で美しく柔らかいメロディーが散りばめられた楽曲ながら、難解な展開が祟ってあまり頭に入ってこないのはマイナス・ポイント。

Fix It Together
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Procol Harum/Novum

Procol Harum/Novum
2017年 イギリス
『ファーストのジャケ・オマージュとは裏腹に骨太な内容』

 新作のジャケット・デザインはファースト・アルバムのイラストを参考にしたとのことで、原点回帰の匂いがプンプンします。安直だなぁ、と思いつつもこういう仕掛けをされると聴いてみたくなります。
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 プロコルハルムは、オルガンを軸としたクラシカルなロック・サウンドが特徴の英ロック・グループ。1960年代に結成、ロック黄金期となる1970年代にいくつかの名盤を残しています。邦題「青い影」で知られる代表曲「A Whiter Shade Of Pale」は日本でも人気があり、それが収録されているのが本作のオマージュ元となったファースト・アルバム(1968年発表)でした。またユーミンが初期に影響を受けていたことに言及しており、2012年にはジョイント・ツアーによる来日が実現しています。
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 近年のプロコルハルムの事情については疎いのですが、2003年に発表したアルバム「Wells On Fire」以来、14年振りのアルバムとのこと。オリジナル・メンバーはヴォーカル兼ピアノ奏者のゲイリー・ブルッカーのみで、ジミヘン・フォロワーのギタリストとして知られるロビン・トロワーや、初期作品でオルガンを弾いていたマシュー・フィッシャーなどの黄金期メンバーが不参加です。オルガン奏者にはジョシュ・フィリップスが加入しており、グループの特徴であるツイン・キーボード体制は維持されています。ロビン・トロワーの代わりとなるギタリストには、70年代、ジャズ・ロック・グループIFに参加していたジェフ・ホワイトソーンが起用。尚、目玉としてクリームの諸作で知られる作詞家、ピート・ブラウンが全面的に参加しています。

 本作の音楽性について。クラシック由来の荘厳な雰囲気とブルース・ロックが混ざり合った個性がファーストの魅力だとすれば、それは再現出来ていません。最大の要因はオルガンでしょう。各曲のイントロではクラシカルな味わいを演出しておきながらすぐ引っ込んでしまうのは物足りません。ほのぼのとしたパブ・ロック的なブルース、ロックンロール・ナンバーが多く、『A Salty Dog』や『Home』を彷彿とさせる作風。ジャケットから受ける印象とは異なるものの渋いブリティッシュ・ロックが楽しめるアルバムです。骨太で泥臭いバンド・サウンドはおじいちゃんバンドとは思えないパワフルさ。そして、塩辛い歌声に変貌したゲイリー・ブルッカーのヴォーカルが表情豊かで素晴らしい。

 また、質の高い楽曲群が揃っていることもポイント。黄金期を支えた主要ソングライターの二人が去っている状況で期待値が下がっていたのでうれしい驚きでした。さすが、ソロとしてのキャリアも長いゲイリー・ブルッカー。見直しました。
Soldier
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