穂高亜希子/あの頃のこと/風、青空

穂高亜希子/あの頃のこと/風、青空
2015年11月 日本
『今回は「激」もちょっぴり入っています。』

 11月3日は文化の日であり、レコードの日でもあったのか。
賛同ミュージシャンがレコードを一斉に出すという試みに穂高亜希子も参加していたということで、
通販で購入してみました。
そうですよね、こういうのはきちんとショップに行って買わなければならないとは思うのですが、
近所にレコード・ショップが無いので仕方がないのです。

 一応、7インチ・シングルという体裁ですが、6曲入りのCDが付いておりミニ・アルバムとも言えます。
 穂高亜希子のプロフィールなどは過去の記事をご参照ください。

 本作では中村宗一郎が録音/ミックス、マスタリングを担当。
演奏はオルガン、エレキギターを穂高亜希子が担当。
ということで、ピアノや二胡との合奏といった
ファースト、セカンドで見せたスタイルとは異なる(弾き語りに近い)宅録作品になっています。

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 歌声がダイレクトに伝わるすっきりとした聴き心地というのが最初の感想。
木に寄り添ったジャケットの印象もあり、
相変わらず内省的で穏やかながらも少し開けた感じを受けました。

 アレンジは変わりましたが、歌唱の魅力は不変。叙情的なメロディーに乗る、
静かな語り口ながら意志の強い言葉。
清々しく凛とした歌声。
と思っていると、終盤に挿入される「風、青空」でのエレキギター・ソロ(ディストーションあり)は、
大変ドラマティックで鳥肌が立ちました。
間違いなく中村宗一郎ワークス。
今回は「激」もちょっぴり入っています。

穂高亜希子 with 熊坂路得子 - 風、青空 (Live at 喫茶茶会記, 3 Mar 2015)
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土岐麻子/Bittersweet

土岐麻子/Bittersweet
2015年7月 日本
『田舎の不惑のおじさんも』

 そういえば書いていなかった土岐麻子の新譜について、今日は記事にしたいと思います。
往年のユーミンを感じさせる、などと書くのもそろそろいいかなというくらい
どっしりとした音楽性がここ数作で確立されており、
完成度が非常に高いことは聴く前から想定していました。

期待通りのアルバムでしょう。

 今回はジェーン・スーさんという方をコンセプト・プロデューサーとして起用しているとのこと。
「私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな」という本が
ヒットしたのを機に、広く活躍している人とのこと。
申し訳ありません。全然知りませんでした。
これは主に作詞面でのコンセプト確立に貢献したということでしょう。
ここで「わかるーぅ、そういうことってあるよね。」とか歌詞に共調出来たならば、
話がスムーズなのですが、
吾輩には「面倒くさいこと言っているな。」とか思ってしまうところも多々あり。
テーマが「都会で暮らす不惑の女性のサウンドトラック ~女は愛に忙しい~」だからして。
世の特定の女性たち(上記「私たち」を始めとする)に向けてのアルバムだということですね。

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 今作では渡辺シュンスケが10曲でプロデュースを担当。
前作のプロデュースを始め、長くサポートしてきた川口大輔は残り2曲を担当しています。

打ち込みやプログラミングを多く使用している一方で、ビートは穏やか。
ピアノやストリングスを強調したサウンドが特徴です。
前作がソングライター大集合の非常にバラエティーに富んだアルバムだっただけに、
今回のアルバムは少し落ち着いた雰囲気を感じさせます。

拘った歌詞はさすがに面白い。楽曲も素晴らしいものが揃っています。
高校生SSW橋口なのめが2曲で参加しているということで注目していたのですが、
完成度の高さに唸らされました。
「地下鉄のシンデレラ」の複雑な転調によるドラマティックな曲展開、
シックな「ラブソング」、共に素晴らしい。
こういった新星に目を付ける積極性が鮮度の良い作品作りにつながるのでしょう。

土岐麻子 / 「BOYフロム世田谷」PV
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北山真WITH真○日/冷凍睡眠( COLD SLEEP )

北山真WITH真○日/冷凍睡眠( COLD SLEEP )
2015年8月 日本
『思いがけない新作』

 日本では貴重なジェネシス・フォロワー、新月。
日本的な伝奇要素も取り入れた唯一作は演劇要素もあり、素晴らしかった。
その後、ヴォーカリストの北山真は音楽活動を続けており
17年振りに突然リリースされた新作が本作となります。
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 メンバーは、清水一登(kbd/b/cl:ex-チャクラ、ヒカシュー、KILLING TIME/現アレポス)、桜井良行(b/g:EAST WIND POT、HAL)、さらにアレポスのれいち(ds/vo:ex-どくとる梅津DIVA、はにわオールスターズ)等、で形成されています。(宣伝文より引用)

 メロトロンとシアトリカルなヴォーカルを前面に出した叙情的でドラマティックなプログレッシヴ・ロック。
それをやってくれているので、ファンとしては喜びひとしお。
実際のところ、新月の頃にあったような、
高音での歌声はありませんがその代わり発声がはっきりとしており、
歌詞を見なくても聴き取れるようになったのはうれしいところ。
往年の雰囲気はそのままです。

 作曲面では元新月の花本彰が1曲提供している他は、北山真がリード。
その為あからさまにジェネシス・フォロワーなサウンドではなくなり、
どちらかと言えばキング・クリムゾン(スターレスの頃やエピタフの叙情性)
を彷彿とさせる楽曲が多くなっているように感じました。

 メッセージはより前向きなものになっています。

 和を感じさせる爽やかな音色の吹奏楽器、キーボード、荘厳なメロトロン、
うねりをあげるギター、屋台骨を支えつつ要所では
ドンドコとドライブするリズム隊によるアンサンブルは、強力。
貴重なアルバム、楽しませてもらいます。

今回は無念の動画無しで。
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ラッキーオールドサン/ラッキーオールドサン

ラッキーオールドサン/ラッキーオールドサン
2015年7月 日本
『本年度を代表する新人若年寄デュオ』

 ちょこっと試聴して「おっ、これはいいフォーク・デュオだな。」と思って購入した次第。

 ラッキーオールドサンは大学生の男女二人によるデュオ。
スタンダードとして知られる「ラッキーオールドサン」から名前を取ったという経緯が渋い。
本作がファースト・アルバム。デュオではありますが、
彼ら二人のギター&ヴォーカルに加えてリズム隊、
バンジョー、トランペット、ヴァイオリン、
ビブラスラップ(わんわんわんさんにこの間教えていただいた楽器ですね)、
タンバリンと多彩なスタジオ・ミュージシャンを起用しています。

 ルーツとしてカントリー、もしくはそれを基盤としたカントリー・ロックをお手本としている印象。
となるとハンバート・ハンバートやビューティフル・ハミングバードなどが思い出されますが、
それらほどトラッド寄りではなく緩く脱力しています。
キッチンが近いかもしれません。
また(自分としてはフォーク・デュオと思っていたのですが)ポップ・デュオと名乗っているだけに、
アルバム全体を俯瞰するとカントリー寄りな曲ばかりでなく、
渋谷系っぽいギター・ポップやソウルを下敷きにした曲もちらほらとあり。
ただ、それらの曲にも、古き良きアメリカへの憧れが芯として通っている感じがします。

 一部アレンジが異なる曲もありますが、
ほのぼのとしたカントリー・ロック調のアンサンブルこそが彼らの真骨頂でしょう。
ただ、二人以外のスタジオ・ミュージシャン達が大人しすぎるのが気がかりではありました。
看板となる女性ヴォーカルは脱力した歌声でリラックスさせてくれます。
そして、彼女だけの歌声では表情の変化が乏しくなってしまうところを、
温かみのある男性ヴォーカルがカバー。

 はっぴいえんどや松本隆辺りの影響が濃い歌詞も青春っぽくていいです。

坂の多い街と退屈
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湯川潮音/セロファンの空

湯川潮音/セロファンの空
2015年5月 日本
『セロファンのメガネを用意するくらいの気持ちで。』

 トラッド系SSW、湯川潮音による6枚目のアルバム。
過去2枚は穏やかな作品が続いていましたが、
今回のアルバムはバンド編成にシンセ、管楽器を取り入れた、かなり音数の多いものとなっています。
色セロファンを用いた、カラフルな色眼鏡を掛けている湯川潮音。
そんなアルバム・ジャケットのイメージ通り、サイケデリックな雰囲気が満載です。

主な参加メンバーは以下の通り。
徳澤青弦(Vc / Throwing a Spoon、anonymass)
長岡亮介(Gt / ペトロールズ)
千葉広樹(Ba / Kinetic、サンガツ、蓮沼執太フィル、rabbitoo)
山本達久(Dr / NATSUMEN、真夜中ミュージック)
藤原マヒト(Pf,Acc / WORLD STANDARD)
武嶋聡(Fl,Cl)
ゴンドウトモヒコ(F.Hr,Euph / 蓮沼執太フィル、pupa、anonymass、高橋幸宏 & METAFIVE)

 これまでトラッドをベースとして楽曲を作成してきた彼女ですが、
本作リリース前にブルックリン音楽に大いに感化されたとのこと。
アフリカ、ラテン音楽などの影響も強く、
様々な人種が融和して生み出されているというブルックリン音楽。
実験音楽が盛んな土地としても知られています。
個人的にはブルックリンと言えば、ルー・リードの猥雑な雰囲気を思い出します。
そこは湯川潮音の曲だけにあくまでも清新さは失っていませんが、
大らかで雑多な雰囲気を取り込んでおり、新しい興味が作品に巧く作用していることが伺えます。
前述したサイケデリックな要素やプログレッシヴ・ロックっぽさ
(例えるならギルモア・プロデュースのケイト・ブッシュの如し)があるため、
最初は面食らいます。
しかしながら随所に挟み込まれるアコギ弾き語りのバラードの効果もあり、すんなり聴き通せます。
作品の性質上、
メロディーが後ろに引っ込んでしまった曲が何曲か見受けられるのは仕方ないところでしょう。

 最後に彼女の歌声ですが、トラッド成分が少ないため、
いつものような神秘性は控えめながら、伸びやかな発声で清々しい魅力を発しています。

湯川潮音「birch」ショートMV
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