永野亮/はじめよう

永野亮/はじめよう
2012年 日本
『こんなに爽やかなソウル系SSWも珍しい』

 あくまで主役にはならない控えめな主張、しかし耳を澄ますととてもグッド・ミュージック。
2012年、30秒から1分のCMで多くの音楽ファンを惹きつけた、永野亮。
本作はデビュー・アルバムです。
元々、APOGEEというオルタナティヴ・ロック・グループの中心人物であった彼ですが、
このアルバムの頃はCM音楽作家としての活動を盛んにしていました。
それらの楽曲を中心にまとめたのが本作となります。

 自身のアコギ、ピアノによる弾き語りを中心としたバンド編成での録音がされています。
楽曲群は、フォーキーなアコースティック・ミュージックという趣。
ブラック・ミュージック、特にニュー・ソウルの影響を反映させた温かみのあるメロディーが特徴です。
CM曲(ソングではなく曲)であることを意識したコンパクトに凝縮した構成が素晴らしい。
11曲が35分に収まっています。

 正直ライブで声量が足りているのか不安になる、繊細且つ柔和な歌声も魅力的。
英語やハミングの曲も混在しています。
以前書いたように日本人の英語曲には否定的な僕ですが、
ここでも曲の良さゆえ許容しています。
恐らくCM曲という性質ゆえ、耳に残りすぎない(広告のメッセージを邪魔しない)英語が
使われるのでしょう。

 今後の活躍を期待せずにはいられない、新世代シティ・ポップの傑作。
なのですが、本作以降、ソロとしての活動は鳴りを潜めており、
代わってAPOGEEの活動が復活。
APOGEEの存在も重要でありますが、是非再び永野亮として活動を再開してもらいたい。
「はじめよう」はもう分かったので「続けよう」が欲しい。
ファンとして待ちわびております。

「D.R.E.A.M.S」
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Jessica Pratt/Jessica Pratt

Jessica Pratt/Jessica Pratt
2012年 アメリカ

『現代アシッド・フォーク・シーンのサンプルとして』
 
サンフランシスコを拠点として活動するシンガーソングライターのデビュー・アルバム。

 サイケデリックの本場、サンフランシスコには
アシッド・フォークを指向するミュージシャンが今尚多いようです。
彼女もそんな一人でしょう。
弾き語りのみで構成されているシンプルなサウンド。
リンダ・パーハクス等の流れを汲んだ
気怠げで幽玄な音世界は、70年代アシッド・フォークと同等の質感を持っています。

 楽曲は悪くはありませんが、特に引っかかりが無い印象。弱いと思います。
しかしヴォーカルはハスキーな声質で、どこか捨て鉢なところが感じられて魅力的。
落ち着いた雰囲気で心地よく聴けることでしょう。
白黒のポートレイトによるジャケもいいですね。

 まだまだアンダーグラウンド・シーンには、
彼女のようなミュージシャンはゴロゴロしています。
ただメディアがほったらかしているだけのこと。
是非、本作からアシッド・フォークの道に入ったならば、
底なし沼のような現代アシッド・フォーク・シーンを探求して欲しいと思います。

「Mountain'r Lower 」
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ママレイド・ラグ/デイ・アンド・ナイト・ブルース

ママレイドラグ/デイ・アンド・ナイト・ブルース
2012年 日本

『ソロとなってからの最高傑作』

 最近、70年代に回帰した音楽を指向するミュージシャンが
増えてきたような気がします。
今日はその道の第一人者であるママレイド・ラグの最新作をご紹介。
 
 70年代アメリカン・ロックやSSW作品、はっぴいえんどなどの影響を受けた
若年寄ロック・バンドとしてデビューしたママレイド・ラグ。
ファーストで喫茶ロックの旗手として注目されるや、
よりポップになったセカンドでCMソングに抜擢。
一気にブレイクするかと思いきや、
ソングライターの一人が脱退、
色々あって(大分ざっくりと)田中拡邦のソロ・プロジェクトとなりました。
本作は去年リリースされた5枚目のアルバムです。

 全楽器を彼が担当しており、アコギを中心とした
シンガー・ソングライターらしい作風です。
楽曲の質は、今回も文句なく高いです。
ただ、演奏面ではピアノやリズム隊などを、
一人で録音しているだけに、
アンサンブルにスケールの大きさが感じられません。
これをバンドで鳴らしたら・・・・・・
想像するともったいない思いがします。
とは言え、故・大滝詠一を彷彿とさせる甘い歌声と、
ブルージーなギターの素晴らしさは健在。
初期のはつらつさは失ったものの、
代わりに小坂忠のような枯れた味わいを手に入れています。
これは素晴らしい歳の重ね方。

「いつでも どこでも」
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