IVAN FISCHER/BRAHMS:HUNGARIAN DANCES

IVAN FISCHER/BRAHMS:HUNGARIAN DANCES
1998年 イタリア
『鬼軍曹、恐るべし』
 クラシックは少しずつ、曲毎の名演を集めています。
そんな中、ブラームスは本作で3枚目となります。
ブラームスの前回の記事はこちら
 それにしても本作のジャケは愉快。これはレコードでも映えそうです。
1998年でも素晴らしいジャケット・デザインはあるのだな、と感心しました。
41S8HRC9BGL.jpg

(本来は見開きジャケ)

ハンガリー舞曲集:ハンガリーのジプシー音楽をもとにピアノ用に編曲したもの。
もともとは、1853年にドイツ巡業中、
行動を共にしていたヴァイオリニストのレメーニが当時流行していた
ジプシー音楽に興味を抱いたのがきっかけとのことです。
民族音楽に新しい息吹を、という手法は今でも試みられるものですね。
この試みは大成功したのですが、その一方で民族音楽をもとにしたことが原因で、
作曲などの権利でかなりゴタゴタしました。
裁判も行われたとのこと。尚、本作に収録されているハンガリー舞曲集には、
ブラームスが編纂したものに加えて、ドヴォルザークが編曲したものなども加わっており、
時代を通じて内容が更新されていることが実感出来ます。

本作について:演奏はブタペスト祝祭管弦楽団。
録音当時はハンガリーを代表する新世代のオーケストラでした。
指揮者フィッシャーは解説を全曲分付けてくれており、
ハンガリー舞曲集に新しい解釈を加えようとしている意気が感じられます。

 残念ながらわたしは本作でハンガリー舞曲集に触れることになったので、
進化の具合が実感出来ませんでした。
こちらでは元々、ピアノ曲として発表されたものを管弦楽としてリアレンジされています。
起伏が激しくジプシー音楽としての勇壮さ、華麗さが実感出来る一方で、
ブラームスらしいセンチメンタルなメロディーも共存。
演奏はヴァイオリンのきびきびした調べが印象的です。
全体的に躍動するリズムが強調されており、
ビシバシ来るなぁ、と思っていたら指揮者のフィッシャーは鬼軍曹と呼ばれているのだそうで。納得。
改めてジャケを見るとこわい。
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S.T.S.I. Ensemble from the Academy of Art and Dance, Surakarta/JAVA GAMELAN OF SURAKARTA

S.T.S.I. Ensemble from the Academy of Art and Dance, Surakarta/JAVA GAMELAN OF SURAKARTA
1992年 インドネシア
『王様気分』

 ガムラン音楽はバリ島のものをCDで持っていたので、本作で2枚目。
こちらは同じインドネシアでもジャワ島のガムランだそうです。
本作は邦題として「王宮のガムラン」というタイトルが付いているのですが、
そのタイトル通り、ジャワのガムランは王宮の音楽として成長してきたという背景を持っています。
お祭りや祝い事でのどんちゃん騒ぎに使われる、
派手なバリのガムランとは異なるとのこと。

 王宮の音楽だけに規模も大きく、楽隊は青銅の鍵盤楽器、
ゴング、太鼓、木琴、竹の竪笛、声楽などで構成されており、
鍵盤楽器やゴングは各音階ごとに異なるものが用意されているとのこと。
それを整然と並べるとこのようになります。
gam1.png

並んでいる楽器の数は凄いですが、
実際に演奏するのは20人程度で人が入るとこのようになります。
gam2.jpg


うーむ、こうしてみると鍵盤とゴングの担当者は、
自分の担当するエリアが広いですね。大変そう。

 本作はインドネシアが伝統音楽を受け継いでいくために結成された、
スラカルタ・インドネシア芸術学院部楽団による92年の現地演奏
(ジャワ州スラカルタ市の学院内)を収録しています。
既に書きましたが優雅な王宮音楽であるジャワのガムラン。
「コロコロ、ガラガラ、ドッシャーン」という感じの
バリのガムランに慣れていた自分は少々面食らいました。
笛も鍵盤も太鼓も、全てが泰然としていてゆったりとしたリズムに蕩けていると、
すぐに眠りに付けそうです。
インドネシアに伝わる神話を朗々と歌う男女のヴォーカルや詠唱の存在感が大きいのもポイント。
ライナーには沖縄民謡との類似点が挙げられていましたが、納得が行きました。
一番短い曲で8分、長い曲で34分あり、計3曲。
歌の意味も追えないので退屈する部分もあり。
しかし、ジャワ・ガムランならではの繊細な残響の重なり合いが幻想的で、
しばしのトリップ感覚が味わえます。

Javanese gamelan: music and dance
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DEL AMITRI/Change Everything

DEL AMITRI/Change Everything
1992年 イギリス
『90年代型フォーク・ロックの代表作』

 デルアミトリの代表作『Change Everything』のデラックス・エディションが
いつの間にかリリースされており、しかも中古でゲット出来ましたのでご紹介。
 
 以下、来歴をどうぞ。
グラスゴー出身のフォーク・ロック・バンド。(名前はイタリアン・プログレだけれども)
82年、ヴォーカルのジャスティン・カリーとギターのイアン・ハーヴィーを中心に結成。
85年、『Del Amitri』でデビュー。
89年のセカンド『Waking Hours』ではシングルのいくつかがヒット。
その勢いでアメリカ・ツアーも成功させる。
手応えを掴んだバンドは、サード(本作)『Change Everything』で
ポップ路線へと舵を切り、勝負に出る。
結果バンドを一段上へと押し上げる出世作となった。
以降も佳作を発表し続けますが2002年『Can You Do Me Good ?』を
最後に新作の便りは途絶える。ライヴは行なっている模様。

 近年は少し寂しい状況のバンドです。
しかし、重苦しくモダンなグランジ全盛期に、
フォークロック・バンドが活躍できたことは快挙でしょう。
ただルックス面がネックになったのか、日本ではイマイチ人気が盛り上がらりませんでした。

 既に述べたとおり、本作はポップ化が図られたフォーク・ロック作。
サウンドはダイナミックになり、メロディーもよりキャッチーに。
アメリカナイズされており、
例えるならロビン・ザンダーのソロからくどさを抜いて爽やかにした感じでしょうか。
メロディーの充実こそが本作の魅力となっています。
そして、イギリスらしい濃厚さと色気を感じさせる、ソウルフルなヴォーカル。
作曲も手がけており彼がバンドの要であることは間違いありません。
バンド・アンサンブルはどれだけ派手な曲になろうとも透明感を失わないのが特徴です。
特に繊細な英フォーク・マナーを持つギターは貢献度大。

 90年代を代表するアルバムですが、前述した通り日本での認知は低いです。
この機会に再評価されるとうれしいな・・・せめてこちらをご覧の皆様には、と。

 さて今回はデラックス・エディションなので追加トラックについても少々。
ディスク2はシングルB面曲、及びレアな未発表曲となっています。
ディスク1とは一切曲が被っていないため、聴き応えがあり且つ便利なディスクと言えます。
新規リミックスやライヴ音源(両方共入っていますけれども)でお茶を濁すデラックス・エディションが多い中、
本作は当たり!ファンにもおすすめです。

本来なら代表曲「Always the Last to Know」は外せないのですが
そちらはリンクで済ませるとして、ここはディスク2の音源をどうぞ。

「Cindy Incidentally」
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Underworld/Dubnobasswithmyheadman

Underworld/Dubnobasswithmyheadman
1993年 イギリス
『昼休みのぼやぼやタイムに』

 テクノを代表するグループの一つ。
本作は、3人組として再出発したアンダー・ワールドのサードにして再デビュー作。
ちなみに僕は再デビュー後のアルバムでは、
人気作『Beaucoup Fish』しか持っていませんでした。

 『Beaucoup Fish』はクッキリハッキリしたテクノでメロディーもビートも派手だったのですが、
こちらはそれに比べるとダークなイメージ。
整然とした4つ打ちに、冷たく近未来的なシンセサイザー、
ゴシック調のエコーを掛けたヴォーカルが舞う。
テクノ然としたサウンドで、ロックへの接近は図られているものの、
次作以降に比べると控えめな印象ですっきりと聴けます。

 刺激や分かりやすさでは後の作品群に譲るものの、
テクノの魅力と言う意味では、落ち着いている本作が一番なのかもしれません。
ディープでぼんやりとのめり込めるスロー・テンポの曲だと、より効きそう。

尚、2001年再発盤にはボーナスcdが付いており、代表曲である「Rez」と佳作「why why why」
が収録。これらはファンから本編と同等以上の評価が与えられているので、
今から聴くならそちらが良いでしょう。
自分は中古で安く手に入れたため、その2曲はまだ聴いていません。
(youtubeリンクで聴きました)

 革新的な衝撃こそ受けなかったものの、丁寧に作られたテクノで
非常に気持ちよかったです。

「M.E. (Goodbye Mother Earth) 」
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John Martyn/Cooltide

John Martyn/Cooltide
1991年 イギリス
『研究成果、一区切り』

 前回レビューした1996年作『AND』、1993年のカバー・アルバム『No Little Boy』、
1992年のセルフ・カバー『 Couldn't Love You More 』
と精力的なリリースが続いていた90年代前半。
その先鞭を切ったのが本作『Cooltide』 (1991)です。

 レーベルはパーマネント。
アイランド在籍中から使用している CaVa Sound Workshopsにて録音しています。
プロデュースは次作『AND』同様、スペンサー・カズンスが担当。

John Martyn - guitars, vocals
Spencer Cozens - keyboards, bass synth
Foster Patterson - keyboards
Alan Thomson - bass ("Same Difference", "Call Me")
Dave Ball - bass ("Number Nine")
John Henderson - drums
Aran Ahmun - drums ("Number Nine")
Miles Bould - percussion
Andy Sheppard - soprano sax
Joe Locke - vibes
Jessica King - backing vocals ("Same Difference")

 大学の最終試験のために録音途中に離脱したカズンスに代わり、
フォスター・パターソンがキーボードを担当しているとのことです。

 雄大なフレーズが印象的なキーボード、シンセサイザーを軸に、
掠れたヴォーカル、揺らめくギター、ゆったりとしたリズム隊。
そこに、サックス、ヴァイヴが落ち着いたジャジーな音色で彩っており、
大らかでぽかぽかとしたアンサンブルが楽しめます。
さしずめ、停泊している小舟で流れていそうな音楽。

 従来通り、テクノ、ソウル、ワールド、ジャズ、フォーク等
様々な音楽をごった煮した彼でなければできない音楽になっています。
集大成的な内容は、アイランド期後期の音楽性に決着を付けたアルバムとも言えます。
キーボード主導の瑞々しいメロディーが充実しており、
陽光のような温かく開放的なイメージも印象的。

「Jack the lad 」
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