STEELEYE SPAN/Please To See the King

STEELEYE SPAN/Please To See the King
1971年 イギリス
『「生真面目さ」が伝わってくるエレクトリック・トラッド』

 以前、英キャッスル・レーベルからリマスター盤が再発されていたのですが、本作のみ買い逃してしまっていました。初CD化の盤は音質が激悪だったのでずっと探していたのですが、あってもプレミア価格でげんなり。しかし遂に初期3タイトルがリマスター再発されることになりました。ありがとう!
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 フェアポート・コンヴェンション、ペンタングルと並ぶ3大フォーク・ロック・グループの一角、スティーライ・スパン。英トラッドを探求すべくフェアポート・コンヴェンションから脱退したアシュレイ・ハッチングスを中心として、1970年に結成されました。初期にはトラッド色の強い硬派なグループでしたが、やがて時代と共にポップ化。硬軟ともに柔軟に対応するグループという印象もあります。本作は硬派な時期にあたるセカンド・アルバムです。

 本作より英フォークを代表するギタリストであったマーティン・カーシィと、フィドル奏者ピーター・ナイトが加入。またドラムレスで録音されています。

 「生真面目さ」が伝わってくるエレクトリック・トラッドの数々は、荘厳ではあるもののとっつきにくい雰囲気がプンプン。朗々と歌い上げるマディ・プライアの歌声やリズミカルなフィドル、厳かなギター等によるアンサンブルからは緊張感がビシバシと伝わり、背筋が伸びてしまいます。英トラッドの凄みをそのままエレクトリック化している強力なアルバム。

Lovely on the Water
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柳田ヒロ/Milk Time

柳田ヒロ/Milk Time
1970年 日本
『ロマン溢れる、日本ロック誕生期のインスト作』

 このアルバムはまずジャケですね。デザインは木村道弘氏が担当。柳田ヒロが本作の前に参加していたフード・ブレインのジャケも担当しており、そちらでは象がモチーフとなっています。やはりセットで揃えたくなる!内容も連続性を感じさせるものとなっています。
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 当時、一流のキーボード・プレイヤーであった柳田ヒロがリーダーとして初めて録音したアルバムです。他のメンバーにはギター水谷公生、ヴァイオリン玉木宏樹、ドラム角田ヒロ、ベース石川恵樹、フルート中谷望という布陣。豪華であります。フード・ブレインと同様にインプロヴィゼーション重視のセッション・ナンバーが続く内容でありますが、メロディー重視の姿勢が伺える点や、ブリティッシュ・プログレからの影響を感じさせる叙情味が特徴。

 初ソロ作ならではということなのか、 フリー・ジャズの影響も強いインプロヴィゼーション祭りナンバーと、ほのぼの曲が混在しており、その落差が激しいのは気になる所。日本のロック誕生期だからこその熱気が感じられるのは確かです。

youtube動画無し。
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BELINDA BELL/WITH OUT INHIBITIONS

BELINDA BELL/WITH OUT INHIBITIONS
1972年 イギリス
『ド派手な映画音楽のようなジャズ・サウンドがアツイ』

 サンシャイン・ポップ系ソフト・ロックの人気作であったセカンドは、2012年に再発された際に入手していました。一方でこちらのファーストは2014年に再発(共にBIGPINKより)されていたのですが、どんな内容か全く知らなかったので長らく放置していました。

 ベリンダ・ベルはイギリスのポップ・シンガー。デビュー前にはスウェーデンで音楽活動をしていたようで、本作もスウェーデン録音がされています。作曲はしない専任歌手であり、本作ではウロデック・グルゴウスキーが作曲とアレンジを担当。ウロデック・グルゴウスキーはスウェーデンで活躍するジャズ系鍵盤奏者とのことで、この時点で自身の名義でアルバム・リリースを果たしています。
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 ジャズ系プレイヤーが集まっての録音。実際、ジャジーではあるものの、ストリングスはてんこ盛りであり、ドラムがかなりタイトで、映画音楽寄りのハッタリ満点な作風が特徴です。表情豊かに歌い分け、主張の激しい演奏陣に負けないパワフルな声量を持つベリンダ・ベルのヴォーカルは素晴らしい。ストリングス・アレンジは、21世紀に聴くと古臭さが目立つ印象。とは言え、ファーストとは異なるノスタルジックな魅力を楽しむことが出来ます。

Delivery Of Love
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Eleanore Mills/This Is Eleanore Mills

Eleanore Mills/This Is Eleanore Mills
1974年 アメリカ
『甘くゴージャスなソウルが聴きたい、という時に』

 スウィートソウルの「隠れた名盤として知られている」(この表現はおかしいけれども)
エレノア・ミルズの唯一のアルバム。ストリングス・アレンジがてんこ盛りのいわゆるスウィートソウルというジャンルに相当する音楽をやっています。
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 本作以降はゲスト・ヴォーカリストとして様々な作品に参加することになるエレノア・ミルズだけに、甘くゴージャスな歌声は魅力的です。低音が渋く、音域が広いのも特徴。しっとりとしたバラードを得意としており、昼食後に聴くと、とろーんとしてきて気持ちよく眠れそう。間に挟まれたアップテンポ・ナンバーの出来も素晴らしく、よくまとまっているアルバム。

 甘くゴージャスなソウルが聴きたい、という時には重宝しそうです。

 恐らく制作過程でのことだと思いますがモコモコと膨らんだような音質で録音されているところがあり、気になりました。

He Said Goodbye
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柳田ヒロ/HIRO

柳田ヒロ/HIRO
1972年 日本
『誰かこのアルバムの曲をカヴァーしてください』

 日本のロック誕生時代を支えた鍵盤奏者、柳田ヒロのソロ3枚目のアルバム。個人的な話で恐縮ですが、何度かのCD化があったにも関わらず、リマスター盤が出てから買おうとスルーしていた一枚。この度、紙ジャケリマスター盤でグリーンウッドから再発されて購入しました。
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 前々作『Milk Time』がプログレ、ジャズ・ロック的なアプローチのインプロヴィゼーションが冴えわたるアルバムであり、前作がサンズ・オブ・サン名義によるソフト・ロック・アルバム。続く本作は、両方の要素を感じさせる過渡期のアルバムとなっています。清々しいピアノ・ソロ「NOTHING」からシャッフル「海のサンバ」というインスト2連発でスタート。『Milk Time』とは異なる、朗らかで海を感じさせる雰囲気が印象的。その後は松本隆作詞によるヴォーカル・ナンバー7曲を中心としてインストを交える構成となっています。サンズ・オブ・サンに比べると流麗なキーボードやブルージーなギターなど、演奏のスケールが大きく、ストリングスが控えめという印象。伝説の鍵盤奏者、柳田ヒロの歌声は丁寧に歌っている姿勢に好感が持てるものの、声量、声域共に弱い印象です。

サンズ・オブ・サンでのMAOの歌声は中性的な魅力を感じさせる稀有なものでした。しかし同時にどこか人工的で情緒が欠けていたことも事実。そのサイボーグのような歌唱は、本作の柳田ヒロの歌唱とも重なります。もしかすると、MAOの歌唱は柳田ヒロのプロデュースによる歌唱だったのかもしれません。

ヴォーカルは残念な出来ですが、メロディーの完成度は素晴らしい。そして爽やかなインストの魅力も光っています。
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