ヴィリエ・ド・リラダン/未来のイヴ

ヴィリエ・ド・リラダン/未来のイヴ
1922年フランス 492p 斎藤磯雄訳
『屁理屈はいい!ロマンを優先させろ!』
読書期間8日

 本作はSF小説の中でも、
最初に「アンドロイドは理想の女性像足り得るのか」を題材として扱ったものとして知られる古典。

あらすじは以下。
時は18世紀後半のアメリカ。
ウブな青年貴族エワルドは極度の面食いであった。
そんな彼の前に遂に理想の女性があらわれた。
その名はアリシヤ。
まさしく、ミロのイーナスの化身のごとき美しさを持った女性。
しかし問題が発生。
性格は欲望に忠実で自己中心的。
極悪レベルの性格ブスであったのだ!
アリシアのような美貌は二つとないが、あれほどひどい女もいない!
と絶望した彼は、死ぬ前に人類史上最高の天才発明家、エディソンに相談を持ちかける。
すると彼はこう言った。
「吾輩が発明したアンドロイド(性格美人)に、その性格ブスの皮をくっつけましょう。」
(かなりアレンジしていますが、こんな感じの話です。)

 さて感想ですが、まず「読みにくい」。
何分、原書も古く訳も古いので正漢字・歴史的仮名遣いで書かれています。
これがとても読みにくい。
事實(とか使ってみる)正漢字はかっこいいし、訳された文章は整理されていてきれい。
だがパソコンに慣れ、堕落しきった現代っ子(兼おっさん)な自分には辛かったです。
現実逃避してフランクな感じのあらすじを書いてみましたが実際は硬派。
そんな本書ですが、さすが古典。おもしろいです。

まずあらすじだけ見ると、
アンドロイドで理想の女性を作ってバンザーイ、な話なのかなと思いがちですが、
実際はエディソンとエワルドの哲学的な問答が9割を占めています。
これが長い!

 そもそも、最初のエディソン初登場シーンからしてクドイ。
自分が発明した電気という技術を何故、先代の発明家たちは発見できなかったのだ、
せめて自分がもっと早く生まれていたら、
というナルシシズム全開の自慢話を50pに渡り披露。
面白いんだけど、長いよ。
作者は初めに「実際のエディソンはこんな人じゃないよ、これは僕が想像したエディソンだからね」
ということわりをわざわざ序文に載せているのですが、
なるほどのぶっ飛びぶりです。
そして、そんな彼とは対照的に繊細な感性(純粋にして極端)を持つエワルド。

 この二人の語らいはテーマを変えながら延々と続き、読み手をヤキモキとさせます。
「性格はいらないので、アンドロイドの皮用に、その女を利用したい」という
サイテー!な目的に向かってあれやこれや宣っているのですが、
読者からすれば
「能書きはいいからとっととアンドロイドにしちゃおうぜ」というところ。
300ページ台後半まで続くディスカッションを耐えられるか、
読み手の忍耐力が試されることでしょう。
ちなみに宗教的な例えも多く、訳注だけで20pあります。
途中から全部すっ飛ばしてしまいましたがそれでも問題ないでしょう。

 実際には、上記二人の他に、アンドロイドの元の性格というべき、
男をときめかせる性格を持った女性とその関係者も物語に登場します。

 さて、長い問答を経て、アンドロイド登場。このシーンは上手いです。
アンドロイドとどう向き合うのか、という命題もきちんと扱っていました。

 ただやはり登場人物の魅力こそが本作の肝でしょう。
狂気の躁発明家、優柔不断で割とサイテー!な青年貴族、
ぶりっ子アンドロイド、性格ブスの女神、
など素晴らしい表現力で読ませてくれます。

 SF小説ならではの小難しい説明もある上に正漢字・歴史的仮名遣いという高いハードル、
そして延々と繰り返される哲学的問答、
これでもか、と並ぶやっかいな要素が勢ぞろいしている本書。
しかし読み終えた時にはそれも快感要素となっているはず。

「まだアンドロイドが出てこないのかー」と焦らされるのも素敵ですが、
最初からそういうものだと分かっていれば、もう少しはスムーズに楽しめるはず。
関連するタグ SF

トラックバック一覧

コメント一覧

コメントの投稿

名前

タイトル

メールアドレス

URL

本文

パスワード

非公開コメント管理者にだけ表示を許可する