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Little Barrie/ Death Express

Little Barrie/ Death Express
2017年 イギリス
『このダラダラ感がサイケなのか』

 プリティ・シングスのサード辺りを彷彿とさせる、ガレージなムードたっぷりのビート・サウンド。甘いサイケ風メロディーと埃っぽいギターが印象的です。総じてラフでルーズな演奏。ヴォーカルも気怠い感じ。更に、その音源をザクザクに切り刻んだり、わざと音を抜いたりしているので、目が回ってくる感じがします。サイケデリック。
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 リトル・バーリーは2000年、ノッティンガムにて結成されたトリオ編成のバンド。ロンドンのクラブで演奏する傍ら、デモを数枚制作。初期にはR&B、ファンク色の強いサウンドを指向していたとのことです。やがて2005年にはデビュー作『We Are Little Barrie』を発表。2007年にはワールド・ツアーを敢行した他、ポール・ウェラーの『22 Dreams』にてタイトル・トラックのレコーディングへ参加しました。その後、ブルーズ、ロカビリーと音楽性を変容させながらリリースを重ねており、今回のアルバムは3年振り5枚目のアルバムとなります。

 これまでは肉感的なサウンドを志していたリトル・バーリーですが、今回はかなりサイケデリックな作風へとシフトしています。カンからの影響にも言及しており、根暗で呪術的なジャーマン・サイケの要素と、これまでのストゥージズ、MC5的なやけっぱちロックンロールが融合している音楽性。エフェクト、フィードバックが飛び交うドロドロとしたグルーヴは、とっつきにくいながらも熱狂を感じさせるので、ついつい繰り返し聴いてしまいます。
 
ただ、フォローしきれない点が一つあり、それは本作が18曲1時間5分もあるということ。これはダレます。スパッと25分くらいで終わってくれればいいアルバムだったかもしれません。

Little Barrie – Produkt
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Elise LeGrow/Playing Chess

Elise LeGrow/Playing Chess
2018年 カナダ
『チェスやっています。』

 青い写真がブルーノートを想起させます。カナダ、トロント出身のジャズ・ヴォーカリスト、シンガーソングライターであるエリス・ルグロウのデビュー・アルバムをご紹介。
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 彼女は1987年、6月生まれの30歳。フェイスブックのお薦めミュージシャンの欄には、Janelle Monae; Adele; Amy Winehouse; Ray Lamontagne; Martha Reeves & the Vandellas; Bill Withers;Nina Simone; Dinah Washington と記されており、新旧織り交ぜつつ、ブラック・ミュージックに造詣が深いことを伺わせます。なお、ビル・ウィザーズのカバー動画がありましたので参考までにどうぞ。2009年、地元であるNXNE音楽祭に出場することになり(詳しい経緯を探せませんでした)、それを切っ掛けとしてカナダのSony/ATV Music Publishingとの契約に成功。2012年にデビュー・シングルとして「No Good Woman」を発表。トップ10に13週残るヒットとなりました。2016年にはアメリカのレーベル、S-Curve/BMGとも契約し、デビュー・アルバムの制作を開始。2年を経て発表されたのが本作となります。

 タイトルから「チェスを楽しむ為の音楽」という意味かな、と思っていたのですが、これはチェス違いでした。ブルースの名門レーベル、チェスの楽曲をカバーしたアルバムとのこと。「チェスの曲、やっています。」でしたね。シンガーソングライターのデビュー作で、いきなりカバー・アルバムとは、意表を突かれました。

 メインのプロデューサーにはスティーヴ・グリーンバーグが起用されています。デュラン・デュランやベティ・ライト、最近ではダイアン・バーチのセカンド(これは賛否両論作ですが)での仕事で知られている人物。ハンソンやジョナス・ブラザーズなど、多くのミュージシャンを見出したことでも有名です。他、マイク・マンジーニ(ex.エクストリーム)とベティ・ライト(60年代から活動するソウル・シンガー)の二人が、プロデューサーとして名を連ねています。近年はこの3人で組んで仕事をしているようです。
主なゲストとして、ルーツよりクエストラブ(パーカッション)とキャプテン・カーク・ダグラス(ギター)、そしてダップ・キングスがセッションに参加。豪華メンツです。

 情感たっぷりで、伸び伸びとした歌い振りが素晴らしい。支えるのは、シャカポコとしたリズム(突き抜けるようなドラム)に、軽やかなピアノが印象的なバンド演奏。楽曲に合わせてファンキーにも、ムーディにも対応しています。全曲カバーということで、アレンジにも注目したいところですが、正直なところ、数曲しか原曲を覚えていない有様なのでじっくり聴き比べていこうと思います。ただ、原曲の雰囲気を残しつつ、ダイナミックに仕上げている印象。エリス・ルグロウの色気ムンムンの歌い方にハマりつつも、こんなにいい曲があるのか、と改めて思い知らされました。かっこいい。

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 収録曲目は以下の通りです。(尚、10曲目はエタ・ジェイムスの曲)試しにスポティファイなどで聴くときの参考にして、オリジナルと比べて楽しんでください。でも、これは買いです!待っていれば日本盤も出るでしょう。

1. Who Do You Love Written-By – Ellas McDaniel
2. Hold On Written-By – J. L. Webber, Leonard Caston
3. You Never Can Tell Written-By – Chuck Berry
4. Over The Mountain, Across The Sea Written-By – Rex Garvin
5. Searching For My Love Written-By – Bobby Moore
6. Long Lonely Nights Written-By – Bernice Davis, Douglas Henderson , Lee Andrews, Mimi Uniman
7. Going Back Where I Belong Written-By – Bob Geddins
8. Rescue Me Written-By – Carl Smith (2), Raynard Miner
9. You Can't Judge A Book By The Cover / You Can't Catch Me Written-By – Chuck Berry, Willie Dixon
10. Can't Shake It
11. Sincerely Written-By – Alan Freed, Harvey Fuqua

Who Do You Love (Live Video)
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Ntjam Rosie/Breaking Cycles

Ntjam Rosie/Breaking Cycles
2017年 オランダ
『都会派ソウルの奥の方に潜む高揚』

 これでネジャム・ロズィエと読むのですね。カメルーン生まれ、オランダのマーストリヒトで育った女性SSW。2008年にデビューして以来、コンスタントにアルバムをリリースしており、本作で5枚目。尚、オーガニックなジャジー・ソウルとして、日本でも何枚かのアルバムがリリースされています。
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 柔和で囁くような女性コーラスや、浮遊感あるキーボードが紡ぐメロディーは、呼吸の様に穏やかに満ち引きを繰り返しており、なるほどオーガニックと例えられるのも納得。一部の楽曲では部族音楽のような掛け合いもあり。リンダ・ルイスのような爽快さを持つ歌声も魅力的です。リズムは粘っこくグルーヴィ、ブラスも入っていてジャジー。近年の流行であるエレクトロ・ソウルの流れを汲みつつも、野性味を個性として加えているのがポイントです。デジタルの制御が加わっているので熱量はそれほど伝わってきませんが、おおらかさは十分。日本盤のリリースが止まってしまったことでチェックが漏れている方にはおすすめしたい出来。楽しめました。

Take a good look at me
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Curtis Harding/Face Your Fear

Curtis Harding/Face Your Fear
2017年 アメリカ
『どんよりソウル満喫』

 2014年にデビューした自作自演歌手。本作はセカンド・アルバムとなります。

 シンセサイザー、ストリングスを取り入れた、映画のサントラの如く視覚に訴えるニュー・ソウル・サウンドはカーティス・メイフィールドを彷彿とさせます。一方で熱を抑えた内省的な作風も印象的で、その辺りはダニー・ハサウェイ的だと感じました。
消え入りそうな繊細な味わいを持つ裏声が特徴。艶めかしさ抜群で、ノスタルジックなストリングス・アレンジとの相性もいいです。
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曲に関してはニュー・ソウルをベースとした60年代ソウル由来の伝統を引き継いだものが多く、そこに現代的なロックやエレクトロといった要素を加えています。鉄琴やエコーによるサイケデリック感覚もアクセントとして印象的。「Tighten up」のパロディーと思しき「Need Your Love」もあり。残念な点としては、各曲2~3分で纏められているので、スムーズに聴くことが出来る一方で、突出したキラーチューンが見当たらないところ。

Till The End
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Water Into Wine Band/Hill Climbing For Beginners

Water Into Wine Band/Hill Climbing For Beginners
1974年 イギリス
『取って置き英フォーク』

 2000年に再発されたウォーター・イントゥ・ワイン・バンドのファースト・アルバム。ちょうど英フォークにどっぷり漬かっていた頃にリリースされたこともあり、愛着のある一枚です。愛着がありすぎて、色々な人に貸していたのですが、最後に貸した人と連絡が取れない状態になってしまい・・・・・・それから10年ほど。最近、買い直した次第です。
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 ケンブリッジ大学の同級生によって結成されたグループで、ヴァイオリン、アコギ2本、ベースという4人編成。ドラムレスの編成ながら、セッション・プレイヤーでドラムは入っています。他、フルートもあり。本作はファーストでMyrrhレーベルからリリースされました。クリスチャン系のレーベルとして知られています。

 英フォーク・ファンが夢想するような、牧歌的な世界観が展開されています。少しアシッドな感じもあり。ヴァイオリンがソロを取る場面では演歌の如く、情緒を強調したりする反面、ヴォーカルはしっとり穏やかに歌い上げており、ハーモニーも優しい。プログレに影響を受けたと思しき、ドラマティックな曲展開も素晴らしい。

 上記したKissing Spellの再発盤では2枚組となっており、英国盤、米国盤をそれぞれ収録。どちらも収録曲、曲順が同じなのですが演奏が異なっています。昔はそれぞれの国柄にこじ付けて聴こうとしていたのですが、やっぱり無理筋のようです。微妙な違いを楽しめればいいかと思います。

Stranger In The World
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小坂忠/Chu's Garden

小坂忠/Chu's Garden
2010年 日本
『ボックスを買っても、もやもや』

 以前から欲しかった小坂忠のボックスを購入。本当は各アルバムを廉価で再発して欲しかったのですが、いくら待っても報せは届かず。
今回のBOXの仕様について、少しばかり書きたいと思います。

 それぞれ紙ジャケで10タイトルが収録されたBOX。特に初期の3タイトルはオムニバスという形でしかCDで購入出来なかったのでうれしい。DVDや発掘音源など、BOXならではのお楽しみにも大満足です。
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 ただ「どろんこまつり」という曲が『ありがとう』『もっともっと』の2枚のアルバムからカットされている点は残念。差別用語(ここでは触れません)が含まれている為、収録を見送ったとのこと。またこのパターンか、とがっくり来ます。

 「完全復刻」と謳っておきながら、購入後の歌詞カードで「~の為、割愛しております。あらかじめご了承ください。」という告知はちょっと・・・・・・違う気がする。あらかじめご了承していたのは完全復刻された、ということだけですよ、と。

 ただ、こればっかりは、作者の了解を得ているのであれば、我々聴き手は何もできない状況。差別用語の基準も日々、厳しくなっていくみたいです。今日、生まれた曲の中にも、もしかしたら将来の差別用語が含まれているかもしれません。 

 次の機会には収録して欲しい、と思うべきか。いや待て。BOXを買ってコンプリートだったはずなのに、もう一度買うのか。
こんな思いをさせたくないとすれば、なるほど、ずっと再発に踏み切れなかったわけだ。

どろんこまつり/小坂忠
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Caitlyn Smith/Starfire

Caitlyn Smith/Starfire
2018年 アメリカ
『王道アメリカン・ロックを得意とする女性SSW』

 ナッシュビルを拠点に活動する作曲家による、本人名義のデビュー作。宣伝文によると、これまでガース・ブルックス、ジョン・レジェンド、メーガン・トレイナー、ジェイムス・ベイ、ドリー・パートンなどに楽曲を提供して来たとのこと。
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 鍵盤入りのバンド演奏による、大陸的なスケールを感じさせるアメリカン・ロックという印象。楽曲はボン・ジョヴィなどを彷彿とさせる、ダイナミックでドラマティックなメロディーが特徴です。とにかくエモーショナルに迫ってきます。カッチリとした分厚いアレンジが施されているのもポイント。キャッチーな楽曲が揃っている当たりは、さすが職業ソングライター。彼女自身の歌声も、パワフルで伸びやか、よく通るもので魅力的。1曲目を聴いた時にはありがちだな、と思っていましたが、オーソドックスながら芯の太さを感じさせる音楽性で聴き通した次第。デビュー作とは思えないほど、ゴテゴテしているアレンジだけはちょっと考えものであります。

Starfire

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Vulfpeck/Mr Finish Line

Vulfpeck/Mr Finish Line
2017年 アメリカ
『楽しさ更にアップ』

 卓越したテクニックに裏打ちされたグルーヴ感と、サービス精神溢れるポップなメロディーを併せ持つ、一級のファンク・グループ、ヴルフペック。当ブログでは前作、前々作でヴァルフペックと表記しておりましたが、どうやら今作では日本語ページでヴルフペックと紹介されている模様。サクッと日和りました。ヴァルフペックでもヴルフペックでも、どっちでもいいのですが、毎回メディアに取り上げられている割には、ガツンと人気が上がっているようにも感じられないのがもどかしい。
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 今回のアルバムはサード・アルバム。ファーストセカンドのレビューもしているので宜しければ読んでください。ここまで年1枚のハイペースなリリース・ペースを保っています。

 今回のアルバムでは全曲でフューチャリング表記が付いているのが特徴。様々なミュージシャンとセッションすることで、バラエティの豊かさを演出しています。ファンクとミニマル・サウンドの融合ということで、ミニマル・ファンクを標榜していた彼らですが、かなりファンク度が後退している印象。緻密なアレンジと多幸感溢れるポップネスに磨きをかけており、ポップスのアルバムとして大変楽しく聴けるアルバムとなっています。多彩なゲストについては、あまり知らないミュージシャンが多くコメントが出来ないのが残念であります。そんな中去年レビューしたテオ・カッツマンの名前にはほっこりしました。その他、デヴィッド・T・ウォーカーも参加しています。シンセサイザーのキラキラ度は最高潮。そろそろブレイクするぞ、とここからのアルバムでずっと言い続ける!

Mr. Finish Line (feat. Christine Hucal & Theo Katzman)

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racoustik/ざわめく木々の音楽

racoustik/ざわめく木々の音楽
2012年 日本
『内省的なブラジル音楽風』

 2004年から2005年くらいに掛けて活動していたTwellveというポップ・グループ。男女二人の作曲者を擁して、カラフルでジャジーなシティ・ポップが魅力的でした。ピアノやギターなど演奏も洗練されており「これはいいグループが出て来たな。」とワクワクしていたのですが、ファースト・アルバムのリリース後は音信不通に。本作はTwellveの作曲担当であった阿部仁のプロジェクト、racoustikのセカンドとなります。
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 名前から察せられる通り、弾き語りをベースとしたアコースティックな音楽集。レコーディング・メンバーにはシーナアキコ(key)やTwellveのメンバーであった石井清貫(g)が名を連ねています。スティールパンが参加する曲もあり。前グループからの連続性を感じさせつつ、よりプライベートな肩の力を抜いた感じが伝わります。キーボードによる隙間の埋め方、コーラスの付け方が洗練されていて素晴らしい。ブラジル音楽への傾倒が印象的でグルーヴィ。そんな中、エレキギターが入ると突然埃っぽくなるのが面白い。ヴォーカルは少し煮え切らない感じがあるのですが、相変わらずいい曲を書いてくれています。Twellveの時の期待を上回るような、素敵な音楽を期待。

racoustik/音階と雨@青山CAY120730

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MacMurrough/ MacMurrough

MacMurrough/ MacMurrough
1974年 イギリス
『地味目なブリティッシュ・トラッドもいいよね』

 本作は、アイルランドで活動していたフォーク・グループ、シェイド・オブ・マック・マーロウが名義を縮めてリリースしたセカンド作。ファースト、セカンド共にKISSING SPELLよりCD化されています。ファーストは未聴。原盤はポリドールです。
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 男性1人、女性2人という構成で12弦ギターやリュート、グロッケンなどを操るほか、ゲスト・プレイヤーによるコンサーティーナ(アコーディオンの仲間)も1曲で登場します。

 無伴奏もの程ではありませんが、地味目なブリティッシュ・トラッドをやっています。収録曲は全て伝承歌。3人の端正なコーラスは見事で、物悲しいメロディーと共に穏やかな気持ちにさせてくれる音楽です。


Bold William Taylor
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