Sarah Lesch/Da Draussen

Sarah Lesch/Da Draussen
2017年 ドイツ
『巻き舌たっぷり、実にドイツ人らしい歌いぶり』

 ハード・ロックの世界では一大勢力であるドイツ勢。しかしドイツのポップス、それも女性歌手となると、今日ではほとんど話題となっていない気がする。やっぱりドイツ語がネックなのだろうか。なのだろうなぁ。あの巻き舌での「イッヒ!」の雄々しさたるや。胸キュンは出来かねるイメージがある。どうやら、僕もそう思っていたようだ。今日、紹介するドイツの女性歌手、サラ・レッシュ。彼女の場合はどうだろう。巻き舌たっぷり、実にドイツ人らしい歌いぶり。ドイツ人だからこれでいいのだ。
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 1986年アルデンブルグにて生まれ、現在はライプチヒにて音楽活動をしているシンガーソングライター、サラ・レッシュ。息子の為に新約聖書に曲を付けた歌を作ったことが切っ掛けとなり、学校の教師からミュージシャンへの転身を果たしたそうです。2012年にデビュー作、2015年にセカンドを発表しており、本作はサード・アルバムとなります。

 ピアノ弾き語りをベースにした楽曲にバンド・アレンジを施した録音。ドイツ民謡、ゴスペル、カントリー、ブルースなどが入り混じった音楽性はなかなかのアクの強さ。加えて彼女のヴォーカルは演劇のような豊かな表現力を発揮しており、テンションの高い内容となっています。もちろん終始、巻き舌で唸っているわけではなく、爽やかなファルセットや朗らかな歌声もたっぷり入っており、くるくる変わる表情が楽しい。引き込まれます。

Sarah Lesch - Da Draussen
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Nona Reeves/ MISSION

Nona Reeves/ MISSION
2017年 日本
『早い新作を遅く紹介』

 ワーナー復帰第一弾アルバムとのこと。1年半ほどのインターバルを経ただけで新作が届くことには驚きます。凄い。ジャケの色合い、イラストからも原点回帰な雰囲気が漂っている印象を受けました。
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 シンセやプログラミングを駆使した音の重ね方が相変わらず緻密です。聴くたびに新しい音に気が付いたり、快感を得るポイントが変わります。また、ゲストを迎えての新鮮さの演出はいつも通り。多様性の演出と共に、グループの刺激となっているのでしょう。

 リズム寄りだった前作『BLACKBERRY JAM』から引き継いでビートが強力。曽我部恵一参加曲である『未知なるファンク』を始め、グルーヴィーな曲が多いです。ヴォーカルのテンションは高く、まるで岡村靖幸のように聴こえる瞬間があり。ただし甘さやポップなメロディーが健在なので、楽曲は親しみやすいものばかり。演奏はビシバシ、キビキビとしていて気持ちいい。肉感的という印象です。抜群にキャッチーな音楽なはずですが、アクが強い。 

NONA REEVES 『Sweet Survivor』
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日本国憲法 羅生門

日本国憲法<平和・自由・愛> 羅生門
1971年 日本
『微妙な反応でした。』

 日本国憲法の条文にメロディーを付けた楽曲を収録したアルバム。その斬新な試みもさることながら、クニ河内が作曲アレンジで参加しているという点も特筆すべきところ。

 サイケ、プログレ、ブラス・ロックが融合したような、ごった煮のサウンドで、60年代後半辺りのブリティッシュ・ロックからの影響が大。キーボードの存在感が大きく、ドラマティックな曲展開にはハプニングス・フォーからの連続性も感じられます。
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 日本国憲法は学生時代に教科書で抜粋したものに触れた程度でした。ここでは朗々としたペペ吉弘の歌声によって、丁寧に内容をなぞっていくので、すんなりと頭に入る・・・・・・訳はないですね!うん。無表情で朗読する箇所とエモーショナルな歌唱との落差も大きく、加えて変拍子を取り入れた複雑な曲展開と相まって、あんまり歌詞の内容は入って来ません。

 しかしながら初期の日本語ロックとしての野心、個性への挑戦を感じるアルバムで大いに楽しめるはずです。今度、職場にいる法学部の学生に貸してあげよう。→微妙な反応でした。

日本国憲法(OUR CONSTITUTIONAL RIGHTS) SIDE 1
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DAVID DUNDAS/DAVID DUNDAS

DAVID DUNDAS/DAVID DUNDAS
1977年 イギリス
上質の、ほのぼの英ポップ』

 2018年1月にヴィヴィッドからリリースされたビッグピンク再発シリーズの1枚。ジャケットには覚えがあり、加えてブルーミンク人脈であるロジャー・グリーナウェイ・プロデュースということで、期待の購入。
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 デヴィッド・ダンダスは76年にデビューしたシンガーソングライターであり、本作はそのデビュー盤。スタンダード1曲を除く11曲を自作しており、内3曲はエディー・ハウエルとの共作です。彼の作品(75年)は昔、輸入盤でのみCD化されました。

 小西勝氏による解説では、「EMI系スタジオの音作りとグリーナウェイのポップ・センスの融合」と書かれていますが、納得の王道ブリティッシュ・ポップが楽しめます。手拍子、ホーンを交えた賑やかでほのぼのとしたアレンジ、甘々のメロディーが全編で貫かれており、加えてエルトン・ジョンのような上品さもあり。個性という点では一級に及ばないものの、英ポップ愛好家にはたまらないアルバム。

Daisy Star
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Morgan Grace/Morgan Grace

Morgan Grace/Morgan Grace
2018年 アメリカ
『煙草大好きくたびれロックンローラー』

 黒のピッタリ革ツナギでロックンロールを熱唱する姉さん。これは21世紀のスージー・クアトロか。

 モーガン・グレイスはオレゴン州ポートランド出身のシンガーソングライター。2003年にデビューを果たしており、今回のアルバムで4枚目となります。
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 前述通り、鍵盤入りのバンド演奏によるグラマラスなロックンロールをやっています。ただ「朝日のあたる家」のようなダークな哀愁味も特徴で、全体からくたびれた悲壮感が漂っている印象。もちろんイケイケでロックンロールもやっているのですが、沈んでいる時間の方が長い。ハスキーな歌声は十分なドスが効いており、盛り上がる所でのシャウトも素晴らしい。

So Alone
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Beans On Toast/Cushty

Beans On Toast/Cushty
2017年 アメリカ
『ジェイ・マカリスター、誕生日おめでとう』
 
 エセックス出身のSSW、ジェイ・マカリスターが名乗っているステージ・ネーム。
それがビーンズ・オン・トースト。当ブログで扱うのはこれで2回目となります。前回の記事では毎年12月1日(彼の誕生日)に新譜を出す、と書いていまして、今調べてみると2016年の12月1日にも『A Spanner In The Works』というアルバムをリリースしておりました。本作で通算9枚目となります。
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 息継ぎをしないでどこまで一息で歌えるか、というような言葉を浴びせ続ける歌唱法が特徴。ポエトリーディングにも近いです。抑揚をつけた哀愁味のあるメロディーを、枯れた歌声とアコギで彩っています。他にはピアノ、ハーモニカを使用。初期ボブ・ディランにも通じる穏やかながら反骨心を感じさせる歌です。
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 自分が聴いた前々作と比べても区別がつかないほど、同じことをやっています。ちなみに前々作は日本盤もリリースされていましたが、本作はなし。輸入盤がタワーで取り扱っているのみです。日本盤が歌詞対訳付きでリリースされたなら、より深く楽しめるのに、と思う次第。
Beans on Toast - Secret Garden Party (SGP)
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一十三十一/Ecstasy

一十三十一/Ecstasy
2017年 日本
『自作自演としての我をもう少し』

 通算9枚目。近年はシティ・ポップ~テクノ・ポップの路線でアルバムを出しており、そのことごとくが高品質でした。ただデジタル重視のサウンド・プロデュースが強くなるにつれて、ちょっと量産品のようなイメージもついてしまいました。プロデューサーの意向にズバッと対応してしまう柔軟性は素晴らしいのですが、一方でもう少しアクの強さも欲しい。などと考えつつも新作を聴いてみる次第。
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 やけに落ち着いている・・・チルアウトっていうのかな。全曲でDorianがプロデュースしているとのことです。映画の1シーンのようなセリフSEが入るなど、Dorianがバックトラックをカッチリ作り込んでいます。メカニカルな印象を更に強めたアルバムとなっています。透き通った歌声は健在。バックトラックとの相性は抜群で、血の通ったボーカロイドの如し。作曲に関しては、ユーミンライクな良曲が揃っています。『カイエ』や『copine』の頃の大貫妙子のようなところもあり。それぞれ、一つずつと抜き出して聴くと、ポップであり夏のイメージも伝わるのです。しかしながら全編で聴いてみると、Dorianのバックトラックの主張が激しい分、アルバムの構成が平面的に感じました。ぼーーっと浸って聴いているのが、ベストな付き合い方かもしれません。

Flash of Light
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Rise and Fall of a Decade/ Rafoad Remasterised

Rise and Fall of a Decade/ Rafoad Remasterised
2017年編集 フランス
『ナイス・ゴシック』

 ニューウェイヴ、ゴシックな雰囲気プンプンのジャケに釣られました。調べてみると新譜ではないらしく、フランスで1988年から2008年まで活動していたグループの編集盤でした。
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 20年ほどの活動歴があるにも関わらず、日本語による情報はほぼ皆無。日本での知名度は無い模様です。ジャケットのイメージ通り、ニューウェイヴ、ゴシックをこよなく愛する音楽性を追求しているグループです。Thierry Sintoni、Sandy Casado 、Pierre-François Maurin-Maletのトリオ。幽玄な雰囲気がゴシックど真ん中のサンディのヴォーカルをフロントに、80年代らしい軽やかでミステリアスなシンセサイザーとエコーの波を軸としたサウンドが特徴。同時代に於けるイギリスのグループと比べると、エレクトロの本場なだけにダンサフルなところがポイント。隙間は多く、素朴さすら漂います。ベスト盤だからなのか、キャッチーな楽曲が多く親しみやすい内容でした。それぞれの楽曲が3分台ですっきりまとまっているところも良かったです。80年代のゴシック系ニューウェイヴに愛着がある方は是非。気に入るはずです。この編集盤はリマスターされていて音質も高いです。
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 2007年にメンバーの一人、ピエールが亡くなってしまい、それを切っ掛けとして翌年解散。現在は残された二人がGirl Like Youというデュオで活動しているとのこと。

Rise and Fall of a Decade- Pure Hands
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Paceshifters/Live from GieSound Studio

Paceshifters/Live from GieSound Studio
2018年 オランダ
『哀愁オルタナティヴ』

 久しぶりに王道のオルタナティヴ・ロックを購入。

 オランダにある、オルスト=ウェイヘという広域自治体(大きな県みたいなもの)を拠点に活動しているペースシフターズ。詳細なプロフィールが無かったので、結成時期については不明。トリオ編成です。ファースト・アルバムが2010年にリリースされているので、その辺りに結成されたものと思われます。ニルヴァーナへのリスペクトを表明しており、グランジ・ムーヴメントで変化して来たオルタナティヴ・ロックの回帰をテーマとした音楽性が特徴です。
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 ともすれば埋もれがちになってしまうヴォーカルは、声量面では少し不足しているかも。しかしながらガンズのアクセルのような爬虫類っぽい巻き舌を得意としており、シャウトなども様になっています。トリオ編成ながら轟音のアンサンブルは凄まじく、グルーヴ、疾走感、埃っぽさ、全て申し分なし。ニルヴァーナからの影響は多大で、ヘヴィーリフと美しいメロディーの調和が取れている楽曲群は素晴らしい。もちろんニルヴァーナそのままということはなく、暴力性では劣るものの哀愁味があるのがオランダらしいところ。スタジオ・ライブ作ということですが、臨場感のある迫力のパフォーマンスを楽しむことが出来ました。

Paceshifters - Yearning Desire (Live from GieSound Studios)
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坂口恭平/アポロン

坂口恭平/アポロン
2018年 日本
『芸術の神を冠したファーストアルバム』

 熊本出身。建築家や画家として活躍している坂口恭平が、今度はシンガーソングライターとしてアルバムを発表。自分はそんな凄い経歴を知らず、寺尾紗穂参加ということで試聴した結果、購入しました。
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 アコギ弾き語りを坂口恭平、ベースに厚海義朗(GUIRO)、ドラムに菅沼雄太、ピアノに寺尾紗穂という布陣。

 ほぼ全編でゆったりとしたリズムのカントリー、フォーク・ロックをやっています。寺尾紗穂のピアノが前面に出ているので、室内楽の雰囲気が漂っている印象。坂口恭平の歌は声域が狭いので地味目ながらも、伸び伸びとしていて良いです。一方でほぼ全編、のんびりな楽曲で統一されているので、少しダレる部分もあり。ヒップホップを取り入れた「あの声」のような変化球がもう少し入っていれば良かったかも。
 
 ハンバートハンバートの佐藤良成がリードを取る曲のような劣等感を含んだ味わいを期待したのですが、もっと穏やかで平和な音楽となっています。また、寺尾紗穂がコーラスや時にはリード・ヴォーカルも務めており、華やかさを添えているのがポイント。晴れた休日の始まりに聴くべきような、期待感を静かに盛り上げてくれる音楽です。

休みの日
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