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羅生門/インディアン、死よりも赤を選ぶ

羅生門/インディアン、死よりも赤を選ぶ
1972年 日本
『クニ河内、ミッキー・カーチス参加』

 クニ河内が作曲で参加しているという理由で購入しました。羅生門は元々、ハプニングス・フォーの前身であるサンライズというグループを母体としたグループだったらしいのですが、本作をリリースしていた頃にはバンドとしての実体のないプロジェクトのような状態だったようです。中心にいたのは作曲として関わったクニ河内、ミッキー・カーチスとヴォーカル、ギターを担当したフロントマン、ポール湯川の3人。
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 タイトルにインディアンとあるようにアメリカの先住民族をコンセプトとした歌詞が印象的です。クニ河内、ミッキー・カーチス共にブリティッシュ・ロックからの影響を強く受けた作曲家であり、1972年という時代を反映してかユーライア・ヒープなどを彷彿とさせる英ハード・ロックっぽい曲も多く収録。一方で3曲収録されたヴォーカルのポール湯川による楽曲はゴールデン・ポップス調ながら、調和が取れています。

 哀愁を称えた男くさいヴォーカルは魅力十分。ストリングスやホーンを交えたアレンジはややロマンティック過剰で時代を感じさせますが味と言えなくもないです。クニ河内、ミッキー・カーチス参加という部分に、期待をして聴いたとして、それを裏切らない充実の内容。

動画はありません。
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ALICE COOPER/WELCOME TO MY NIGHTMARE

ALICE COOPER/WELCOME TO MY NIGHTMARE
1975年 アメリカ
『悪夢に没入できなくなった僕ちゃん』

 アリス・クーパーというバンドが解散し、アリス・クーパーがソロ名義として発表した初めてのアルバム。ですが、ひっくるめて通算8枚目と数えられています。近年は本作の再現ツアーや続編を発表するなど、再評価が著しいアルバムです。
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 ただ今、私は、紙ジャケを後追いで購入してアリス・クーパーを再コレクションしている最中。これまで輸入盤しか所有していなかったこともあり、詳細な和久井さんによる解説がとても為になっております。本作ではボブ・エズリンがルー・リードのライブ盤で参加していたバック・バンドを引き連れて、本作を録音したことが書かれていました。そうだったのか!しかもルー・リードのライブ盤(『Rock 'n' Roll Animal』『Lou Reed Live』)の素晴らしさにも触れており、自分はまだ聴いたことが無いので・・・・・・これは聴かねば。

 シアトリカルなロックという基本はそのままに、よりポップになった音楽性。作曲面では新たにバック・バンドのメンバーとして加わったディック・ワグナーが参加しています。解説にもありますが、彼は「悪夢へようこそ」「ブラック・ウィドー」「血を流す女」など、ハイライト・ナンバーに貢献している素晴らしいソングライター。結果として、本作は「スティーヴンの見た悪夢」をテーマとしたコンセプト・アルバムながら、小難しさは一切無く、従来のシアトリカルな魅力はそのままに楽しく聴ける内容となっています。
 
 最初に聴いた中学の頃は、この物語に没頭したものです。今、聴き返してみると懐かしい気持ちと共に、本気で没入できない(面白がってしまう)自分に寂しさを感じてしまいました。

曲は探せず。最近、youtubeの規制が厳しくなりましたね。

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Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau

Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau
2017年 アメリカ
『ジャズだけどジャズで敬遠されたらもったいないってアルバムがある』

 ジャケットに惹かれ、1分ほど試聴した後に購入したアルバムです。ピアノとマンドリンの打ち付けるような演奏に情緒豊かな男性ヴォーカルが乗る、というスタイルで、ジャンルはジャズとなっていました。
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雰囲気がいいジャケ、としか言えないのですが好きなジャケです。

 ブラッド・メルドーはフロリダ州出身。1970年生まれの47歳。95年にデビュー作を発表して以来、現在まで19枚のアルバムを発表しているジャズ・ピアニストです。フリー・ジャズを交えた叙情的なメロディー展開が魅力。近年は様々なジャンルのミュージシャンとの共演作を発表しており、本作のその流れに乗っています。ジャズのみならず、クラシックやロックにも興味を持っており、しばしばジャンルを横断している点もポイント。

 クリス・シーリはプログレッシヴ・カントリーのグループとして知られるパンチ・ブラザーズのマンドリン奏者。そういえば、パンチ・ブラザーズの最新作はここでレビューしていたような・・・していましたね

 二人は共にノンサッチというレーベルに在籍しており、その縁でデュオを組んだのでしょう。

 ジャンルはジャズとなっていますが、メロディーはポップで優しいものが多く、とても聴きやすいです。収録曲はオリジナルとカバーが半々という構成。ディランの「Don't Think Twice, It's All Right」やビリー・ホリデイの「I Cover the Water Front」を取り上げています。マンドリン、ピアノ、ヴォーカルというシンプルな構成ながら、寂しいフォーク・ナンバからダイナミックで幻想的な、まるで初期ジェネシスのようなプログレ・ナンバーまで、表情豊かな楽曲群で楽しませてくれます。

 一粒一粒の音がくっきりしていてとても綺麗なピアノ。ブラッド・メルドーという存在を知ることが出来て良かったです。クリス・シーリの在籍するパンチ・ブラザーズの旧作共々、色々集めてみようかな。

 輸入盤で買ったのですが、日本盤が出ているらしくそちらではボートラも入っている模様。買い直そうと思います。

Chris Thile and Brad Mehldau - Don't Think Twice It's Alright (Dylan Cover)
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MR.BIG/Defying Gravity

MR.BIG/Defying Gravity
2017年 アメリカ
『黄金期は原点では無かった。』

 今調べてみると自分のMR.BIG歴は『ACTUAL SIZE』までで終わっていました。一度の解散を挟んだものの、オリジナル・メンバーで再結成。通算8枚目のアルバムです。
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 プロデューサーには黄金時代を支えていたケヴィン・エルソンを起用。またパット・トーピーがパーキンソン病を患っている為、ドラムの録音にもサポートが付いています。

 「原点回帰」という煽りを前面に出している本作。アコースティックなバラードや躍動感とポップなメロディーが合わさったロック・チューンが収録されており、その意図は十分伝わります。元々、フリーの「MR.BIG」という曲名から取られたバンド名を冠しているだけに、ヘヴィなリフを主軸としたブルース・ロックがいくつか収録されているのがポイント。これがポップな楽曲よりも主張が激しい為、全体的には地味で渋い印象を受けてしまう結果に。『LEAN INTO IT』制作スタッフが再び集結、などと書かれているのでついつい比べてしまうのですが、華やかさ、曲のクオリティで足りていないと思います。とびきりポップなキラーチューンや有無を言わさぬ勢いが無いので仕方ありません。

 ただ比べることを止めれば、どっしりとしたグルーヴ感が楽しめるブルース・ロック作として十分な出来だと思います。変わらぬソウルフルな喉を披露しているヴォーカルを初め、
年相応の落ち着きを見せる各メンバーそれぞれの演奏は相変わらず素晴らしい。
『LEAN INTO IT』制作スタッフ云々を抜きにして、もう一度原点回帰というキーワードで連想すると、
ファーストってこういう地味で渋いアルバムだったかもしれない、などと思いました。

Defying Gravity
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徳永憲/信じるに値しない男

徳永憲/信じるに値しない男
2017年 日本
『滋賀が寒いところだということが良く分かる』

 10作目。前作発表後、東京から故郷の滋賀へと転居しており、再出発の1枚となります。
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 ギター弾き語りをベースに宅録機器を駆使して制作するというスタイル。ここ数枚はポップになったり、ロック度を増したりしながら、どんどん耳馴染みが良くなっていったという印象でした。ゲストの参加による音もカラフルになっていました。
しかし新作はかなり硬派。特に前半の曲ではサビがサッパリとしており、いつものドラマティックな曲展開は控えめです。代わりにトラッド由来の寒々しさが強調されていて、冬の厳しさが伝わってくるような聴き心地。録音機材も前述のようにシンプルなので、音も概ね白と黒の世界の如し。帯にもありますが、初期の作風へと回帰しようという意図を感じます。内省的な徳永憲の本質を改めて確認出来ました。

序盤の3曲は、沈み込むような打ち込みのドラムとフルートがダークでオリエンタルな雰囲気を醸し出しており、レッド・ツェッペリンの「III」を思い出しました。

 アルバムタイトル「信じるに値しない男」はインパクト十分の言葉。長らく彼の音楽を楽しんできたので「そんなことない」と反駁したい所ですが、ご本人がそういっているのだからそうなのでしょう。故郷に帰って最初のアルバムタイトルで、信じるに値しない男だと表明している。田舎から上京して帰郷、と言う流れから来る悲哀を連想する言葉。僕は彼が信じるに値しない男だと受け入れつつ。今後、滋賀から登場する新作を、待っていようと思います。

雪の結晶
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Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962

Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962
1950年代 アメリカ
『違いが分からない男のブルース・レビュー25』

 2016年6月以来のブルース記事、ついに復活。本日はロウエル・フルソンを取り上げます。

●経歴
 1921年、オクラホマ州タルサ生まれ。10代の頃からタップ・ダンサーとして活動しており、音楽に理解のある家庭で育ったとのこと。尚、この頃にはテキサス・ブルース・スタイルのバンドに参加していました。成人した1940年代にカルフォルニアへ移住。これを機にブルース・シンガーとしての活動を開始します。彼は時代毎に音楽性を変えています。まず初期(45年~50年頃)は地元カルフォルニア周辺のレーベル(複数)での伝統的なテキサス・ブルース。続いて中期(50年~64年)にはチェッカー・レーベルに移籍。ピアノ、サックスを加えたバンドを結成し、スロー・テンポのブルースを指向しています。ここでは自身のルーツであるゴスペルの要素が加わっているのも特徴。同じく中期の後編としてメジャー・レーベル、ケントに移籍していた時代があります。(64年~)ロックンロール誕生期にあたる、この時期ではビートを強調したブルース・ナンバーでヒットを生んでいます。以後も地道な活動を続けており、1980年には来日公演も実現しています。1999年にカリフォルニア州ロングビーチにてなくなったとのこと。戦後モダン・ブルースの歴史を作った一人です。尚、B.B.キングに影響を与えたブルースマンとしても知られており、B.B.キングは「眠れる巨人」と称していたそうです。

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50年代のロウエル・フルソンと言えば、この写真で決まりだ!笑顔が決まっています。

●チェッカー・レーベルでのロウエル・フルソン
先に書いたように、この頃の彼は弾き語りからピアノ、サックスを加えたバンドへと表現方法を変えています。ピアノはロイド・グレン、アルト・サックスはアール・ブラウンが担当。ソウル、ゴスペルの要素も多く含んだスロー・ブルースが中心です。歌、ギター共に派手さはありません。バンドとしてのサウンドを重視しており、あまり前に出ないのも特徴。ただし、生活感の滲み出る泥臭くもソウルフルな歌唱、ロープ・ギターと自称するザクザクとうねるギター、ともにインパクト十分。ここぞという時の存在感は十分です。曲は技巧で聴かせるというよりはムードを重視しており、ポップなものが多い印象。ゴージャスな雰囲気満点のねっとりとしたサックスと、穏やかに跳ねるピアノも、素晴らしい。

Reconsider Baby
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実川俊晴/ポップ・ソングス 1979-2016

実川俊晴/ポップ・ソングス 1979-2016
2017年(1979~2016) 日本
『幻にしておくのがもったいない』

 マギー・メイのアンソロジーに続く、実川俊晴アーカイヴ・コレクション第2弾。前作のレビューで『「はじめてのチュウ」の作者』というタタキで興味を持ったと書きましたが、その意味からするとGS時代の前作よりも今回のアルバムが本命でした。
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 幻のポップ・クリエーターと帯で称されているので、てっきり作曲家一本槍だと思っていたのですが、きちんとソロ・アルバムもリリースしておりました。今回のアンソロジーでは、唯一のソロ作及びシングルをまとめたディスク1と、未発表を中心とした80年代以降の音源をまとめたディスク2という構成になっています。

 解説を読むとビージーズ、パイロットから影響を強く受けたとありますが、その通りの甘く爽やかなポップ・ミュージックが堪能できます。ドラマティックな英米折衷のメロディーと曲展開、そして若干声量は足りないけれども、とろけるようなファルセット・ヴォーカルが素晴らしい。ディスク1はアルバム音源を中心にした統一感があります。ディスク2はそれに比べると音質を含めてバラバラですが、70分オーバーでレア音源を収録してくれており大満足です。

 詳細な解説もありがたい。

実川俊晴 ポップ・ソングス 1979-2016 TOSHIHARU JITSUKAWA POP SONGS 1979-2016
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COLIN SCOT/JUST ANOTHER CLOWN

COLIN SCOT/JUST ANOTHER CLOWN
1973年 イギリス
『本場のピエロはやっぱり怖いな。』

 イギリスのシンガーソングライター、コリン・スコットのセカンド。長らくファーストのみがCD化されていた状況でしたが、この度、ビッグピンクよりセカンドが再発されました。ロバート・フリップ、ブリンズレー・シュウォーツ、リック・ウェイクマンなど豪華なゲストが参加していたファーストに関しては、その豪華な客演を楽しむといった趣が強かった一方で、どんな曲があったのか曖昧な印象。
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 セカンド・アルバムではほぼ全編がオリジナル曲で固められており、バックバンドも固定。シンガーソングライター然とした作風になっているとのこと。アメリカへの憧れが堂々と現れているたそがれフォーク・ロックが大勢を占めた内容です。渋みのあるスライド・ギターに枯れた歌声の組み合わせが、この種の音楽にとっての王道となっている他、シンセサイザーがカラフルでポップな魅力を引き出している点もポイント。バックバンドのメンバーにはヴァンダー・グラフ・ジェネレーターやレア・バードに関連するメンバーが集まっており、一部楽曲では管楽器やストリングスが導入されています。これによりドラマティックなアレンジが為された楽曲もあり。それが功を奏しているかというと否。ファーストと同じく、軸がぶれてしまっている気がします。

例えばマッギネス・フリントやアラン・テイラーのような、イギリス人による米国憧憬フォークの第一人者に比べると、各楽曲の出来も地味。しかしながら、後続の人知れず発表されたシンガーソングライターの作品として楽しむことは出来ると思います。(解説でも楽曲に関しては全く触れていませんでしたし・・・・・・)

I am A Dreamer
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Aliocha/Eleven Songs

Aliocha/Eleven Songs
2017年 フランス
『素はセンチメンタル、アレンジでデカダンス』

 慎ましやかな歌い出しから、もったりとしたドラムが従い、やがてオルガンが唸るクライマックスへ。そういう曲調のオープニング・ナンバー「The Start」は、何だかジョン・レノンの「(Just Like) Starting Over」を彷彿とさせます。基本スタイルは米ロックンロールの腰の強さと、ブリティッシュ・フォークの侘しさを併せ持ったフォーク・ロック。フランス出身だけに、退廃的でロマンティックなムードが特徴的です。また、しぶとさを感じさせる低い歌声や、哀愁味のあるメロディーも魅力。

 フランス、パリ出身のSSW、アリオカ。姓はシュナイダー。映画俳優の父と、実業家兼モデルの母を持っています。
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そういうことなので、フランスでは既に男前なSSWとして人気は博しているようです。

父の知り合いだったという、カナダのケベック州出身のSSW、ジャン・ルルーと出会うことで自作自演歌手への憧れが芽生えたとのことです。ジャンと彼のバンドの助太刀を得てレコーディングを経験。これらの成果として2016年にはデビュー作を発表します。同年、フランスのパリ、カナダのモントリオール、アメリカのロサンゼルス、スウェーデンのイエテボリと音楽旅行を敢行。パリのプロデューサー、サミー・オスタやスウェーデンのドラマー、ルドウィック・ダールバーグを始めとする若い才能達との出会いによって、1枚のEPと1枚のアルバムを完成させています。今回ご紹介するのは2017年6月にヨーロッパでリリースされたセカンド・アルバム。
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 ギター弾き語りをベースにした楽曲が11曲並んでいるものの、録音はバンド編成。鍵盤の入る曲も多く、加えてヴォーカルにエコーが入るところがあるので、アコースティックながらカラフルな印象です。前述した通り、英フォーク、米ロックンロール及びそこから派生する英ロックの影響が強いサウンドです。ケベック出身のジャン・ルルーの指導が入っている成果なのか、フランスらしい、どんより、あるいはどろり、と形容するような耽美性は控えめ。その代わり俳優の父を持つからなのか、楽曲にはドラマティックで演劇的な特徴があり。特にキーボード・アレンジが神秘性を演出しており、ドイツ時代のデヴィッド・ボウイやサイケ時代のドノヴァンのような醒めた退廃ムードが楽しめます。

Sarah
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見汐麻衣/うそつきミシオ

見汐麻衣/うそつきミシオ
2017年 日本
『揺らめきが心地よく聴いていることを忘れる』

 埋火というバンドが好きで、それが解散してからは中心人物である見汐麻衣が結成したマナーズをチェック。しかしながらその後、音沙汰が無く、久しぶりに届いたのがこのソロ・アルバム。

 彼女自身の歌とメロディーは、日本の童謡や唱歌に由来する親しみやすさ、懐かしさを持っています。特に少し掠れる高音は寂しさが強調されて印象的。ジャズ、プログレの影響を感じさせる楽曲はこちらの予想を裏切るような凝った展開のものが多く、前述の親しみやすさと対比を成しています。結果、振り回されながらグイグイと引き込まれていく不思議な魅力を持った音楽として、これまで楽しんできました。

 マナーズの特徴であったジャズ要素はそのまま、ジャズ・ヴォーカルの方へと音楽性を滑らせたような印象のアルバムです。エコーなどのサイケデリックなアレンジが無い為、ともすれば埋まってしまいがちであった彼女の歌声がすっきりと聴こえるのが気持ちいい。主にシンセサイザーから醸し出される浮遊感、気怠さは健在です。

 一方で生音によるバンド・サウンドが強調されていて、グルーヴ感が増しているのがポイント。ソウル、ジャズ、サイケが一体となっていよいよ混沌としているはずですが、聞き心地は軽やか。ブイブイ唸るベースにカッティングギターが入り、キラキラしたキーボードが踊る、みたいなAORナンバーが多く収録されているのに関わらず、相変わらず不安定で引っ掛かりを持っているところが凄い。
意表を突く曲展開を控えめにして、ダークなムードを大切にしています。

聴きはじめるときは集中していながら、いつの間にか、浸っていて終わった時に我に返るような音楽。思えばこれまで彼女がやってきた音楽もそういうものだった気がします。

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夜が迫る街に溶け込んでいく、みたいなジャケも音楽性を表していると思います。


はなしをしよう
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