Lucy Rose/ Something's Changing

Lucy Rose/ Something's Changing
2017年 イギリス
『森林浴をしているかのような、穏やかで清々しい気分にしていれる音楽』

 繊細で掠れて消え入りそうな歌声とふくよかなストリングスが印象的。森林浴をしているかのような、穏やかで清々しい気分にしていれる音楽です。

 ルーシー・ローズは1989年生まれ。出身はイギリス、ウォリックシャー。学校でオーケストラに参加したことから音楽に目覚め、ピアノ、ギターを経験。地理学を学ぶため18歳でロンドンに移住して以来、並行して音楽活動を開始しています。ボンベイ・バイシクル・クラブやマニック・ストリート・プリーチャーズの作品への作品を経験。その一方で自身の楽曲を制作。2012年に初のアルバム『Like I Used To』をリリースしています。本作は2年振りとなるサード・アルバム。
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 学生時代からの影響元であるオーケストラ音楽の他、ジョニ・ミッチェルやニール・ヤングからの影響も強いとのこと。オーガニックな世界観と清々しいヴォーカリーズにはケイト・ブッシュの面影があり、またドラマティックで宇宙を感じさせるインスト・パートではピンク・フロイドの影響が伺えたりと、若いSSWとしては様々な音楽を吸収しています。

 生音中心の音作りですが、打ち込みやプログラミングを交えているところがあり。
気になる所を挙げるとすれば、楽器に彼女の声量が負けているところが何箇所かある点でしょうか。ただ、オーケストラを被せるには彼女の声質が繊細すぎるので致し方ないところではあります。
lucy rose laura lewis

No Good At All

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Joe Hertler and the Rainbow Seekers/Pluto

Joe Hertler and the Rainbow Seekers/Pluto
2017年 アメリカ
『陽気なパーティー・ロックが楽しめるアルバム』

 熱は控えめ。爽やかでキャッチーなメロディーが日曜日のドライブに丁度良さそうです。

 ご紹介するのはジョー・ヘルトラー&レインボウ・シーカーズ。ミシガン州出身。レコーディングのみのメンバーを含めて、7人編成のグループです。ジョー・ヘルトラー自身は2009年からソロ活動を開始しており、2枚のアルバムを発表後、グループを結成。その際、ジャズ・ピアニスト、ジョー・サンプルのアルバムからグループ名を付けたそうです。本作は彼らのサード・アルバム。前作で既に日本の洋楽ファンにも名前が広まっており、今回の新作も国内盤がP-VINEからリリースされております。
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 自らの音楽性を「ポスト・モータウン・フォーク・ロック」と標榜している彼ら。全体的にはソウル~AORの要素を内包したロックという印象です。いくつかの曲でフルートなどのアコースティック楽器が交わっており、その辺りがフォーク要素なのかな、と思ってみたりしました。

バンド・メンバーは7人で内訳は以下の通り。 

Joey : Guitar, Vox, Harmonica
Ryan Hoger: Guitar
Jason Combs: Bass
Pinetop Deadfish: Drums
Mickey Soho: Looks good, tickles the ivories (Looks goodが担当ってどういうこと?)
Aaron Stinson: Sax
Kevin Pritchard: Production

プロデュースだけやっている人がいるのは良いとして、5人目。素敵、象牙を撫でる?調べてみたら、ピアノを弾くこと(ここではキーボード)をこう表現するのだそうです。勉強になりました。
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どれがLooks goodかな。・・・・・・一人、それっぽい方がいますね。

 サウンドについてもう少し。打ち込みのリズムを多用。リズムはすっきりしています。ヴォーカルは爽やかでソフトな歌声です。サックスが大活躍。象牙を撫でる係と共にサウンドに厚みを持たせてドライブ感、爽快感を上げているのがポイントです。ギターはちょっと地味かも。

 AOR~産業ロックに通じる、コーラスをふんだんに取り入れたキャッチーなメロディーが素晴らしい。陽気なパーティー・ロックが楽しめるアルバムです。

Lonely
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松井文/顔

松井文/顔
2017年 日本
『柔和で親しみやすい女性によるフォーク』

 昨年度大いに楽しませていただいた折坂裕太の『たむけ』。リリースされた、のろしレコードから女性SSWのアルバムが発売されていることを知り、購入致しました。

 プロフィールによりますと、平成元年生まれ、横浜出身。元々はガールポップ・バンドのメンバーとして活動していたそうです。現在はギター弾き語りのシンガーソングライターへ転向したとのこと。春一番への出演経験もあり。のろしレコードには2015年の立ち上げから関わっており、今回、折坂裕太のプロデュースによるセカンド・アルバムがリリースされました。
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 音楽性は伝統を踏まえたフォーク、フォーク・ロック・スタイル。折坂裕太やゲスト参加している三輪二郎の影響も感じられます。ロックの疾走感やポップなメロディーをうまく取り入れており親しみやすい。ロックから後天的にフォーク、フォーク・ロックへと音楽性をシフトしたプロフィール通り、素直に古きよきものを自分なりに消化吸収している印象です。歌声は低く落ち着いていながら軽やか。バンドの構成は本人によるギター、ブルースハープを中心に、ギター、ドラム、鍵盤、チャイム、マンドリン、ベース、サックス、チェロが曲によって加わっており、フォーク・ロックとしてはかなり華やか。ジャジーな部分が所々で顔を出しているのがポイントで、前述の軽やかな歌声にもマッチしています。

「いつになったら」
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Terry Smith/Fallout

Terry Smith/Fallout
1968年 イギリス
『モッズをひきずった英ジャズアルバム』

 近所のブックオフで何気なくピックアップして来たもの。テリー・スミスという名前に聞き覚えがあるような、ないような、と思っていたら70年代に英ジャズ・ロック・グループとして活躍することになるIFのギタリストでした。本作はバンド結成前に録音された純粋なジャズ・アルバムです。彼にとって初のリーダー作でもあり。
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クレジットは以下の通り。

Arranged By – Harry South, Jimmy Deuchar
Bass – Ron Mathewson (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Drums – Chris Karen* (tracks: A3, B3), Ronnie Stephenson (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Engineer – David Voyde, Peter Olliff, Roger Wake
Guitar – Terry Smith
Organ – Bob Stuckley (tracks: A3, B3)
Percussion – Denis Lopez* (tracks: A4, B1, B4), Peter Aherne* (tracks: A1, A2, B2)
Piano – Gordon Beck (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Producer – Scott Walker
Saxophone [Alto], Flute – Ray Warleigh (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2), Roy Willox (tracks: A1, A2, B2)
Saxophone [Baritone] – Ronnie Ross (tracks: A4, B1, B4)
Saxophone [Tenor], Flute – Bob Efford (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Trombone – Don Lusher (tracks: A4, B1, B4)
Trumpet – Derek Watkins (tracks: A1, A2, B2), Greg Bowen (tracks: A4, B1, B4), Kenny Wheeler (tracks: A1, A2, A4, B1, B2, B4), Les Condon (tracks: A4, B1, B4), Tony Fisher (2) (tracks: A1, A2, B2)
Vibraphone, Marimba – Jim Lawless (tracks: A1, A2, B2)

ピアノのゴードン・ベック、トランペットのケニー・ホィーラー辺りは聞いたことがあるのですが、他は勉強不足につき良く分かりません。プロデューサーがスコット・ウォーカーってところは意外です。(違う人なのかな?)

 クレジットを見ても分かりますが、半分はビッグバンドでの演奏となっています。残りの曲もオルガンとギターの絡みが中心となったモッズっぽい仕上がり。1968年ということを考えるとソウル風味がノスタルジーな音楽性ですが、グルーヴィな魅力が強調されていて楽しいです。ガーシュインやバートバカラックの曲を取り上げていることからポップス畑を意識しているのが伺えます。演奏は英ジャズらしいカッチリとしてクールな切れ味が感じられるもの。2分で終わってしまうビッグバンドによるアップテンポ「I Love You」の躍動感が素晴らしい。

動画が無かったです。
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かみぬまゆうたろう/くすんだ箱の中の物語

かみぬまゆうたろう/くすんだ箱の中の物語
2017年 日本
『くたびれた感じの歌い方が染みる』

 サード・アルバム。ハンバートハンバートとセットで購入しました。全編でバンド録音がされており、これまで以上にSSW寄りのサウンドへとシフトしています。高橋優を彷彿とさせるエモーショナルな熱血ナンバー「はじめぼくはひとりだった」は特にその印象が強いです。
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 アメリカン・カントリーの影響はそのままに、落ち着いた味わいの洒脱なピアノ(THE MICETEETHの次松大助)が効果的に使われており、ウエストコーストやジャズのような雰囲気も加わっています。酒場を回るパブロック・バンドの如き、気安く軽快な演奏が素晴らしい。

 柔和でどっしりと落ち着いた日常の歌が収録されており、ラブソングがテーマだった前作よりも爽やかさが印象に残ります。かす
れ声も渋く、くたびれた感じの歌い方が染みる。

 封筒のような装丁が施された特殊ジャケも素晴らしい出来。ディスクの出し入れには適さないので別のプラケースに移しつつ、本体はボックス置き場で大切に保管しようと思います。

ブルーシート・ブルース
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Wesley Gonzalez/Excellent Musician

Wesley Gonzalez/Excellent Musician
2017年 イギリス
『変拍子と捻くれたメロディーが実にイギリスらしい』

 変拍子と捻くれたメロディーが実にイギリスらしい。そして気怠く退廃的なムード。まるでスパークスを彷彿とさせる。

 シンガーソングライター、ウェスレイ・ゴンザレス。もともと2005年から2015年まで活動していたLet’s Wrestleというグループに在籍。解散後、ソロとしてデビューしたという経緯があります。

Let’s Wrestleは日本にもファンが多いグループのようですが、自分は
未聴だったので今回少し聴いてみました。ガレージやパンクの要素を含んでおり、ラフなバンド・サウンドが印象的です。昔のグループで例えるならクラッシュ辺りが近いと思います。

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 今回のソロ作もバンド演奏(ブラス入り)ですが、ポップで牧歌的な音楽性へとシフト。英サイケポップからの影響やイギリスらしい暗さも前面に出ているのもポイント。またバンド時代にも「パパパパー」というハミングを使ったりしていて見え隠れしていたビートルズ愛が、より露骨に表れており、まるでスタックリッジのように感じるところもあり。

 英ロック、ポップスが活況を呈している現在ですが、このような王道英ポップは希少。次回作も大いに楽しみであり、行く行くは来日公演も実現してほしい。

I Am A Telescope
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The Limboos/ Limbootica!

本日は少し近況報告を。

今年はなかなかブログでのCDレビュー発信が出来ませんでした。
それはどうしようもなかったことですが
今日から更新頻度を戻すので
またどうぞよろしくお願い致します。

ミュージックソムリエの活動も頑張ろう。

The Limboos/ Limbootica!
2017年 スペイン
『ポップでグルーヴィな50年代風スウィング・サウンド』

 50年代の映画音楽(スパイ成分多め)へのリスペクトが込められたスウィング、ロックンロール。スペイン産らしく粘っこく熱気もムンムン、そしてすこぶるポップで聴きやすいところもポイントです。

 2013年、マドリードにて結成された新鋭グループ。オルガン、バリトン・サックス、ダブル・ベースを含む5人組です。どうやら他のバンドで活動しているメンバーも多いらしく、プロジェクト的な性格も強そう。グループの音楽性をエキゾチックR&Bと表現。2013年にデビューアルバムを発表して以来、本作は2枚目のアルバムとなります。
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 各メンバーの演奏はクールで余裕を感じさせるもの。50年代風スウィング・サウンドだけでも楽しいのですが、ポップな味つけとコンパクトな曲構成で勢いを感じさせてくれるのが素晴らしい。巻き舌のロックンロール度が高いヴォーカルも魅力的です。グループ名、タイトルの単純明快さが示す通りのコンセプト性の強い音楽ですが、高品質。
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The Limboos - I Don't Buy It - Official Video
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The Great Harry Hillman/Tilt

The Great Harry Hillman/Tilt
2017年 スイス
『360°回転のクリップが楽しくてついご紹介』

 今回、ご紹介するグループは公式hpにて日本語対応がされていました。その全文が以下になります。

1904年オリンピックで金メダル3つを得たハードル名選手ハリー•ヒルマン、105年後その名を冠し、スイス系バンド「ザ グレート ハリー•ヒルマン」結成。最新アルバム „TILT“ を携え初来日する。全欧制覇を経て極めたキャッチーで個性的なサウンドが3つのアルバム、„Livingston“ (2013) と „Veer off course“ (2015) そして „TILT“ (2017 Cuneiform Recordsより) にギュッと詰まっている。メンバー4人がオリジナル曲を慈しみ細かに織り合わせては、自由自在に編み直す。まさに今のジャズであり、不敵なハリーもさぞ喜んでいることだろう。
(引用ここまで)
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5月に来日していたとのことです。グループの音楽性を「キャッチーで個性的なサウンド」と表現している彼らですが、かなりアヴァンギャルドなフリージャズをやっています。レコメン(RIO)といってよい音楽性・・・・・・と思ったらレーベルはキュニフォームでした。ヨーロッパらしいダークで幻想的なサウンドを纏いつつ、様々な楽器を操る4人の距離が近づいたり、遠のいたりして、奥行きを感じさせるのが特徴です。曲によってはプログレっぽいドラマティックな展開を盛り込んでいるところもあり。
また彼らは今回のアルバムに合わせてクリップを制作しており、こちらの出来が素晴らしい。

How to Dice an Onion
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Bread & Butter/ Bread & Butter

Bread & Butter/ Bread & Butter
2017年 アメリカ
『その名の通り、シンプルながら飽きの来ない音楽』

 陽気なメロディーと賑やかなコーラス。イナフ・ズナフやズーターズのような、ご機嫌なパワー・ポップが楽しめるアルバムです。

 シアトルを拠点に活動するグループ、ブレッド&バター。以下の4人のメンバーで構成されています。Shane Herrell - vocals/bass/"science"/ Ryan Kraft - guitar/clarity/truck/ Lars Swenson - guitars/distortion/cookies/ Mason Lowe - drums/vocals/responsibility・・・最後のはニックネームか何かかな。本作はニュー・アルバムと銘打たれているものの、他にリリースの形跡が無い為、デビュー作と思われます。
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 哀愁味を加えた甘いメロディーが極上。チープトリック直系のパワーポップが全編で展開しています。アメリカのハード・ロック・バンドらしい開放感のあるエネルギッシュな演奏、掠れて伸ばす発声が渋いヴォーカル、共に魅力的。その名の通り、シンプルながら飽きの来ない音楽です。
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Bread & Butter - Worst Of Times (Live on KEXP)
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