石指拓朗/ねむの花咲く その下で

石指拓朗/ねむの花咲く その下で
2017年 日本
『多重録音でも侘しさ満点』

 ちらほらと素晴らしい評判を聞いていたフォーク・シンガー石指拓朗の新作を購入しました。東京を拠点に活動しており本作で2枚目のアルバムとなります。
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 カントリー、ブルースの影響が伺える渋いギターに、日常の風景を描写した歌が乗るギター弾き語りによるフォーク。バンジョーやマンドリンといった伴奏も全て自分で担当。多重録音で収録しています。テープ早回しも1曲あり。この辺りは新世代ミュージシャンならでは、ですが現代的要素はそのくらいです。

 歌は力みが無く、軽やか。70年代日本語フォークの面影があり、高田渡や近年CD化された、ひがしのひとしを彷彿とさせます。なるほど、評判通りの素晴らしいフォーク・シンガーだと思いました。1回ライブを見てみたい。

汽車よ
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James Vincent McMorrow/True Care

James Vincent McMorrow/True Care
2017年 イギリス
『電子音とソウルが同居した、21世紀型SSW』

 アイルランド出身SSWによる4枚目のアルバム。以前、1STと2NDをこちらで紹介しましたが去年サードがリリースされていた模様。約8カ月と短い間隔で新作がリリースされました。
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 シンセサイザーと緩やかなビートに浮遊するファルセット・ヴォーカル。フォーク、エレクトロ、ソウルが渾然一体となった音楽をやっており、ジェイムス・ブレイクにも通じるスタイルだと思います。

 セカンド以降、顕著となったエレクトロ要素も完全に馴染んでいます。ジャンルレスで音楽を気ままに楽しむ姿勢が作品に反映されている印象。これまで電子音たっぷりの音楽性ながら、ヴォーカルにはエフェクトが掛かっていなかったのが彼の拘りでした。しかし本作からはいよいよ一部の曲でヴォーカルエフェクトも導入。もちろん、艶やかなヴォーカルの表情はそのまま楽しめるものの、ちょっと寂しい気持ちもあり。他に新要素としては黒人音楽らしいトライバルな曲が登場したことでしょうか。ポコポコと泡立つリズムが新鮮です。
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True Care
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The Pure Conjecture/ No Ghosts

The Pure Conjecture/ No Ghosts
2017年 
『イギリスらしい暗い幻影を楽しめるグループ』

 根暗で欝々。それでいて洗練されていて華麗なビートとコーラス。甘くソウルフルなヴォーカル、ぐるぐる回るシンセサイザー。みんな、どんよりしています。ちょっとポリスっぽいかもしれません。

 ウェールズのカーディフ出身。ポリスっぽいと言っておいて何ですが、10人編成の大所帯グループです。マシュー・イートンとダレン・ムーンという二人の作曲コンビを中心に結成されており、クレジットは以下。

Matthew Eaton (vocals/guitar), Darren Moon (vocals/guitar), Matthew Twaites (synths), Rose Elinor Dougall (vocals/piano), Johny Lamb (horns), Marc Geatty (bass), and Joel Gibson (drums). Additional contributors are Andrew Michell (lead vocals and co-writing credit on "Knock Four Times"), Ashley Mcavoy (backing vocals on "Not A Cloud In The Sky"), and Joe Harling (lead guitar on "No Ghosts").
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誰が誰か、それは次回作までの宿題ということで!

メンバーはウェールズのみならず、イングランド、スコットランドの様々な場所から集結しているそうです。結成時期は不明ながら、本作はサード・アルバムになるとのこと。
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ジャケ良し!

 ニューウェイヴ系のシンセ・ロックを土台としていながら、ホール&オーツがやりそうな陽光メロディーが入っていたりして、ノーザン・ソウルやAORのルーツも取り込んでいるのがポイント。無機質にリフを弾いていたかと思えば突如エモーショナルでノイジーなソロを弾き倒すギター、そして前述のソウルフルなヴォーカルが魅力的です。

 作曲デュオを中心に結成されただけに、楽曲の出来が抜群に素晴らしい。どんよりとした暗い幻影を楽しめる30分です。非常にイギリスらしいグループ!

The Pure Conjecture // No Ghosts [Trailer]

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寺尾紗穂/たよりないもののために

寺尾紗穂/たよりないもののために
2017年 日本
『過渡期終了』

 8thアルバム。今回も1曲目から打ち込みを導入しており、度肝を抜かれました。凝ったアレンジだったけれども古風だった『わたしの好きなわらべうた』からの落差は大きい。2曲目はキャット・スティーヴンス「RubyLove」風リフレインが印象的な、ほのぼのとしたポップ・チューンでした。3曲目は新しい日本の童謡という趣のピアノ弾き語り・・・・・・と全曲紹介はやめておきます。
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 打ち込み、チェロやフルート、ヴァイオリンなどによる優雅な伴奏が特徴で、「青い夜のさよなら」からの音楽性を引き継いでいるアルバムです。ただし前2作よりはピアノの存在感を強めている印象。彼女独特の伸びやかな節回しを含め、清々しくきっぱりとした意志を感じる歌声はいつも通り素晴らしい。 

たよりないもののために
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Styx/ The Mission

Styx/ The Mission
2017年 アメリカ
『思ったよりもちゃんとスティクス』

 アメリカン・プログレ・ハードを代表するグループ。そして80年代のアメリカに於いてジャーニーやサバイバーなど産業ロックのムーヴメントへ続く流れを生んだグループでもあります。そんなスティクスが新作を出したとのこと。14年振りだそうです。
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 僕自身はリアルタイム世代ではなく、後追いでデビュー作から『Kilroy Was Here』(ミスター・ロボット)までチェックした程度です。一
般的には1976年の『Crystal Ball』から1983年の『Kilroy Was Here』までが黄金時代だと思います。プログレッシヴ・ロックをルーツとした、キーボードとギターが主役のドラマティックなハード・ロックが特徴。デニス・デ・ヤングのハイトーン・ヴォーカル、トミー・ショウの書く哀愁味のあるメロディアスな楽曲が魅力でした。中心人物二人の不仲が原因で活動休止となった以降は失速。1999年にはトミー・ショウが復帰しての復活作『Brave New World』を発表するもののデニス・デ・ヤングが健康上の理由で降板することに。以降、新しいヴォーカル、ローレンス・ガーワンを据えて活動を続行。本作はそんなトミー・ショウがリーダーを務めるスティクスの新作ということになります。
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 キャッチーなハード・ロック作が聴けるかな、という控えめな期待を上回り、シンセサイザー、キーボードが飛び回り、コーラスも盛りだくさん。スティクスらしいアルバムに仕上がっています。パワフルなスタジアム・ロック調になったサウンドは、往年のスティクスとは異なりますが、マインドは受け継がれている印象です。「2033年に行われる火星への人類初の有人探査」という設定の物語をコンセプトとしており、その題材からも想像できる大仰な世界観がそのまま作風に反映。トミー・ショウのメロディー・メイカー振りは健在で、質の高いアメリカン・ロックが楽しめます。

Styx - Gone Gone Gone
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Cheap Trick/We're All Alright!

Cheap Trick/We're All Alright!
2017年 アメリカ
『ノスタルジーたっぷり』

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プ・トリップの新作がリリースされました。何だかレトロなジャケだな、と思ったら70年のグループ・ショットを使っていたりして、どういうことだろう。どうやら今回のアルバムには昔に制作中だったデモ段階のボツ曲を蘇らせたものがいくつか(いや、ジャケがこういうテイストだから相当量だと思います)含まれているみたいです。長い活動歴があるからこそ、出来る企画ですね。

 聴いてみると納得。70年代のチープ・トリックがやっていた、ギターリフを主軸としたポップなロックンロール調の曲が充実しています。とは言え、当時のチープ・トリックのような隙間を空けた音作りや、甘さは控えめで、『Lap of Luxury』(1988年)期のようなエッジの鋭いパワフルなロック・サウンドになっているのがポイント。

 楽曲は単純明快なロックンロール、MTV時代を彷彿とさせるパワーバラードとこれまでのキャリアに於いてのハイライトをいいとこどりしています。ヴォーカルは力強いシャウトをする部分がありつつも、ちょっとパワー不足。エフェクトに頼りがちです。ロビン・ザンダーもかなりのベテランですから、これは仕方ありません。むしろ今出来る精いっぱいで若い頃の作風に挑戦している様を見届けるのが楽しみというべきでしょう。ノスタルジーたっぷり。昔からのファンにもおすすめのアルバムです。

Long Time Coming (Static Version)
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Marian Call/Standing Stones

Marian Call/Standing Stones
2017年 アメリカ
『アラスカ発女性SSW』

 アラスカに住みながら音楽を世界に発信する、ということをインターネットを通じて実現したミュージシャン、マリアン・コールのニュー・アルバムをご紹介。

 1982年にワシントン州のギグハーパーで生まれたマリアン・コール。2004年にスタンフォード大学にて作曲と声楽の学士号を取得した後に、自身の憧れの地であったアラスカへと移住。以後、古典芸術の歌、ミュージカル、ゴスペル、ポップ、カントリー、ロック、フォーク、ジャズなど、あらゆる分野の音楽を研究する一方で、自身の作曲を始めています。マイ・スペースなどを活用することで世界の音楽ファンと繋がることが出来ることも分かり、現在までカバー・アルバムやライブを含む10枚のアルバムを発表しています。本作はスタジオ作としては7枚目のアルバムにあたります。
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 最も影響を受けたミュージシャンとしてジョニ・ミッチェルを挙げている彼女。実際、アコースティックな部分、フォーキーなメロディーではその影響が伺えます。クールで穏やかな歌声とギターを中心に、曲によってバンドセットやストリングスが加えられた録音がされています。ただ上記したように複雑なバックボーンを持っているだけにそれだけではありません。スペーシーで演劇的な音楽性や環境ゆえの荒涼な雰囲気が彼女なりの個性を際立たせています。スケールの大きさを含めて、ケイト・ブッシュに似ているところがあり。ドラマティックな曲展開は素晴らしい。
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Oregon Trail
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浜田真理子/Town Girl Blue

浜田真理子/Town Girl Blue
2017年 日本
『隣に住んでるピアノの先生にも教えないと』

 ジャズ・ヴォーカル、歌謡曲の流れを汲んだ歌手、SSWである浜田真理子の新作。今回は久保田麻琴プロデュースということで、ますます期待が高まります。
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 英語詞、日本語詞の曲が交互に置かれた構成で、インスト1曲、カバー4曲を収録しています。

 前作『But Beautiful』にもあったバンド演奏は本作でもあり。それでもピアノ弾き語りを中心とした構成に戻しています。ピアノの残響の美しさ、清々しい歌声を芯に据えた音作りがプロデュースの方針でしょう。2曲目「You don't know me」でのたそがれたスライド・ギターは久保田麻琴らしいですし、クレジットを見るとアップライト・ベースやアコーディオンなども入っているのですが、さりげない加減のアレンジがされています。自分の音で仕上げるのではなく「自分はこの人のここが好きなのだ!」という所に誘導する手法が見事にハマっている。いいアルバムです。

カバー曲のうち「なにもない Love Song」だけは全く知らずに「なんていい曲を書くのだろう!凄い!」と思ってしまいました。実際は久保田麻琴プロデュースのギタリスト、濱口祐自の作品とのこと。こちらもチェックせねば。

Town Girl Blue (全曲試聴)
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Pokey LaFarge/Manic Revelations

Pokey LaFarge/Manic Revelations
2017年 アメリカ
『ウキウキ気分にさせてくれる』
 
  自らの音楽ジャンルについて、カントリー、ブルースとアーリー・ジャズを21世紀流で、と記しているポーキー・ラファージ。50年代のキャバレー音楽やパブロックのような市井の人々に囲まれて育まれたような、親しみやすさと軽快さがあります。
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 ポーキー・ラファージは1983年生まれの33歳、イリノイ州ブルーミントン出身。子供時代に祖父の影響から、バンジョーとギターを始めます。しかし彼の夢はアメリカ文学の作家になることで、スタインベックなどの名作を読みながらアメリカの歴史を学ぶ過程で、ブルース、カントリーに触れることになったそうです。その後、近所のピザ屋で演奏しているブルースマンからの影響で、いよいよアメリカのルーツ音楽への興味に目覚め、バンドを組むことになりました。2006年にバンドを率いてのソロ・キャリアをスタート。現在まで7枚のアルバムを発表。既にアメリカのみならず、世界の音楽ファンからtoe-tapping music(足でリズムを取りたくなっちゃう音楽)と呼ばれ、親しまれているとのこと。本作は8枚目となります。
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 今回のアルバムではトランペット、ユーフォニアム、チューバ、ピアノ、サックス、ベース、クラリネット、フルート、グロッケンシュピール、エレキギター、ドラム、パーカッション、洗濯板、アップライトベース、ハーモニカなどを使用する、7人編成のバンドを組んで制作しています。穏やかながら心地よい低音が素晴らしいヴォーカルは、古き良きアメリカを想起させるもの。冒頭に記したアメリカン・ルーツ・ミュージックの他に、所々でウエスタンも混じっています。既に8枚のアルバムを出しているだけに、この音楽が芯まで馴染んでいるのが良く分かります。まだ来日したことが無いみたいですが・・・・・・来ないかな。

Riot In The Streets
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