Jessica Gabrielle/Crazy

Jessica Gabrielle/Crazy
2017年 フランス
『タイトル曲は今年を代表する名曲』

 エイミー・ワイングラスとジョス・ストーンを足して割ったような、と現地のメディアから形容される新人ソウルSSW。スマートで涼やかなソウル・ミュージックはヨーロッパならではのものです。ハキハキとしたパワフルな歌唱は表情豊か。影のあるメロディーが印象的な楽曲群にはローラ・ニーロやキャロル・キング、リンダ・ルイスなど、ポップスからの影響も感じさせます。
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 フランス系アメリカ人、ジェシカ・ガブリエルはコロラド州で生まれ、現在はフランスのパリに移住しています。活動開始時期については不明ながら、2012年にはデンバーの歌唱コンテストの最終候補まで残った経歴があり。アルバム・デビュー前から幾多の歌唱コンクールに応募しているものの、残念ながらファイナリスト止まりだったようです。本作はコツコツと書き溜めていた自分の楽曲をまとめたファースト・アルバム。
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 既に書きましたが、ソウルというよりはソウルフルなポップスという印象。ピアノ弾き語りに、適時ストリングス、バンドを足した編成で録音されています。後ほど紹介しますが、表題曲「Crazy」の出来が圧倒的。他の曲も悪くはないのですが霞んでしまいます。ただデビュー作にして、素晴らしい曲を作ることが出来たのは僥倖。これからの活躍が期待される新人SSWです。

CRAZY

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ぶどう÷グレープ/おやつの隠し場所

ぶどう÷グレープ/おやつの隠し場所
2016年 日本
『集大成だから安定のいつも通り』

 日本のニューウェイヴ、テクノ・ポップ・バンド、ぶどう÷グレープの最新作。前作のレビューはこちら

 インフォによるとデビュー10周年とのこと。自分はサードからファンになりましたが、リリース間隔が短いのでまだ10年しか経っていなかったのか、という印象です。先行して発表されていたシングル曲10曲をリマスタリングして収録しているとのこと。
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 インフォでは集大成のアルバムと呼ばれており、シングル曲を集めた甲斐のあるバラエティーに富んだ内容です。とは言え、ピコピコ・シンセと個性的なくみんこのヴォーカルの強力な記名性があるので、ぶれは全くありません。大きな驚きこそ無いものの、いつも通り、アヴァンギャルドでポップなぶどう÷グレープが楽しめます。集大成が終わった次のアルバムも楽しみです。

 イギリスでのライブ映像がyoutubeで公開されていたので、チェックしたのですが自然に受け入れられていてすごかったです。
すってんころりん、すってんころりん、の熱唱にほのぼのとしました。

運命のバス
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The Buttertones/Gravedigging

The Buttertones/Gravedigging
2017年 アメリカ
『無邪気なサーフ・ロック懐古』

 サーフ・ロックをベースにビート、ガレージ、サイケデリックの要素を詰め込んだ音楽は、猥雑でサスペンスな魅力に溢れており、まるでスパイ映画か西部劇のサウンド・トラックのようです。
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 ロサンゼルスを拠点として、2012年に結成された5人組バンド、ジ・バタートーンズ。サーフ・ロック、ガレージ・パンクなど60年代の音楽からの影響を吸収して自身のスタイルを身に付けていったとのこと。本作は3枚目のアルバムとなります。
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 メンバーにはホーン奏者と鍵盤奏者が加わっており、分厚くドラマティックなサーフ・ロック・サウンドが楽しめます。サーフ・ロックのリバイバルではありますが、先達のサーフ・ロックの特徴をより増幅させているのが特徴。いわゆるペケペケ・ギターもより高速に、ヴォーカルのけれんみもたっぷり、など全てが大仰なアレンジで聴いていて微笑ましいです。その為、アルバムを通して聴いていると8曲目辺りでもたれてしまう側面もあり。

 それでも、サーフ・ロックへの拘りが伝わってくる筋の通ったアルバム。聴き応えは十分です。

Sadie's A Sadist
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砂場/軌跡

砂場/軌跡
2017年 日本
『東京のワンマンに行けなくてごめんなさい』

 3年振りの新作。今回も自主盤ということで一部インディーズ取扱店と通販のみでの販売でした。6月には東京でワンマンが開催されており、その告知も頂いたのですが・・・・・・行けなかったのですよね。申し訳ない気持ちであります。

 砂場は長野出身の3人組ロック・バンド。2000年代前半に結成されており、これまで全国流通で1枚のアルバムを発表した他、自主のミニアルバムを3枚リリースしています。フォークや演歌に通じる泣き、叙情、コブシを取り入れている和の部分と、オルタナティヴ・ロック経由のダイナミックなメロディー展開という洋の部分を混ぜ合わせた情熱的なロックをやっているのが特徴。またバラードではアコースティックな音作りがされており、こちらではセンチメンタルなフォーク・ロックとしての魅力があります。
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 今回もミニアルバムです。自主制作で頑張っている期間が長く、ファンとしては寂しいところ。前半と最後に激しいロック・ナンバーを置き、間の3曲がバラードという構成です。バンドとしての特徴、魅力を上に書き出してみましたが、それは健在。メンバー各人が名古屋、東京と離れている状況が続いている中、まだまだ砂場というグループが元気に活動しているということが分かって安心する1枚でした。ハードルは高いのかもしれませんが、これまで自主制作で作って来た音源を集めて、1枚のアルバムにして全国流通すれば・・・・・・などと考えてしまいました。取り敢えずライブ情報はチェックします。

今回、音源はありません。
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阿佐ヶ谷ロマンティクス/街の色

阿佐ヶ谷ロマンティクス/街の色
2017年 日本
『凝ったアレンジが光るシティポップ・レゲエ』

 レゲエ、ダブの要素をシティポップと融合させたからシティポップ・レゲエと呼ばれている、そうです。

 2014年に結成された女性ヴォーカルを擁する6人組グループ、阿佐ヶ谷ロマンティクス。作りためて来た楽曲をまとめたファースト・アルバムです。
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 幽玄なシンセサイザーのエフェクト、特有のビート辺りがレゲエの雰囲気をプンプン醸し出しています。メロディーはアメリカのAORや西海岸SSW、そしてそこから影響を受けた日本のシティポップ・ミュージシャンなどを連想させる爽やかさが特徴。おかずの入れ方がうまく、アレンジが凝っているのもポイント。
ヴォーカルはアルバム音源とは言え、声域の狭さ、不安定さが分かってしまうのですが、声を伸ばす時のしゃがれた余韻などにみられる憂いの表情にハッとさせられます。透き通ったキーボード、トロピアルな雰囲気を盛り上げる流麗なギターなど、演奏も素晴らしい。レゲエのアルバムとしては、バラエティーに富んでおり、執念も感じる力作です。

所縁

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Tennis/Yours Conditionally

Tennis/Yours Conditionally
2017年 アメリカ
『ソウル懐古のドリーム・ポップ』

 コロラド州デンバー出身の夫婦ポップ・デュオ、テニスによる4枚目のアルバム。60~70年代のソウル、ポップから幅広く影響を受けているとのこと。
 
 シンセサイザー、コーラスにエコーを掛けたアレンジと打ち込まれたビートが、ソウルフルなメロディーと同居しており、サイケデリックな雰囲気を醸し出しています。ファルセットが魅力的な女性ヴォーカルの存在感も十分。
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ジャケもウッドストック系SSWがやりそうな感じに。

 ストリングスたっぷりのフィリー・ソウルをドリーム・ポップの手法で表現しています。ソウルの熱気、感情がデジタルのフィルターを通して無機質、クールさに変換されている。こう書いてしまうとネガティブな印象だけれども、ヒンヤリとしていながら気怠いソウルを感じることが出来て、新鮮。

In The Morning I'll Be Better
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古川豪/羅針盤で星占いはできない

古川豪/羅針盤で星占いはできない
1973年 日本
『トラッドは古くならない』

 現在でもユニオンやタワー・レコードなどで行われている、独自のCD再発企画。2003年、アマゾンが企画したURC再発リクエスト企画もそういった独自再発企画の一つだったのでしょう。ファン投票で選ばれただけあるマニアックなラインナップが揃っていたのですが、オムニバス盤が多めの構成。その中に本作や五つの赤い風船の『五つの赤い風船’75』『ボクは広野に一人居る』中川イサト『1970年』といった作品が混ざっていました。自分がこの存在を知ったのは売り切れてプレミアが付いた後だったので、かなり悔しかったです。URCの再発はグリーンウッドが頑張ってくれており(もう終わりが見えてきたっぽい?)、五つの赤い風船も再発されましたが・・・・・・上記のアルバムは一度再発されたということでオミットされています。残念ながら再発時に入手できなかったので、コツコツと納得できる中古を探索していた訳ですが、この度本作を手に入れることが出来ました。(後は『ボクは広野に一人居る』だけであります。)

 京都を拠点に活動するフォーク・シンガー、古川豪のデビュー作。ちなみに本作の前に自主盤があり。初めて聴いてみるといくつかあるセックスソングの印象が強烈ですが、死についての哲学的な歌、京都の暮らしの歌も収録されています。バンジョー、ダルシマーも操るギター弾き語りで、一部ではフィドルも参加。既にセカンドのレビューでも触れていますが、アイルランド民謡のカバーが1曲収録されている他、アメリカ民謡の影響を強く受けた楽曲が多いです。セックスソングでの愛嬌を含めて、全編でトラッドソングらしい泥臭い反骨精神が貫かれています。1973年のURC、ここにありという風情。ファーストはギタリストの弾き語りをベースにしており、セカンドはアレンジが凝っています。どちらも素晴らしい。

※ これを書いた後で、10月頃に紙ジャケで本作がcd化されることを知りました。
まぁそういうものですよねー。

トカトントン/古川豪
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星野みちる/ My Favorite Songs

星野みちる/ My Favorite Songs
2016年 日本
『明るく朗らかなアレンジがされたカバーアルバム』

 星野みちるの新作はカバー・アルバム。これまでプロデューサー、はせはじむの計画、綿密な設計図に沿って4年間、歌手活動のキャリアを積んできた彼女。今回のカバー・アルバムでも選曲の決定権をある程度(半分くらい)プロデューサーに委ねています。信頼関係が築かれているのでしょう。EPO、矢野顕子、松田聖子、杏里、山下達郎、イックバル、松尾清憲と硬軟入り乱れる選曲。
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 ハキハキとして清々しい歌唱には堂々たる自信も含まれており素晴らしい。多くの曲で大胆なアレンジが施されているのが特徴。モータウン・ビートを入れつつロック度を上げた「恋するフォーチュンクッキー feat. ザ・スクーターズ」や朗らかなミドル・テンポへと変貌した「ずっと一緒さ」など、多くの曲で明るく朗らかなイメージへと変貌しています。イックバルは日本のシティポップに憧れているインドネシアのグループとして話題ですが、はせはじむの日本語詞が付けられていることで、全く違和感が無くアルバムの中で同化。

収録曲のミュージシャンの中で比較するならEPOや杏里のアルバムのような、すっきりした聴き心地でした。
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Timothy Seth Avett As Darling/IV

Timothy Seth Avett As Darling/IV
2017年 アメリカ
『ニック・ドレイク、ロン・セクスミスのラインを通っているフォークが好きなあなたに。』

 甘く切ないメロディーと軽妙な歌い口。田舎の家の軒先で演奏しているかのような、素朴で気安い佇まいはまるで70年代の日本語フォークの如し。この寂しいギターの音色は何だ!これはいいシンガー・ソングライターです。

 ティモシー・セス・エイベット。3人兄弟の末っ子として、ノースカロライナ州コンコードにて、1980年に生まれました。現在36歳。兄であるスコットと共に幼少期よりバンド演奏を始めています。兄のスコットがバンジョー、セスがギター、幼馴染のボブ・クロフォードがダブル・ベースという編成。2000年よりエイベット・ブラザーズと名乗って活動しており、その後、キーボード奏者のジョー・クォンを加えて現在は4人編成です。ブルーグラス、アメリカーナといった伝統音楽に根差したカントリー・ロックをやっています。→音源(youtube) 本国アメリカでは人気を獲得しており、日本語のページもちらほらと。実績を積んでいるグループです。初めて聴きましたがルーツに根差していながらも渋くなり過ぎず親しみやすい音楽で素晴らしい。さて、セスの話に戻ります。グループとして9枚のアルバムをリリースする傍らで、セスはソロ活動をしており、これまで3枚のアルバムをリリース。2005年のサード以来、ブランクが空いていましたがこの度12年振りの4作目がリリースされました。
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このジャケからするとフォークというよりも甘いピアノ・バラードが似合いそうですが・・・

 エイベット・ブラザーズと比べるとメロウで淋しげな表情が印象的な作風。ギター弾き語りを中心に、曲によってはバンド・セット、ヴァイオリンが入る曲もあり。もちろんアメリカ発の音楽なので、陰よりも朗らかさが先に立つ部分もありますが、総じて穏やかなことは確か。メロディーの質が素晴らしい。ニック・ドレイク、ロン・セクスミスのラインを通っているフォーク好きな音楽ファンには是非聴いてもらいたいです。まずは以下の曲をどうぞ。

should we move
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Chastity Brown/Silhouette of Sirens

Chastity Brown/Silhouette of Sirens
2017年 アメリカ
『ゴスペル、アイルランド、ブルースが同居』

 アフロヘアの女性ミュージシャンが登場すると、ついついチェックしてしまう。やはり華やかで目立ちますから。そしてチャスティティー・ブラウンを見つけました。
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 1982年、アイルランド人の母とアフリカ系アメリカ人ブルース・シンガーの父の間に生まれたチャスティティー。ニューハンプシャー州北部で生まれ、テネシー州ユニオンシティで育ち、現在はミネソタ州ミネアポリスを拠点に活動しています。幼い頃からアイルランド民謡やブリティッシュ・トラッド、フォークを聴きながら、同時に父の影響でブルースにも親しんだ彼女。礼拝堂でのゴスペル・コーラス隊の中でドラムとサックスを演奏して育ったそうです。多様な音楽経験と何度かの移住を経て、豊かなバックボーンが形成されているようです。彼女は影響を受けたものとして、ジェイムス・ボールドウィン、カーソン・マッカラーズという二人のアメリカ人作家を挙げています。2007年にアルバム・デビュー、本作で5枚目になります。現在はマイケル・キワンカ、ダー・ウィリアムズ、ラウル・ミドン、レオン・ラッセル等のライブ・ツアーをサポートするなど、知名度を獲得。ミネアポリスにてベスト・フォーク賞を受賞したことを始め、いくつかの音楽賞も受賞。名前が売れてきています。
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 壮大で力強いゴスペル要素、図太いブルース・ロック、枯れたカントリー・ギターといった要素が同居。またシャッフル、ビート・ナンバーもいくつか収録されており、ブリティッシュ・ロックからの影響も感じさせるのがポイントです。哀愁を帯びたメロディー、パワフルな歌唱共に申し分なく伸び伸びとしたアメリカン・ロック作として楽しめました。

Carried Away
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