Laura Marling/Semper Femina

Laura Marling/Semper Femina
2017年 イギリス
『ジョニ・ミッチェル風で優しいアルバムに』

 前作ではロック色を強めつつも、内省的でダークな作風が印象的でした。しかし本作ではフェミニズムを指すであろうタイトル通り、柔和で包容力を感じさせるゆったりしたムードが特徴です。

 2006年にデビューした、イギリス、ハンプシャー州出身の女性SSW。当時、盛り上がっていたニュー・フォーク・ムーヴメントの中で、17歳だったローラは若さからは想像もできない渋い歌声と流麗なアコースティック・ギター、そして妖精のようなルックスで注目を集めました。これまで5枚のアルバムをリリースしており、その度にマーキュリー賞やBリット・アワードなどの賞レースにノミネートされる一流ミュージシャンです。尚、2011年にはブリット・アワードを受賞しています。
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 今回のアルバムではプロデューサーにアメリカ人であるギタリスト、ブレイク・ミルズを起用。ジョン・レジェンドなど、アコースティック系のミュージシャンを担当している人物です。またストリングス・アレンジとしてロブ・ムースを起用していることもポイント。前作をセルフ・プロデュースで籠って仕上げたのと対照的に開け放った制作過程と言えます。
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 アメリカ人プロデューサーということで、のどかなフォーク・・・というよりもジョニ・ミッチェルのような、ほのぼのとしたフェミニンなフォークが楽しめます。「Circle Game」や「Chelsea Morning」辺りの雰囲気を思い浮かべて頂ければ間違いないところ。ストリングスがいい仕事をしています。かつて、ジョニ・ミッチェルの音楽はイギリスの70年代女性SSWに大きな影響を与えました。例えば、シェラ・マクドナルドやクレア・ハミルのような、そんな慎ましやかだけれども心地よい英米折衷のフォーク・サウンドが蘇っています。これまでの彼女のアルバムの中でもダントツに親しみやすい出来。この機会に是非。

Wild Fire
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Real Estate/In Mind

Real Estate/In Mind
2017年 アメリカ
『気怠さが強調された新作』

 のどかで夢見心地なネオアコ、ギター・ポップで人気を博しているグループ、リアル・エステート。前作から3年を経て4thアルバムが到着しました。
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 アメリカ、ニュージャージー州出身。2009年にデビューした5人組のポップ・バンドです。尚、今回メンバー・チェンジがあり、ギタリストのマット・マンダニルが脱退した代わりに、ジュリアン・リンチが加わっています。
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 前作の延長線上といえる作風で、気怠いヴォーカルとゆらゆらとした陽炎ギターは健在。ギタリストの交代を経ても軸はしっかりしています。そうはいってもマットは中心人物だったようで、その分ヴォーカルが存在感を増幅。インストパートは大人しめ(唐突に挟まれていたインスト・ナンバーも無し)で、ヴォーカルとコーラス、エコーによる気怠さがより強調されている印象です。インスト・パートではピンク・フロイドっぽいサイケデリックなループを数か所で聴くことが出来、それは不穏でダークな雰囲気。気だるいというよりも鬱屈という感じです。こうなると不在だったマットのギターこそが、気怠くなりがちなバンド・サウンドに煌めきをもたらしていた、と気づかされる次第。

 それでも、どんよりとしたインスト・パートで前曲が終わった後のキラキラしたキーボードのイントロ、といったコントラストは素晴らしく、このアルバムの魅力だと思います。加えて、新加入ゆえの遠慮がジュリアンにはあったと思うので、次回作以降での新しい方向性に期待です。

Stained Glass
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Jim Jidhed/ Push On Through

Jim Jidhed/ Push On Through
2017年 スウェーデン
『あのエイリアンの初代ヴォーカルがそれっぽいアルバムを!』

 珍しく北欧勢が続けて登場。でも順番逆にすれば良かったかな。ごめんなさい、今日はマニアックです。1980年代後半に登場して話題となった北欧ハード・ロック・グループ、エイリアン。その初代ヴォーカルを務めていた男、ジム・ジッドヘッドによる新作ソロ作です。
 
 エイリアンのファーストが発表された1988年(あるいは翌年だったかも)、木更津から新宿まで遠征して輸入盤店でファースト・アルバムを購入して以来、ずーっと聴き続けてきたエイリアン。クッサイなー、ダッサイなー、と思いつつも、その哀愁のメロディーの素晴らしさに「それでも好きだよなー。」とどっぷりハマっていたグループでした。
 
 エイリアン自体は数作で解散したものの、2014年に再結成を果たしているようです。そしてジム・ジッドヘッドですがファースト・アルバムの高評価を経て脱退。以降、ソロとして活動を続けていたとのこと。ただ、リーダーのギタリストが曲を作っており、加えて後任のヴォーカルも素晴らしい技量を持っていたので、これまで気にしたことはありませんでした。そして忘れた頃に偶然耳にしたのが本作という訳です。
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 1回聴いただけでこれは聞き覚えがあるぞ、と感じました。彼の声はもちろんですが、哀愁たっぷりのメロディアス・ハード・サウンドが郷愁を誘います。ジムは長らくAOR路線で頑張っていたとのことですが、ここに来て突如の原点回帰。さすがに80年代当時よりも枯れた声質ながら哀愁味は健在で魅力的なヴォーカルが堪能できます。楽曲に関してはエイリアンほどの爽やかさは無く、ちょっと暑苦しいところもあり。ですが、クサさ、ダサさ共に申し分ないメロディーが満載で、往年の雰囲気は十分に楽しめます。バンド演奏は速弾きをビシバシ披露するギター(これが暑苦しさの元になっていますが)を中心に、華やかでキレのあるアンサンブルを聴かせてくれます。

If We Call It Love
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Hajk/Hajk

Hajk/Hajk
2017年 ノルウェー
『アンニュイなa-ha、みたいな感じです。』

 男女混合グループならではのカラフルなコーラスと爽やかなメロディー。キラキラとした透明感のあるサウンドは正に北欧ならではのものです。ソウル、フュージョンの要素を加えたネオアコースティックの流れを汲むポップ・ミュージック。なんだか湿度が高くなってきたこの頃、清涼感をもたらす音楽としてちょうどいい感じ。
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 専任ヴォーカル2人(男女一人ずつ)を含むギターレスの5人組グループ、ハルク。オスロを拠点にして活動しています。詳しいバイオを探すことは出来ませんでしたが、2017年1月に初めて楽曲を発表したとのことなので、恐らくここ数年の間にデビューしたグループでしょう。これがデビュー・アルバムとなります。尚、本作は4月に発表されたものですが、日本でも7月にブリッジからリリースが決定済み。
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おっ、て思わせるジャケですよね。

 ギターレス(とは言え、数曲でアコギが登場します)ということで、男女コーラスとキーボードが活躍。儚く蜃気楼のようなコーラスはとても滑らかでさすが北欧と感じさせます。キーボードは透き通った高音ばかりではなく、低音も同時に鳴らして重層的な演奏が特徴。加えて前述通り、ブラック・ミュージックのセンスも併せ持っているので、スタイル・カウンシルのような洗練されたポップ・ミュージックが楽しめます。捻くれたメロディー展開が満載の楽曲群を、男女ヴォーカルがそれぞれ分け合って担当するので華やかで飽きが来ないアルバムとなっています。

 日本盤がリリースされるのも納得で、北欧ならではのキラキラ・ポップが好きならば是非聴いていただきたい。

Not Anymore
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森田童子/東京カテドラル聖マリア大聖堂録音盤

森田童子/東京カテドラル聖マリア大聖堂録音盤
1978年 日本
『まさか手拍子が起こるとは』

 唯一のライブ盤です。彼女のスタジオ盤には編曲家の様々な仕掛けが施されています。その上での作品なのですが、実際彼女がどのような演奏をしていたのかを知る上ではライブ盤は欠かせません。CD化の際に2曲が追加されて全10曲となっています。
東京カテドラル聖マリア大聖堂という教会でのパフォーマンスを収録。ここへは行ったことが無いのですが、震えるような残響が印象的です。
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コーラス隊、ピアノ、オルガン、ヴァイオリンなどを擁した豪華編成のライブ。あくまでも彼女の歌とギターを主役として、演奏陣はサポートに徹しています。ライブでの歌唱は少し非力に感じるところもありますが、儚い味わいは唯一無二。慣れているからかテンポが速くなっている曲がいくつかあり、「ぼくと観光バスに乗ってみませんか」では手拍子も起こります。昭和の雰囲気を感じました。コーラス隊と拍手が混ざり合うざわざわとした感じが良かったです。
何曲かで語りの時間もあるのですが、少し籠っている上、声が小さいのであまり聞き取れません。何度か聴き返してみようと思います。

ぼくと観光バスに乗ってみませんか(LIVE)
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Heads Hands & Feet/ Heads Hands & Feet

Heads Hands & Feet/ Heads Hands & Feet
1971年 イギリス
『沼に片足を』

 マッスル・ショールズ・スタジオ誕生から2年を経た1971年。イギリスにもじわじわと浸透してきたスワンプ・サウンド、その洗礼を受けたミュージシャン達。彼らが生み出すことになるブリティッシュ・スワンプの作品群、その最初期にあたるグループがヘッズ・ハンズ&フィートです。

 今日、エリック・クラプトンのツアー・ギタリストとしても知られるアルバート・リー、チャス&デイヴとして活躍することになるチャス・ホッジズなど、当時から腕利きのセッション・プレイヤーとして知られていたメンバー達が結成したグループ、ヘッズ・ハンズ&フィート。そのデビュー作です。
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 先に書いたように彼らはスワンプからの影響を色濃く反映した音楽性を持っていますが、前身グループではサイケ・ポップをやっていたりと基本的に流行に敏感であり、一山当てたいという野心が分かりやすいグループです。本作でもブルース、R&Bというスワンプ要素だけでなく、フォーク、カントリー、ジャズ・ロックなどの要素が混在。まさにファーストらしい取っ散らかり具合ですが、アメリカ南部へのリスペクトという筋は通っています。歌唱、演奏共に申し分なく、アメリカ憧憬の奥から侘しさが滲み出るイギリス出身グループならではの音楽が楽しめるアルバム。

 永らく、音質の悪いシー・フォー・マイルズ盤で我慢して来た本作ですが、2016年にSHM-CDにて再発されています。

Country Boy
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Bombadil/Fences

Bombadil/Fences
2017年 アメリカ
『キャット・スティーヴンスのような陽光メロディー』

 ノースカロライナ州で活動するフォーク・トリオ、ボンバディルの6枚目。前作もレビューしています。またメンバーが加わったようで今回はトリオでの制作です。今回のアルバムを聴いてみて、アメリカの東海岸に位置するノースカロライナならではの爽やかで抜けの良い音楽性を感じ取ることが出来ました。また、ノースカロライナは、フォーク、トラッドが古くから根付いている土地柄でもあり、ボンバディルのような音楽が生まれるのも必然なのでしょう。
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 三人による穏やかな歌声とコーラス、アコギ、キーボードなど多重録音を駆使した、カラフルなフォーク。前作はほのぼのとしたのどかさが印象的でしたが、こちらはよりわいわいがやがやとした楽しさが強調されているような気がします。(まぁ一人増えましたからね)英米折衷のメロディーの魅力は相変わらずで、英フォーク・ファンにも楽しめる内容。全ての曲が3分台に抑えられており、テンポの良さもポイントです。
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I Could Make You So Happy
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Alasdair Roberts/Pangs

Alasdair Roberts/Pangs
2017年 イギリス
『蘇える中世イギリスの幻想風景』

 正統派のフォーク・ロック。オルガン、ピアノ、フィドル、エレキギター、フルート等が奏でるトラッドに根差した荒涼としたメロディーは、まるでフェアポート・コンヴェンション(男所帯)を彷彿とさせます。
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 スコットランド出身のシンガー・ソングライター、アラスディア・ロバーツ。カランダーという町で育ち、現在はグラスゴーを拠点として音楽活動をしています。2001年からCDのリリースを開始しており、ラフ・トレードやドラッグ・シティといったレーベルより9枚の作品を発表。本作は10枚目のアルバムとなります。ヴァセリンズやジェフリー・ルイスの作品を手掛けている若手のエンジニア、ジュリー・マクラーノンが録音を担当。
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 2017年ならではのクリアな音質ですが、やっていることは70年代英フォークの回顧。程よく枯れたヴォーカルと土臭い楽曲群は相性抜群。新しさは全く見いだせないものの、フェアポート・コンヴェンションやトゥリーズが奏でていた中世イギリスの幻想風景を蘇らせており、魅力十分。既にベテランの域に達するミュージシャンですが、全く知りませんでした。

An Altar in the Glade
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Python Lee Jackson/In A Broken Dream

Python Lee Jackson/In A Broken Dream
1972年 オーストラリア
『ロッド・スチュワートが3曲で参加』

 フェイセス加入前のロッド・スチュワートが3曲で参加、という文言がインパクトを放つ!高校生の頃、ラジオ番組パワー・ロック・トゥデイでこのアルバムを知り、大学生の頃、西新宿の中古レコード店で発見して購入。(プレミアは付いていませんでした)そして2016年、遂にCD化されました。
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 以下、ヴィヴィッドの解説を参考にして簡単なプロフィールをどうぞ。1965年にオーストラリア、シドニーで結成された4人組グループ、パイソン・リー・ジャクソン。当初はオーストラリアで活動していましたが、メンバーの半分がイギリスだったこともあり、1968年にはイギリスへと活動拠点を移すことになります。ロッド参加の経緯は、ヴォーカルを務めるベントリー自身が、既にソウル系ヴォーカリストとして実力が知られていたロッドに3曲歌ってもらうように頼んだとのこと。そちらはシングルとしてリリースされたものの、バンドは程なく分裂状態へ移行。ヤング・ブラッド・レーベルのミキ・ダロンが中心となって、メンバーを集結させて録音した音源を合わせて発表したのが本ファースト・アルバムです。

 オーストラリア時代にはサム&デイヴやカーティス・メイフィールドのカバーをシングルとしてリリースしていたパイソン・リー・ジャクソン。本作での音楽性もソウル度が高いです。ベントリーの書く曲はソウルフルでブルージー。泥臭く暑苦しいナンバーが並んでいます。ロッドの他、ゲイリー・ボイルも参加しており、オーストラリアのグループですが、イギリス主導のアルバムと考えて問題ありません。ロッド参加曲は文句なしにカッコよく、ショットガン・エクスプレス(←これ、インスト曲でした)でのパフォーマンスを彷彿とさせます。一方でそれ以外、グループ主導の音源はどうしてもインパクトで数段落ちるのが正直な所。悪くはないソウル要素を含むブルース・ロックではあります。エクスペリエンスの「Hey Joe」みたいな曲もあったりするのはご愛嬌。アルバムとしてのまとまりに欠けるものの、ロッド・スチュワートが好きであれば、一度は聴いておくべき一枚です。

Doing Fine
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DAVE KELLY/DAVE KELLY

DAVE KELLY/DAVE KELLY
1971年 イギリス
『枯れたブルース・ギターと渋いヴォーカルが炸裂』

 ザ・ブルース・バンドのリーダーであり、ジョン・ダマー・ブルース・バンドのギタリストとして活躍していたデイヴ・ケリーがジョン・ダマー・ブルース・バンド脱退後に発表したセカンド・ソロ。前作のレビューはこちら
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 セッション・メンバーにはジョアン・ケリー、セッション集団ランプルスティルトスキン、そしてピーター・グリーンが変名で参加しているとのこと。その他、デイヴ・ケリーのブルース仲間と、ジャズ系プレイヤーも参加しています。

 相変わらず当時24歳とは思えない、枯れたブルース・ギターと渋いヴォーカルが炸裂しています。今回のソロ作はバンド録音がされており、前作よりも聴きやすい印象。ロックがカラフルで多様化していた1971年という時代を反映して、ブルース・ロックのみならずフォーク・ロック、ファンクにも挑戦しており、バラエティー豊かな楽曲群となっています。色々と手を出しているとは言え、どれも後追いで聴いてみると伝統的なものばかり。セッション・プレイヤー達の時にシリアス、時に熱狂的な演奏もあり、ジョン・ダマー・ブルース・バンドから続けて聴いても違和感なく楽しめるアルバムだと思います。「朝日のあたる家」のようなハードボイルドなブルース「The Fields Of Night」ではピアノが幻想的に舞っており印象的。このような細やかなアレンジも聴きどころ。

Green Winter
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