南波志帆/ドラマチックe.p.

南波志帆/ドラマチックe.p.
2016年 日本
『フレネシ提供曲の異質さが光る』
南波志帆-

 ミニアルバムとは言え、1年で2枚目のリリースはありがたい。多数の作曲者を迎えた6曲入りの内容。さぞバラバラの個性が発揮されているのだろうと思いきや、爽やかなガールポップとして一本の芯が通っており、まとまっています。新鋭のミュージシャン達を起用したためか、彼らが南波志帆のイメージに寄せている為なのか、はたまたプロデュースによるものなのかは分かりません。その中で異色なのはフレネシ作曲、ショック太郎作詞の「華胥の夢」でしょう。あの声ありきのフレネシが楽曲提供するという概念が自分には無かったので新鮮でした。南波志帆の爽やかで甘い歌声を以てしても曲の毒々しさが隠しきれておらず、素晴らしい。

 ミニアルバムとして十分な出来。南波志帆のミニアルバムと言えば、初期三部作が思い浮かびます。それと比べてしまうと無難としか言えません。個性の強い作曲家群と若い南波志帆が組み合わさった、あの瑞々しさはきっともう再現できないでしょう。それならば、はみ出した方が面白そう。フレネシの提供曲を南波志帆の歌声で、もっと聴いてみたい。


月曜9時のおままごと
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ナツ・サマー/夏・NATSU・夏

ナツ・サマー/夏・NATSU・夏
2016年 日本
『俺が悪かった。』

 ナツ・サマーという名前なのに、12月に『トロピカル・ウィンター』という新作をリリースしました。そして僕は購入していたのに聴きそびれていた、このデビュー作の存在に気が付いたという・・・・・・音楽ファンとしてよろしくない日常です。
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 元CDショップ・バイヤーにしてシティ・ポップ系のプロデューサー、更に流線形のリーダーでもあるクニモンド瀧口が新しく手掛けるレゲエシンガー、とのことです。

 シティポップ・レゲエ、と標榜していてどういうことなのかなと思いましたが、涼しげで洗練されたレゲエです。チルアウトって感じのすーっと落ち着いたサウンドに、甘く軽やかなヴォーカルが映える。レゲエだけにビートが統一されているうえ、記名性が高いクニモンド瀧口サウンドが重なって少し曲が似通ってしまいそうなところを、ヴォーカルがはっきりくっきり表情を使い分けて歌の色を付けているのは素晴らしいと思いました。

 6曲の収録曲のうち、後半部分はDUBミックスとなっており、よりフワフワした夏に、のめり込めます。恵方巻を食べながら夏の幻を見れるかも。(節分に書く)

Natsu Summer/夏・NATSU・夏/Short Album Stream
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Orango/The Mules Of Nana

Orango/The Mules Of Nana
2017年 ノルウェー
『こんな北欧ロックンロールがあってもいい』

 一時期、隆盛を誇っていた(1990年代後半から2000年代前半まで)北欧ロックンロール系グループはルーツの一つにパンクがあり、疾走感のあるバンド・サウンドが特徴でした。そして2017年、再びロックンロール愛を叫ぶグループがノルウェーから登場。埃っぽくブルージー。レイドバックしていて土臭さ満点。ルーツはレイナード・スキナードとZZトップという新しい(?)北欧ロックンロール・バンドです。
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 ノルウェーのオスロを拠点に活動するオランゴ(オラウータンのこと)は2004年に結成されました。4人編成のグループです。学生時代より地元のフェスや学園祭などを精力的に回ることにより、知名度を獲得。ノルウェーで最もハイエナジーなロックンロールを演奏するバンドとして知られているとのこと。2010年にアルバム・デビューを果たしており、本作で6枚目となります。

 フェイスブックのリスペクト欄にはレイナード・スキナード、ZZトップのみならず、マウンテンやCSN&Y、ツェッペリン、フリートウッド・マック(ただしピーター・グリーン期)といった硬派なメンツが並んでいます。
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 実際、彼らの音楽はレイドバックなハード・ロック・サウンドが特徴。隙間を空けたゆったりとした空気感、ずっしりとしたヘヴィネスは本場ゆずり。しかもCSN&Y(ピリピリしている方のCSN)やマウンテン譲りと思われる叙情的なコーラス・パートもあり、アメリカのストーナー勢が陥りがちな一本調子な展開とは無縁。全編、飽きずに聴きとおせました。演奏もさすが6枚目のアルバムだけのことはあり、達者。本家アメリカン・ハードなみの迫力を味わえます。

Give Me A Hundred
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Michael Chapman/50

Michael Chapman/50
2017年 イギリス
『祝デビュー50年』

 ロイ・ハーパーやジョン・マーティンのアシスタントを経て1967年にデビュー。以来、サイケデリックなフォーク、フォーク・ロックを探究しているSSW、マイケル・チャップマン。

 自分は初期のハーヴェスト~中期のデッカといった70年代中期までの地味なSSW時代のアルバムを愛聴しております。サイケデリックな味つけがされていながらポップで聴きやすい。そして枯れた歌声が渋い魅力を放っています。
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 そんなマイケル・チャップマンが2017年にもアルバムを出していました。手元の資料で調べたところ、恐らく通算37枚目のアルバムだと思います。ただ自主製作盤やライブ盤も多いので、前後ということでご容赦ください。タイトルの50は、デビュー50年ということでしょう。
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このおじいちゃん、かっこいい!

全10曲。概ね5分台で曲がまとめられています。原点回帰ということなのでしょうか、ギター弾き語りによるシンプルなサイケデリック・フォークをやっています。歌声は元々枯れていたのであまり変わっていない印象ですが、晩年期のレナード・コーエンのような凄みがあり。また、サイケデリックなギターとキーボードの絡み合いはスペーシーでスケールが大きいのも特徴です。マイク・オールドフィールドやピンク・フロイドのような空間演出を感じることが出来ます。かっこいいアルバムです。
76歳となったマイケル・チャップマン。若い時代にアシッドな文化に心身どっぷり漬かっていたであろう彼ですが、長生きしてアルバムを出してくれると嬉しい。

That Time Of Night

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Billie Marten/Writing of Blues and Yellows

Billie Marten/Writing of Blues and Yellows
2016年 イギリス
『2016年度の注目新人フォーク歌手』

 可憐でセンチメンタル、それでいて落ち着いた歌唱と清々しいピアノが魅力的。ノースヨークシャー州リポン出身の女性シンガーソングライターによるデビュー作をご紹介。
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 デビュー前からサウス・バイ・サウス・ウエストでのパフォーマンスなどで人気を集め、2016年度の注目新人と期待されていた彼女。日本でも既に多くの音楽ファンが取り上げています。僕自身もアルバム発売を楽しみにしていました。
マッシヴ・アタックやポーティス・ヘッドを始めとするブリストル・サウンドを彷彿とさせる、耽美的なポスト・ロック・サウンドが特徴で、ドラマティックな音作りがされています。
 
 しかしベースにあるのは、ジョニ・ミッチェルの『BLUE』辺りの音楽性に感化された70年代英フォークでしょう。例えばシェラ・マクドナルドやジュリエット・ローソンのようなミュージシャンが近い気がします。ジャジーな要素を吸収した英フォークです。
デラックス・エディションにはデモ音源が収録されており、そちらではギター弾き語りによる素朴なパフォーマンスを聴くことが出来ます。その音源からも生粋の英フォークから影響を受けたことが伺えました。
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 エコー、ストリングスを中心とするサウンド・プロデュースは所々、ちょっと大げさに感じるところがあり。前述したデモ音源を聴いた後では尚更俗っぽく感じてしまいます。ただオーバー・プロデュース気味な部分を差し引いても、彼女自身の魅力は十分伝わります。マズ・オコナーと共に英フォークの女神として、シーンを引っ張っていってくれれば、と思います。

Billie Marten Lionhearted (Acoustic Video)
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Ultimate Painting/Dusk

Ultimate Painting/Dusk
2016年 イギリス
『どんより地味渋サイケが最高』

 UKインディ・ポップ・グループのサード・アルバム。私は2015年にリリースされたセカンドで彼らを知りました。(過去記事はこちら。)前作では英米折衷のサイケ・ポップをやっておりましたが、今回はどうでしょうか。ジャケが70年代の英SSW(キース・クリスマスのジュークボックスのやつに似ているかも)っぽくていいです。
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 虚ろな歌唱、ぐるぐると低音で侘しい旋律をリフレインするギターが主役。「ブライアン・ジョーンズに捧げる歌」が2曲目に登場することが象徴的なように、サイケデリックな浮遊感はそのまま。ただし、前作よりどんよりとした暗さが強調されており非常に英国的です。田園風景のようなほのぼのとした空気感は希薄。60年代後期に於ける英サイケの雰囲気をスマートに導入しているところが素晴らしい。
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 溌剌とした部分が影を潜めている分、地味ですが出来は間違いなく前作より上。英ロック好き、特に英サイケ・ポップ(ムーヴとかトゥモロウとか初期ファミリーとか)を好んで聴いている皆様にはぜひおすすめしたいアルバムです。

Monday Morning, Somewhere Central
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Lady Wray/Queen Alone

Lady Wray/Queen Alone
2016年 アメリカ
『ベテラン・ソウル・シンガーの再デビュー作』

 溌剌とした可愛い声から硬派なディープ・ボイスまで、堂々たる歌い振り。また素晴らしいソウル・シンガーを発見したか!?と思いきや、彼女は1998年からシンガーとして活動していたベテランでした。
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 1998年からニコール・レイとしてソウル歌手として活動していていたレディ・レイ。しかしながら、地道な活動の中で成功を掴むことはならず、近年はリリースから遠ざかっていたそうです。ヴィンテージ・ソウルが盛り上がる中、心機一転、改名をして再デビュー作となりました。


 70年代ソウルへのリスペクトが詰まった音楽性で、ヴィンテージ・ソウルを追いかけているファンにとっては馴染み深い内容となっています。プロデュースをしているレオン・ミッシェルズを始め、制作メンバーには、現在のソウル・シーンを盛り上げた切っ掛けとなったダップ・トーン・レーベル由来の人材が集合しているとのことで、納得の仕上がりです。ベテランとは思えない瑞々しいヴォーカルの素晴らしさと、それを支えるシンプルな楽曲と演奏ですんなり聴けてしまいます。ライブ感が伝わる録音の素晴らしさもポイント。

Do It Again
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Judas Jump/Scorch

Judas Jump/Scorch
1970年 イギリス
『絶妙にビートルズをかすっている』

 70年代にリリースされたブリティッシュ・ロックの作品もあらかたCD化が済んでしまった21世紀の今日この頃。もう重箱の隅をつつくようなマニアック作しか残されていない、という状況の中で、そういったタイトルばかり(いや、王道の名盤も混ざっていますが)を再発してくれるBIG PINK。このレーベルのおかげで、英国ロック・マニアの好奇心は満たされるのであります。

 今回取り上げるのはジューダス・ジャンプ。実は2015年に再発されていたものの(2009年にもブートっぽい再発盤あり)、B級感漂う、金粉まみれなジャケに臆してこれまで手が出ませんでした。
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 まずは小西勝氏の解説に目を通します。若き日のピーター・フランプトンが在籍していたことで知られるザ・ハードの残党メンバー達が組んだグループ、ということは知っていましたが、ここではその主要メンバーであるアンディ・ボウンを始めとする各メンバーの詳細な経歴が載っていました。オーディエンスにも繋がっていたグループだったようです。もちろん本作が唯一のアルバムです。尚、大手であるパーロフォンからリリースされてことで知られています。

 サイケ・ポップ通過後でプログレ勉強中、というサウンドで雑然としていてアンダーグラウンドな内容です。ブロッサム・トゥーズに通じるサイケデリック・ポップ。オルガン、フルート、ブラスを交えたハード・ロックなバンド・アンサンブルで、演奏は素晴らしい。この時期の英国ロックらしい捻くれた曲展開が楽しめます。B級と割り切れば結構イケます。

Rockin' Chair

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杉野清隆/メロウ

杉野清隆/メロウ
2008年 日本
『これがメロウか』

 メロウ、と言われると叙情や哀愁、穏やかな音楽を連想してしまうのですが、本来は豊潤な、甘美な、という意味の形容詞なのですね。先のイメージはメロウな夕焼けが似合う音楽、というところから連想されたものなのでしょう。とにかく分かりやすいタイトルです。
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 金沢を拠点に活動している杉野清隆によるセカンド・ミニ・アルバム。メロウというイメージそのままのメロディーは、ルーツにカントリーを持っているのが特徴。大サビのCメロまでドラマティックに盛り上げる凝った作曲が素晴らしい。そしてギターは、一音を伸ばして揺らす。更にダンディな歌声。たまに無償に聴きたくなるアルバムです。

馬/杉野清隆 in メロメロポッチ
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2016年度音楽作品総括 洋楽編

 本日は洋楽の2016年度まとめ記事です。
2016年は自分がブログを始めてから最も洋楽の新譜の質が充実していた年でした。
その為、10枚を選ぶのも特別に楽しみながら苦労しました。
 
 実は『LP/Lost on You』を10枚の中に選んでいたのですが、
ヨーロッパで2016年に発表されたものの日米などでは2017年のアルバムだったため、
彼女がアメリカ出身であることも考慮して2017年度の作品として扱うこととして除外しました。

 もし気に入ったものが見つかったら気軽にSpotifyなどで試してみてください。


タイトルからレビューへ飛びます。画像からはyoutubeへ飛びます。

☆ベスト10入りアルバム7枚(ABC順)




 

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