TUOMO/My Thing

TUOMO/My Thing
2007年 フィンランド
『北欧発ブルー・アイド・ソウル』

 英米の音楽文化を吸収し、自由に融合させるのに長けている北欧地域。
オルガンを用いたヴィンテージ・ハード・ロックや、
ヴィンテージ・ソウルなどの70年代懐古も盛んに行われています。
 
 TUOMOもそんなミュージシャンの一人。本作は、元々はジャズ・ピアニストであった彼が
本業を離れて趣味世界を楽しむためにリリースしたソロ第一作となります。

 スティーヴィー・ワンダーやモータウン諸作をルーツとした70年代ソウル・サウンドを
モダンなサウンドとアレンジで蘇らせている、というのが彼のアンデンティティ。
ソウルフルでありながら爽やかなヴォーカルは、押しが強くないです。
その分、バックの演奏、特にストリングスとの相性が良く心地よいグルーヴを生み出しています。

 モータウンらしいゴージャスな演奏を意識しつつも、
スピード感とコンパクトさは90年代以降のもの。
洗練されており、且つ北欧らしい涼しさ(ピアニストだけに、シンセの使い方が違う)
と開放感が感じられるのもポイント。
この辺りはブルーアイドソウルらしい魅力を醸し出すのに貢献しています。

 ディープな方向へと向かわずにキャッチーであることに拘った楽曲が揃っており、
作曲面でのサービス精神を伺わせます。
ソウル作でありながら、ポップスとして聴ける軽妙さがあるアルバム。

うーむ、
ハンモックが欲しくなるな! 

「Don't Take It Too Hard」

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Diana Ross/Surrender

Diana Ross/Surrender
1971年 アメリカ
『自作自演がもてはやされる時代の影で
ひっそりとリリースされた佳作』


 ダイアナ・ロスはシュープリームス時代ばかりを愛でてしまい(やっぱ若いしねー)
ソロ時代をおろそかにしていました。最近ポツポツと聴いております。
初期のダイアナ・ロスといえば、
ファースト収録の「Ain't No Moytain High Enough」でガツンと行った訳ですが、
本サードはその続編を意識して制作されています。
即ち要は、モータウンの看板ソングライター・チームである、
アッシュフォード&シンプソン夫妻による楽曲提供とプロデュース。
ストリングスが入ったドラマティックなバラードを軸に構成されたアルバムです。

 とは言え、ファーストとセカンドを前年に出したばかりでそのままサードという強行軍。
(この頃はまだ、カバー曲で埋めて旬なうちにアルバム量産、
なんて60年代のノリが残っていたようです。)
アッシュフォード&シンプソン夫妻も流石に弾(曲)を十分に用意できなかったのか、
他グループに提供した曲などで埋めつつ、何とかアルバムを完成させています。
楽曲面では新曲が少ない分、鮮度には欠けるもののロマンティックな曲が揃い、質は十分です。

 ダイアナ・ロスの歌声は相変わらずの力強さ。
女性ソウル・シンガーとオーセンティックな魅力は十分。
前述した通り、ロマンティックなミドル・ナンバーが揃っており、
大人の女性らしさが強調されています。
全編を通じて落ち着いた佇まいなのが、災いしたのか地味なアルバムになってしまいましたが、
これから聴くぶんには問題なく楽しめる佳作だと思います。

「Surrender」
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AZTEC TWO-STEP/Aztec Two-Step

AZTEC TWO-STEP/Aztec Two-Step
1972年 アメリカ
『トロトロに溶けてしまいそうな、
ほんのりサイケなフォーク・デュオ』


 今日も新名盤探検系からコツコツとご紹介。
アズテック・トゥー・ステップは、東海岸からLAに乗り込んできた
レックスとニールから成るフォーク・デュオ。
現在も活躍しているそうです。

 本作はラヴィン・スプーンフルのメンバーとして知られる
ジェリー・イエスターがプロデュースを担当したデビュー作。
その人脈で、ジョン・セバスチャンもハーモニカでゲスト参加しています。

 あまり力強さを感じさせない分、ナヨナヨとして繊細な魅力がある
歌声とコーラス・ハーモニー。
素朴で温かみのあるアコギ。
客演では、ジェリー・イエスターによる湿っぽいピアノがナイス。
少しサイケが入った柔和なフォーク・ナンバーが並んでおり、
ラヴィン・スプーンフルを地味にしたような作風が特徴です。(←これはどうなの?)
楽曲はハーモニーを重視。
これぞハイライトと呼べる山こそ無いものの、
カントリー、フォーク、爽やかポップとバラエティに富んだ佳曲が並んでいます。

 木漏れ日フォークというキーワードに弱い方なら間違いはないアルバムだと思います。
アメリカ(グループの方)が好きな人にも是非。

「Strangers」
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ペンギンの憂鬱/アンドレイ・クルコフ

ペンギンの憂鬱/アンドレイ・クルコフ
1996年ロシア 315p 沼野恭子訳
読書期間1日
『受身なペンギンを応援したい!』

 同時に借りた「未来のイヴ」が手強すぎて、返却日が明日に迫る中で読み始めた本作。
しかし、こちらは読みやすかったです。

 あらすじとしては、
1990年代、ソビエト崩壊直後のロシア。
ペンギンと暮らすヴィクトルは、ある日新聞の死亡記事を書く仕事に就く。
しかしそれを切っ掛けにキナ臭い状況に巻き込まれていき・・・・・・。
こんな感じの小説です。

 別荘の朝、爆音で目を覚ますと、泥棒が罠の地雷に引っかかって
爆裂死していた・・・なんて日常がロシアにはあったのですね。
なんてハードな世界。
 
 作者は児童書も書いているためか、とにかく文章が分かりやすい。
そして訳文も女性らしいやわらかさが出ており、ほんわかとした雰囲気が心地よいです。

 さて本書では主人公の生活の軸として、
ペンギン、マフィアの娘である女の子、ベビーシッターによる同居生活が描かれています。
仕事関係の上司や一人だけいる友人も含めてですが、
とにかくそれぞれの事情にはまったく触れずに
温く薄い人間関係で形成された世界が保たれており、
そこでどう振る舞うべきか、少し戸惑ったり、苛立ったりしながら
「しょせん俺は孤独な男なのだ」と殻に閉じこもったままの主人公はなかなかリアル。
好感が持てます。
ペンギンとの会話(腹話術)シーンはアツイ!

 そのペンギンなのですが、うつ病を患っているという設定で、
物悲しい佇まいが印象的。

 ストーリーを詳しく語ることはしませんが
展開も早い物語は、「そもそもペンギンて家でいきなり飼えるものなの?」という点から始まり、
強引なところが多々あり。
しかし意外なアイディアが満ちており一気に読めます。

 そしてどんでん返しのラストも素晴らしい。
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The Black and White Years/Strange Figurines

The Black and White Years/Strange Figurines
2014年3月 アメリカ
『甘く退廃的なメロディー。
ニューウェイヴの伝統を受け継いだ、エレクトロ・ポップ新作。』

 
日常を煌めかせるBGMとしてピッタリの音楽を見つけましたので、ご紹介。
これまで全くノーマークでしたが、
こんな魅力満載のポップ・グループが存在していたとはうれしい誤算。
black-white-years-strange-figurines.jpg


 本作は、ブラック・アンド・ホワイト・イヤーズの通算4枚目にあたるアルバムです。
テキサス州オースチン市出身。2007年のサウス・バイ・サウス・ウエスト(SxSW)において、
トーキング・ヘッズ
(ジョナサン・リッチマンのバックバンドとして知られる)モダン・ラバーズのキーボード奏者、
ジェリー・ハリスンに見出されてデビューしたグループ。

 80年代を彷彿とさせるディスコティックなダンス・ビートを軸とした、
ニューウェイヴ風エレクトロ・ポップをやっています。
大らかでスペーシーにうねるシンセサイザーとギター、ソリッドにビートを刻むリズム隊、
リリカルな音色を紛れ込ませているピアノとアコギ。
これらが重なるアンサンブルによって生まれる音楽は、
ポップながらも都会の夜をイメージさせるスタイリッシュなもの。
トーキング・ヘッズ等、ニューウェイヴ・シーンの音楽からの影響を感じさせます。
電子音と生演奏の融合が理想的に行われており、音に温かみと甘さを加えているのがポイント。
また、儚さをたたえる女性コーラスの貢献も大であり、ノスタルジックな雰囲気を演出しています。
クールな中にも妖艶さを見え隠れするヴォーカルも素晴らしい。

 個性としては伝統を踏襲したオーソドックスなもの。
しかし、楽曲は、練りに練った痕跡が伺える凝った曲展開が楽しめるものが揃っており、
隙のない構成。ニューウェイヴが持つデカダンス(退廃的)な雰囲気もしっかり継承しており、
その筋のファンなら間違いなく楽しめることでしょう。

「Strange Figurines」
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王舟/Wang

王舟/Wang
2014年7月 日本
『焦らしに焦らされたデビュー作』

 とんちレコードなど、現在の国内アコースティック音楽シーンで
数年前から名前だけは聞こえてきたミュージシャン、王舟。
そういえば、当ブログで紹介した伴瀬朝彦も王舟バンドのメンバーでした。
既に2枚の自主CDRもリリースしており、一部ファンから高い評価を獲得。
そんな名は聞こえども音楽は聴こえて来なかった王舟ですが、
この度、デビュー・アルバムをリリースされたということです。
めでたい。自分も早速購入してみました。

 王舟は上海に生まれ、現在は栃木で暮らしている中国人。
音楽的なルーツとしてはジャズやアフリカ、カリプソ音楽に対する造詣が深い一方で、
スピッツなどのJPOPを聴いて育ったという側面も持っています。
音楽活動を始めてからは、先述したようにとんちれこーどcerommmといった、
京都や東京で活動するアコースティック系ミュージシャンとの交流を盛んにしています。

 制作に3年を費やしたという本作では、これまでの音楽活動で培った人脈が活かされており、
岸田佳也(俺はこんなもんじゃない)、伴瀬朝彦(片想い、ホライズン山下宅配便)、
潮田雄一(QUATTRO)、池上加奈恵(はこモーフ、真黒毛ぼっくす)、mmm、
みんみん(カッパ大使館)、シャンソンシゲル(GELLERS)、フジワラサトシ、
柱谷、高橋三太、kyooo、澤口希(omu-tone)、oono yuuki、森ゆにが参加。
ミックスは岩谷啓士郎(トクマルシューゴのバンド・メンバーであり、
最近ではシャムキャッツの新作にてエンジニアを担当)、
マスタリングは木村健太郎(クラムボンや七尾旅人の作品を担当)が手がけています。
(ちなみにアドヴァイサーとしてトクマルシューゴもクレジットされています。)

 さてデビュー作ですが、ceroにも通じるふわふわしたアコースティック音楽をやっています。
ポイントとしてはまずヴォーカルが基本、英語詞であること。(一部、日本語詞の曲もあり)
ユルユルで鼻歌のような発声であり、ハミングに近いニュアンスで歌われているのが特徴です。
この辺りは好き嫌いが、はっきり分かれるところでしょう。
個人的には最高とは言い難いですが、ほんわかとした雰囲気にマッチしていると思います。
そしてもう一つのポイントは、カリプソ要素が音楽に色濃く反映されており、
パーカッシヴな音楽になっていること。
細野晴臣のソロ作や、カセット・コンロスのような、
のほほんとした旅情溢れる音楽はとても魅力的です。

 楽器編成は基本編成に加え、フルート、ピアノ、オルガン、バンジョー、トランペット、
パーカッション、グロッケンシュピール、マリンバなどが彩る賑やかなもの。
カリプソ音楽、ラテン、ジャズといったルーツを反映させた渋い楽曲が並んでいますが、
JPOPを聴いて育ってきただけに、仕上がりは至極まろやかで聴きやすいです。
噂の人物、遂にデビュー!というには、かなりまったりですが・・・・・・
ふわふわしていながら、芯となるルーツがしっかりしているので安心して聴けます。

「New Song」
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Ellie Holcomb/ As Sure As the Sun

Ellie Holcomb/ As Sure As the Sun
2014年2月 アメリカ
『懐かしさもあり。大陸を感じさせるCCMで涼を取ろう。』
 やっぱり暑いなぁ、夏。
ということで、本日は爽やかなピアノ弾き語りシンガーソングライター
(CCM系=コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)をご紹介。

 エリー・ホルコムはテネシー州、ナッシュビル出身82年生まれの31歳。
父親がブラウン・バニスター
(エイミー・グラントやデビー・ブーンの諸作品に携わるグラミー賞常連の敏腕プロデューサー)
だったこともあり、幼い頃から音楽に携わっていた彼女。
本格的に音楽活動を開始したのは2005年のこと。
キリスト教学校の仲間と組んだバンド、ドリュー・ホルコム&ネイバーズに参加。
リーダーである
ドリュー・ホルコム(この人もSSWとしてソロ作を発表しています。)との結婚の為,、
脱退する2012年までフロントマンを勤めていました。
並行して2011年からソロ活動も開始しており、これまで2枚のEPを発表。
本作は満を持してのデビュー・アルバムとなります。

HOLCOMB.jpg
ホルコム夫妻

 プロデューサーには、父ブラウン・バニスターと
新人SSWを多く手掛けている若手、ベン・シーヴの二人が名を連ねています。
自身のアコギ弾き語りに、ギター、ベース、ドラム、キーボードという編成で、
曲によってはマンドリン、バンジョー、ラップ・スティール・ギターなどが入る
カントリー色の強いアンサンブルです。
ちなみに夫、ドリュー・ホルコムもコーラスで1曲に参加。

 歌声は清々しく朗らか、少し掠れているのも味があっていいです。
そんな歌声そのままに、まっすぐで力強いポップスが並んでおり、
大らかさを感じさせるダイナミックなアレンジは正しくアメリカの王道そのもの。
その作風はHMV全盛期かと錯覚するほどで、
ブラウン・バニスターの存在の大きさをうかがい知ることが出来ます。
アルバムではCCMらしい清廉としたミドル・ナンバーと、溌剌としたアップテンポが混在。
アップ・テンポの曲ではシンディ・ローパーから、
おきゃん成分を引いたような堂々たるフェミニズムが発揮されており、とても眩しいです。
一方、ミドル・ナンバーではオルガンによる教会音楽のような風情もあり、グッと厳粛なムード。
ラップ・スティールの伸びやかな音色が涼しげに響くのもポイントです。
という訳で今回は涼を届けるミドル・テンポの曲からどうぞ。

「Songs of Deliverance」
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Radio Moscow/ Magical Dirt

Radio Moscow/ Magical Dirt
2014年6月
『マホガニーラッシュもびっくり、
ジミ偏愛てんこ盛りの新世代ロック・トリオ』


 「正しく汚い」ダミ声ヴォーカル、
クドい、と思っても止まらないディストーションを効かせた伝統的ギター・リフの嵐。
21世紀になっても続々登場しているジミヘン・フォロワーの中でも、
とびきり活きのいいグループが、彼らレディオ・モスクワなのです。

 レディオ・モスクワは2003年結成。
アイオワ州ストーリー郡を拠点に活動しており、
デビューに際して、ブラックキーズのメンバーが推薦したという経緯があるようです。
これまでEP1枚とアルバム3枚、そしてデモ音源集を1枚発表しています。
デモ音源を発表出来るくらいの人気はあるということでしょう。
そして本作は4枚目のアルバムとなります。
radio-moscow.jpg

 トリオ編成というエクスペリエンスと同じフォーマットながら、
よりフリー・フォームなブルース・ハード・ロックをやっており、
例えるならマウンテンがクリーム寄りになったような音楽です。
ずばりマウンテンの如き、暑苦しくクドイヴォーカルと、
クリームのようにやりたい放題に叩きまくり、
弾きまくるソロ・パート(ジャズの素養は無いのであそこまでのインスピレーションは
望めませんが前のめりなパワーはあり)が同居しており、その圧力で聴き手のハートを鷲掴み!

 ブルース・ベースの楽曲群は、
悪くないけれどもオーソドックスなもので特段の工夫も感じられません。
マウンテンと書きましたが、彼らにあった箸休め的バラード・ナンバーは
レディオ・モスクワにはありません。
ブルース・ギターとうねるグルーヴの応酬、そして喚くヴォーカル。
ただひたすら、血管を浮き上がらせ汗ほとばしるパフォーマンスによってのみ、
音楽ファンをひきつけようという潔さは素晴らしい。
終始ハイテンションながら10曲で40分余りという、
ちょうどいい分量で気持ちよく聴くことが出来ました。

「Death Of A Queen」
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The Proper Ornaments/Wooden Head

The Proper Ornaments/Wooden Head
2014年7月
『陽炎の如き、ぼやぼやサイケ』

 サイケデリック・ポップ・デュオ、プロパー・オーナメンツのデビュー作『Wooden Head』。
 
 プロパー・オーナメンツはアルゼンチンのシンガーソングライター、マックス・クラップ、
UKインディー・ポップの雄、ヴェロニカ・フォールズのメンバー、ジェイムズ・ホーア
の二人によって2010年、ロンドンにて結成されました。
ちなみにバンド名はフリー・デザインの曲(1967年)よりインスパイアされたとのことです。

the-proper-ornaments.jpg
なかなかの影使い!

 音楽性は気怠いコーラス・ハーモニーと幻想的でポップなメロディーが
印象的なサイケデリック・ロック。
サウンド面ではシューゲイザー要素満点の轟音ギター、
そしてざらついたビートが主役となっています。

 彼らの音楽には
1)米サイケポップ愛がもたらす、とろけるようなアンニュイ・ウェーヴ、
2)南米サイケ由来の素朴でルーズなビートルズ信仰、
3)イギリスのグループらしいスタイリッシュな曲進行、
という3つの要素があります。

1)米サイケポップ愛がもたらす、とろけるようなアンニュイ・ウェーヴ
 フリー・デザインの曲からバンド名を決めたことからも米サイケポップへの愛情は深く、
幻想的なメロディーのそこかしこから、その影響を感じ取ることが出来ます。
そのメロディーからもたらされる、けだるい幸福感は、まさしく60年代由来。

2)南米サイケ由来の素朴でルーズなビートルズ信仰
 ペルーのビートルズ、ウィー・オール・トゥゲザーに代表されるように、
南米にもビートルズの影響は届いていました。
彼の地では、よりパーカッシヴ、ルーズな音楽として伝播していたようです。
プロパー・オーナメンツの音楽もルーズなグルーヴを特徴としており、
これはアルゼンチン出身のマックス・クラップによるインプットなのかもしれません。

3)イギリスのグループらしいスタイリッシュな曲進行
 古き良きブリティッシュ・ビートやロンドン・パンクの流れを汲む、
シンプルなギターリフが土台を支えています。
概ね2分台というコンパクトな構成も好印象です。

 前述した通り、これら3要素で構成されつつも、アレンジは現代的なロック・サウンド。
若いロック・ファンにも大いに刺激を与える音楽だと思います。

「Summer's Gone」
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宮里ひろし/長い旅がいやになる

宮里ひろし/長い旅がいやになる
1975年 日本
『URCらしい関西フォークの快作』

 月一で登場、「URC最後の蔵出し」シリーズ。今回は宮里ひろしのファースト・アルバム。
私はまったく聴いたことが無かったのですが、
今回の再発シリーズでは人気があるタイトルのようなので楽しみです。

 なぎらけんいちの73年作『葛飾にバッタを見た』にて、
宮里ひろしの「負け犬」が取り上げられたことを切っ掛けに、知名度を獲得。
以後、関西フォーク・シーンで活動。ちいちゃいおっちゃん、と呼ばれ親しまれていたそうです。
(確かに歌詞カードにあるポートレートでも小柄さが良く分かります。)
春一番への参加を経て、75年に本作を発表、という流れのようです。
後期URCを代表するフォーク・シンガーの一人とのこと。現在も自身でバーを経営しつつ、
音楽活動を地道に続けているようです。

 さて、本作についてクレジットから触れていきます。
アレンジは武蔵野タンポポ団の村瀬雅美が担当。
録音にはアーリー・タイム・ストリングス・バンドのメンバー、
今井忍やミディからCD再発された75年の自主盤で知られる林ヒロシを始め、
大阪のミュージシャンを中心に多数のゲストが参加しています。
とは言うものの、勉強不足につき先に挙げた二人以外はまったく知らない方々ばかり。
申し訳ありません。

 音楽性はアメリカン・フォークを基盤にした曲に、
詞をつけるというURC伝統のスタイルを踏襲したもの。
大らかな雰囲気はなぎらけんいちや高田渡の諸作に通じる魅力があります。
演奏面ではフィドル、ピアノが効果的に使われており、
ルーズでアメリカンな雰囲気が再現されているのが特徴。
朗らかなバラッドから、酒場でくだを巻いているかのような、やさぐれたブルースまで、
表情豊かなユーモア溢れる歌い口で楽しませてくれます。
URCフォークが好きなら、聴いて損のない快作でした。

「へろへろ」
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