Tony Allen/The Source

Tony Allen/The Source
2017年 アメリカ(ナイジェリア出身)
『レゲエのリズムとロックの熱狂、テクノの没入感。全部入ってジャズ』

 ナイジェリア出身。アフロ・ビート・ドラマーの巨匠、トニー・アレンのブルーノート・デビュー・アルバム。(←宣伝文そのまま)色合い、レタリング共にブルーノートらしいジャケだったので、ついつい聴いてみました。
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 トニー・アレンは元々、ナイジェリアのラジオ局で働いていたそうです。そうした中でアート・ブレイキーの音楽に感銘を受けて、ドラムの演奏を始めることに。60年代にはフェラ・クティのメンバー・オーディションを受け、彼のバックでドラム、パーカッションを担当。アフロビートの感覚を身に付けました。その傍らで、自身のソロ作も多く発表しており、本作はフル・アルバムとして20枚目にあたります。

参加メンバーは以下。
Mathias Allamane(b) Jean Philippe Dary(p) Indy Dibongue(g) Yann Jankielewicz(ss) Nicolas Giraud(tp) Nicolas Giraud(flgh) Jean-Jacques Elangue(ts) Rémi Sciuto(bs) Rémi Sciuto(as, fl) Daniel Zimmerman(tb,tuba) Vincent Taurelle(clavinet) Tony Allen(ds)

テナー・サックスとしてクレジットされているヤン・ジョンキエレヴィックスは、共同プロデューサー的な立場でアルバムの方向性を決めた人物とのこと。また上には記載されていませんが、ゲストとしてブラーのデーモン・アルバーンがキーボードとして参加しています。トニー・アレンはセッション・ドラマーとしても活躍しており、デーモン・アルバーンとも共演しているのでその縁でしょう。その他、多彩な楽器が揃ったビッグバンド編成でのセッションとなっています。

 2017年の初めにはアート・ブレイキーのトリビュート盤も発表しており、且つビッグ・バンドでの演奏ということで、モダン・ジャズ以降の伝統を受け継いだ、アフロ・ビート・ジャズをやっています。ゆったりとしたグルーヴを作り出すトニー・アレンのパーカッションとスペーシーなピアノが鮮烈。ふくよかなサックス群のうねりと合わさって、とても神秘的に響いています。てっきりケニー・ドーハムのようなアフロ・キューバンだろうと思っていたのですが、レゲエのリズムとロックの熱狂、テクノの没入感が加わったジャズとして想像を上回るインパクトがありました。

Tony Allen - Ewajo (Album The Source, 2017)
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Siv Jakobsen/The Nordic Mellow

Siv Jakobsen/The Nordic Mellow
2017年 ノルウェー
『姿勢を正してしまうような、たおやかさが素敵』

 ここで言及するのは何度目かわかりませんが、ケイト・ブッシュやジョニ・ミッチェルを彷彿とさせる弾き語りの女性SSWに目がありません。そこで最近見つけてきたのがシフ・ヤコブセン。ネット検索をしてみたところ、曰く「新世代ヴァシュティ・バニヤン」「サンディ・デニーの再来」と絶賛の嵐でありました。相変わらず、メディアの皆さんはヴァシュティ・バニヤンやサンディ・デニーの名前を易々と使う悪癖が治癒していないようで残念。まー、僕も使う形容詞がワンパターンだから全然だめだけれども。

 ノルウェーの都市、オスロを拠点に活動するシンガーソングライター。ローラ・マニングを手掛けているプロデューサー、マット・イングラムのバックアップを経て制作されたのが、このデビュー・アルバムとなります。
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 歌声は美しい。こちらが姿勢を正してしまうような、たおやかさがあります。キリッとした芯の強さを感じさせる。メロディーは甘くなり過ぎず、言葉が詠唱の様に流れる滑らかさを優先させています。ジョニ・ミッチェルからの影響は大でしょう。敢えて英国の女性SSWからイメージとして挙げるとすれば、ブリジット・セント・ジョンが近い印象です。

 マット・イングラムによるヴァイオリンを中心としたストリングス・アレンジは、彼女の歌とギターを神秘的に演出。パーカッションの入れ方も仰々しく、雰囲気作りはバッチリです。一部過剰かな、と感じるところもありますが、概ねシフ・ヤコブセンの個性を大切にした出過ぎない演出が素晴らしい。
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 霧のかかった森の中にいるような寒々とした雰囲気は北欧フォークらしく、突出した名曲こそないものの、大いに楽しめました。

Shallow Digger
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Geyster/With All Due Respect

Geyster/With All Due Respect
2017年 フランス
『今度のガイスターはディスコ趣味全開』

 フランスのガエル・ベンヤミンによるプロジェクト、ガイスターの最新アルバム。通算8枚目です。前作は3枚組の大作だったのですが、まさかもう新作が届くとは創作意欲の旺盛さに驚きます。

 自分がガイスターを知ったのは6thアルバムである2013年「Down On Broadway」でした。ブリティッシュ・ロック要素の強い作風が気に入っていたのですが、彼の本道はAORやエレクトロ・ポップのフィールドにあるようです。またガエル・ベンヤミンはプロデューサーとしても活動しているマルチ・ミュージシャン(宅録職人)なので、作品ごとに性格付け(コンセプト)がはっきり成されているのも特徴。

さて今回のアルバムですがビートが強調されており、エレクトロ・ポップ、ディスコの要素が強い音楽性となっています。
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同郷のダフトパンクにも通じるソウル、ファンク要素を加味した洗練されたエレクトロ・ポップが楽しめます。きめ細かい裏音の配置、余裕を感じさせるヴォーカル、キラキラのキーボード・サウンド、ジャズを彷彿とさせる奔放なソロパートと従来のガイスターが好きなAORファンにも楽しめる内容だと思います。ただ「Down On Broadway」が好きだった自分としてはちょっと寂しくもあり。プリファブ・スプラウトのカバーはうれしかったけれDも。

Geyster (feat. Ethel Lindsey) - Easy (Music Video)
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The Preatures/ Girlhood

The Preatures/ Girlhood
2017年 オーストラリア
『初期ブロンディみたいなカッコよさ』

 オーストラリア、シドニーを拠点に活動するロック・バンドのセカンド・アルバム。女性ヴォーカルをフロントに、4人の野郎ロッカーがバックを固める布陣はまるでブロンディ。だったのですが、どうやら2017年に入ってメンバーが一人脱退してしまった模様。つまり現在はショッキング・ブルー的な4人編成です。サウンドはパンキッシュなロックンロールをやっており、やはりブロンディを彷彿とさせてくれるのがうれしいです。
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 タイトルとなっているガールフッドは少女時代という意味。前述した通り、パンキッシュなロックンロールがベースですが、女性ヴォーカルに少しエコーが掛かっており、少しノスタルジーな雰囲気を生み出しているのが特徴。結構なおじさんである自分が聴くと「80年代だな」という感想をついつい抱いてしまうアレンジです。緩急の付け方がうまい楽曲群、少し巻き舌の姉御ヴォーカル、タイトなバンド・サウンドが素晴らしい。英米と同じロックンロールながら素朴さを感じさせるのは、イージービーツやAC/DC、ビージーズ等を生んだオーストラリアならではの人懐っこさが出ていて素敵です。

難を言えば、2~3分台のビシッと締まったロック・ナンバーが魅力的な一方で、2曲目3曲目で5分台を続けてしまった構成は(コンセプトの趣旨は分かりやすいのですが)ちょっと失敗だったかもしれません。

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かっこいいな。

The Preatures – Girlhood
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Spencer the Rover/The Late Album

Spencer the Rover/The Late Album
2017年 ベルギー
『英国のポップ職人へのリスペクトが詰まったアルバム』

 大学が密集しているというベルギーの都市、ルーベンを拠点に活動しているポップ・グループ、スペンサー・ザ・ローバー。2001年にデビューしており、本作は3枚目のアルバムとなります。
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 影響を受けたミュージシャンではRon Sexsmith, Wilco, Rufus Wainwright, Joni Mitchell, Steely Dan, Paul McCartney, Neil Young, XTC, Beach Boys, Richard Thompson, Bob Dylan, Hayden、という具合に英米、カナダのメロディー・メイカーが並んでいます。

 編成は基本的な4人組でキーボードやシンセサイザー、フルートなどを各メンバーで分け合っているとのこと。ヴァイオリンなどの
ストリングスはセッション・プレイヤーが参加しているようです。音楽性はフェアポート・コンヴェンションや中期ビートルズからの影響を感じさせる、ほのぼのとした優雅なポップス。所々で荘厳且つスペーシーなアレンジが挿入されておりクリムゾンやピンク・フロイドの影響も垣間見えるのが印象的です。

 英国ポップスをよく研究されたのであろう、と推察されるほどに耳馴染みが良く落ち着いて聴ける良曲が揃っています。加えて細かいところにヴァイオリンや笛の音を入れているなど、凝ったアレンジも聴きどころ。再生する度に新しい音に気付かされる楽しさがあります。

 英国らしい仕掛け時計を題材にしたジャケからも分かる通り、英国のポップ職人へのリスペクトが詰まったアルバムでした。
Spencer the Rover/Late March
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