Billie Marten/Writing of Blues and Yellows

Billie Marten/Writing of Blues and Yellows
2016年 イギリス
『2016年度の注目新人フォーク歌手』

 可憐でセンチメンタル、それでいて落ち着いた歌唱と清々しいピアノが魅力的。ノースヨークシャー州リポン出身の女性シンガーソングライターによるデビュー作をご紹介。
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 デビュー前からサウス・バイ・サウス・ウエストでのパフォーマンスなどで人気を集め、2016年度の注目新人と期待されていた彼女。日本でも既に多くの音楽ファンが取り上げています。僕自身もアルバム発売を楽しみにしていました。
マッシヴ・アタックやポーティス・ヘッドを始めとするブリストル・サウンドを彷彿とさせる、耽美的なポスト・ロック・サウンドが特徴で、ドラマティックな音作りがされています。
 
 しかしベースにあるのは、ジョニ・ミッチェルの『BLUE』辺りの音楽性に感化された70年代英フォークでしょう。例えばシェラ・マクドナルドやジュリエット・ローソンのようなミュージシャンが近い気がします。ジャジーな要素を吸収した英フォークです。
デラックス・エディションにはデモ音源が収録されており、そちらではギター弾き語りによる素朴なパフォーマンスを聴くことが出来ます。その音源からも生粋の英フォークから影響を受けたことが伺えました。
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 エコー、ストリングスを中心とするサウンド・プロデュースは所々、ちょっと大げさに感じるところがあり。前述したデモ音源を聴いた後では尚更俗っぽく感じてしまいます。ただオーバー・プロデュース気味な部分を差し引いても、彼女自身の魅力は十分伝わります。マズ・オコナーと共に英フォークの女神として、シーンを引っ張っていってくれれば、と思います。

Billie Marten Lionhearted (Acoustic Video)
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Ultimate Painting/Dusk

Ultimate Painting/Dusk
2016年 イギリス
『どんより地味渋サイケが最高』

 UKインディ・ポップ・グループのサード・アルバム。私は2015年にリリースされたセカンドで彼らを知りました。(過去記事はこちら。)前作では英米折衷のサイケ・ポップをやっておりましたが、今回はどうでしょうか。ジャケが70年代の英SSW(キース・クリスマスのジュークボックスのやつに似ているかも)っぽくていいです。
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 虚ろな歌唱、ぐるぐると低音で侘しい旋律をリフレインするギターが主役。「ブライアン・ジョーンズに捧げる歌」が2曲目に登場することが象徴的なように、サイケデリックな浮遊感はそのまま。ただし、前作よりどんよりとした暗さが強調されており非常に英国的です。田園風景のようなほのぼのとした空気感は希薄。60年代後期に於ける英サイケの雰囲気をスマートに導入しているところが素晴らしい。
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 溌剌とした部分が影を潜めている分、地味ですが出来は間違いなく前作より上。英ロック好き、特に英サイケ・ポップ(ムーヴとかトゥモロウとか初期ファミリーとか)を好んで聴いている皆様にはぜひおすすめしたいアルバムです。

Monday Morning, Somewhere Central
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Lady Wray/Queen Alone

Lady Wray/Queen Alone
2016年 アメリカ
『ベテラン・ソウル・シンガーの再デビュー作』

 溌剌とした可愛い声から硬派なディープ・ボイスまで、堂々たる歌い振り。また素晴らしいソウル・シンガーを発見したか!?と思いきや、彼女は1998年からシンガーとして活動していたベテランでした。
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 1998年からニコール・レイとしてソウル歌手として活動していていたレディ・レイ。しかしながら、地道な活動の中で成功を掴むことはならず、近年はリリースから遠ざかっていたそうです。ヴィンテージ・ソウルが盛り上がる中、心機一転、改名をして再デビュー作となりました。


 70年代ソウルへのリスペクトが詰まった音楽性で、ヴィンテージ・ソウルを追いかけているファンにとっては馴染み深い内容となっています。プロデュースをしているレオン・ミッシェルズを始め、制作メンバーには、現在のソウル・シーンを盛り上げた切っ掛けとなったダップ・トーン・レーベル由来の人材が集合しているとのことで、納得の仕上がりです。ベテランとは思えない瑞々しいヴォーカルの素晴らしさと、それを支えるシンプルな楽曲と演奏ですんなり聴けてしまいます。ライブ感が伝わる録音の素晴らしさもポイント。

Do It Again
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かえる目/切符

かえる目/切符
2016年 日本
『GSもブラコンも音頭もある』

 かえる目の4作目が遂にリリース。自分は前作から彼らを知ったのですが、随分待っていた気がします。5年半振りでしたか、どおりで長かった訳であります。
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 リーダーの細馬宏通が大学教授をしている方なので、多忙なのかもしれません。前作のレビューの文章を張り付けてしまいますが、歌&ギター、鍵盤、弦楽器、パーカッションという編成によるアコースティック・ミュージックをやっているグループです。リーダーの他には宇波拓、木下和重、中尾勘二という、個性的なプレイヤーが名を連ねています。

 鼻歌気分の緩い雰囲気は相変わらずですが、前作のほのぼのとしたノスタルジー一色という感じとは違っていて、電化楽器を多用することでガチャガチャと賑々しいアルバムとなっています。ブレイクビーツを導入するなど4枚目ならではの冒険がたっぷり。

 歌詞も振り切っていて、前作以上に「何を言っているのか分からないけれども、いい歌だ。」という感情を抱きがちでした。ここで「こういう話だ。」と書いてしまうとつまらないので、タイトルだけ書くと「ラーメン日和」「ドローン音頭」「よしおくん」など、独創的なテーマが取り扱われています。中でも「あんたがたどこさ」を標準語でリアレンジした「手毬歌」は不気味さと楽しさが同居していてインパクトがありました。またどんどんリピートしてしまいそうです。

※動画はありません。
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友部正人/ブルックリンからの帰り道

友部正人/ブルックリンからの帰り道
2016年 日本
『友部正人の3年振りの新作』

 相変わらず歌詞が面白い。ニューヨーク、日本、それぞれの生活の歌が収録されています。平易なメッセージの並べ方が素晴らしく、すぐに歌われる情景が広がり世界観に没頭できます。

 本作はフォーク・シンガー、友部正人の3年振りの新作。今回は制作パートナーとして、録音・ミックスに永見仁、マスタリングに中村宗一郎(働き者ですね)、山川のりを、新井田耕造、吉森信、川口義之、水谷紹によるバック・バンドを起用して制作しています。山川のりをは5曲のプロデュースの他、ホーンアレンジを担当。水谷紹はコーラスアレンジを担当しています。
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 全体的に一音一音を大きく隙間を取ったダイナミックなアレンジがされており、これは山川のりをが大きく関わったことが作用しているのでしょう。友部正人の力強く字余りがちな歌唱との相性はバッチリです。

 1曲だけ抜粋して感想を書きます。童謡「虫の声」からイメージを膨らませて野球部員達の掛け声を非難する「隣の学校の野球部」は、僕の中の「若者を見守るおじいちゃん像」をぶち壊してくれた人間臭い作品。甲子園を目指して頑張っているのだからそれくらい大目に見ましょうよ、と反論されるのが目に見えているのに、うるさいと歌う。これが素直ということか。ピックアップしておいて何ですがこの歌はこのままそっとしておこう。

動画がありませんでした。
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