detune./オワルゼンド

detune./オワルゼンド
2011年 日本
『かわいい入口、中身はディープ』

 アクの強いアンダーグラウンドなミュージシャンが多く所属する
WEATHER/HEADZレーベルからデビューしたエレクトロ・ポップ・デュオ、detune.。
DVD『Peeping Life』への提供曲「さとりのしょ」で一部の音楽ファンにアピールしました。
そんな彼らの三枚目。
今の所、これが最新作となっており、
最近ではグレンスミスへの参加もしており、すっかり本体での活動もご無沙汰気味です。

 彼らの音楽では
まず、郷拓郎による、女性かと錯覚するほど、か細くナイーヴな声質のヴォーカルが鮮烈。
牧歌的な世界観を生み出しているメロディーはとても親しみやすくフォーキーで、
ヴォーカルとの相性も抜群。

 そんなメイン・メロディーはギター、ストリングス、エレピ、ドラムなどの演奏が担っており、
そこにシンセを始めとした電子音の洪水を被せています。
結果、detune.ならではのほんわかとした幻想的なポップスが出来上がり。
WEATHER/HEADZ所属だけに、
チップチューン、テクノ要素も強くアヴァンギャルドな曲もあります。

 第一印象はとっつきやすい彼等ですがアクはやはり強いです。
まずこの声(究極の軟弱ボイス)を受け入れられるかどうか、
更にキレたノイズの洪水に耐えられるかどうか、
と関門は二つ。
ですが気に入ればズブズブとハマれそうな濃密な音楽だと思います。

 ファーストから比べてメロディーの質が上がっており、どんどんアルバムのクオリティーは上昇中。
成長期と感じるだけに
そろそろ次のアルバムが待ち遠しいです。

detune. featuring ユク - ユクのうた
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ 日本ポップス

穂高亜希子/ひかるゆめ

穂高亜希子/ひかるゆめ
2011年 日本
『背筋が伸びてしまう「きちんとした感じ」』

 自分が注目していたSSW、穂高亜希子の新作が9月にリリースされました。
これを書いているのが8月の終わりであり、まだ聴けてはいないのですが非常に楽しみ。
そちらのレビューは追って掲載するとして、
本日はデビュー作を改めて聴いてみようと思います。

 元々、マヘル・シャラル・ハシュ・バズという実験音楽グループに
ベーシストとして在籍していた彼女がソロとして独立。
その後に、アルバムが発表されました。
この時点で。JOJO広重、山本精一、大友良英等が絶賛した、
という宣伝文のあおりがついていました。
ラインナップからいかにもアンダーグラウンドなイメージを抱きますが、
実際アンダーグラウンドな音楽だと思います。

 ピアノ、もしくはギターの弾き語りで歌われる歌は聖歌や童謡などのルーツを感じさせる
素朴で穏やかなメロディーを特徴としています。
一言一言きちんと発声した、高音がきれいな歌声で、聴いていると背筋が伸びてしまう
「きちんとした感じ」があり。

 アルバムには普段のライヴでもサポートしている、
吉田悠樹(二胡、マンドリン、リコーダー)、服部将典(コントラバス、リコーダー)
という二人のミュージシャンが参加しています。

 彼女のギターとピアノの音数は絞られており、歌がよく通っています。
ポロンポロンと幻想的な音色が新鮮なマンドリン、どっしりと落ち着いたコントラバス、
哀愁のメロディーを柔らかく奏でる二胡。
サポートの二人がシンプルな楽曲を彩っており、
暗闇に浮かぶカラフルな道筋が描かれたアルバム・ジャケット通りのサウンドが楽しめます。

 緩急を付けたアルバム構成などもなく、
ただ溜まっていた曲を並べただけという印象の地味なアルバムなのですが、
不思議とすんなり聴けてしまいます。
それはやはりシンプルな中でアレンジ(曲によって弾き語りまたはデュオになります)
を工夫しているからでしょう。

「城」
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ 日本SSWフォーク

くすぐる/くすぐるのアルバム

くすぐる/くすぐるのアルバム
2011年 日本
『素直さが沁みる』

 宣材資料で「笑顔が愛らしい」などとアイドルみたいなアピールがされてしまう、
慎ましやかな女性シンガー・ソングライター、安藤明子。(from京都)
そんな彼女が2011年にユニットを組んで発表したのが本作。

 組んでいるミュージシャンはvirgin fishの井尻あきらという方。
virgin fishとは京都を拠点とするエレクトロ・ポップ・ユニットです。
動画も探してみたのですが見つからなかったので唯一ネット上で試聴が出来る
JETSETのページからどうぞ。(気に入ったら注文してあげてください)
アコギ弾き語りも合いそうな、牧歌的なメロディーを軸に、
シャカシャカプクプクとした電子音がカエルや虫の鳴き声みたいに心地よく響きます。
今回、レビューを書くに当たり、調べてみた次第ですがこれはこれでいい音楽ですね。
素朴なヴォーカルも味があります。

 ユニット名義の本作ですが楽曲は3曲を除いてイジリアキラ名義。
元々vergin fishでも得意としていた歌謡曲由来のフォーキーなスタイルが
より強調されているのがポイント。
先述したように、慎ましやかながら、
愛嬌と柔らかさが特徴である安藤明子の歌声は相変わらず魅力的で、
安藤明子名義、イジリアキラ名義、共に違和感なくフィットしています。
シャカシャカプクプクとした電子音も健在。
穏やかでフォーキーな楽曲にファンタジックな非日常のエッセンスを加えています。
雨の日にのんびりする時には、うってつけの音楽でしょう。

「石ころ」


続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ 日本SSWフォーク安藤明子

かえる目/拝借

かえる目/拝借
2011年 日本
『初期衝動よりも年輪かも』

 滋賀県彦根に居を構える大学教授、
細馬宏通(かえるさん)率いる4人組グループ、かえる目。
現時点での最新作(三枚目)が「拝借」です。

 歌&ギター、鍵盤、弦楽器、パーカッションという編成による
アコースティック・ミュージック。
宇波拓木下和重中尾勘二という、個性的なメンツが揃っています。

〈おっさんの体にユーミンが宿る〉というキャッチコピーでデビューした彼ら。
その言葉通り、シティ・ポップのルーツを持っていますが
それを室内楽、ボサノヴァなどで咀嚼。
とっても、ゆる〜いノスタルジックな音楽へと変貌させています。

 関西アンダーグラウンド・シーンを中心に活躍している面々が揃っており、
アヴァンギャルドな面も覗かせていますが全員の演奏が揃うと
耳馴染みはとても良い。

 リーダーである、かえるさんによる歌声は頼りなく声量が足りていない箇所もあり。
しかし、温かみのある歌声は魅力的です。
童謡を彷彿とさせる歌詞の力と合わさって、郷愁を誘います。

 アコースティック音楽を指向するミュージシャンは数多く存在していますが、
かえる目はその中でも独自性を持った音楽を生み出しているグループの一つ。

『街の名は渋谷』
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ 日本フォーク

John Martyn/Heaven and Earth

John Martyn/Heaven and Earth
2011年 イギリス
『最後の一瞬まで絞り出す歌』

 2ヶ月に一度のジョン・マーティン作品レビュー。
今作は2011年に発表されたもので、
純然たるオリジナル作とは言えないもの。
『Pearl』や『Made In Heaven』に近い性質があり、
トリビュート・アルバムとも呼べるものです。
ジョン・マーティンが2009年に死去する間際まで
制作していた楽曲を残った関係者の手により完成に導いたアルバム。
遺作『On the Cobbles』も担当している
プロデューサー、ゲイリーポリットが中心として制作されています。

 ヴォーカル・テイク以外は未完成の部分も多く、
これまでの作品で縁のあったミュージシャンがセッションに参加しています。
その為、派手なゲストはフィル・コリンズが1曲提供し、
シンセとコーラスで参加しているくらいです。

 前作『On the Cobbles』でも衰えを隠しきれなかった
彼のヴォーカルですが、ここでは更に弱々しさが際立っています。
しわがれた声しか出なくなってしまっているのは、悲しい。
歌うことを楽しんでいる様子が伝わってくることだけが救いです。

 サウンドはジャジーなブルース・ナンバーが大半を締めています。
コーラス隊、シンセ、ブラスも加えた、分厚いアレンジながら、
本人不在で仕上げられたため、やや個性に欠ける印象。

最高のパフォーマンスで無くても、歌うことを辞めない。
ジョン・マーティンは最後まで音楽を楽しみ、
仕事仲間は供養として残されたものを仕上げた。
その事実こそが、本作の存在意義でしょう。

「Can't Turn Back The Years」
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ イギリスSSW