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DON SHIRLEY/THE MUSIC OF DON SHIRLEY

DON SHIRLEY/THE MUSIC OF DON SHIRLEY
1950年代録音/2006年発表 アメリカ
『ショパンは入っていないが』

 映画『グリーンブック』で主役として描かれたジャズ・ピアニスト、ドン・シャーリーのベスト・アルバム。
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 ボヘミアン・ラプソディーを抑えてアカデミー賞作品賞を取った音楽映画、ということで自分も観に行きました。割と空いていましたが、いい映画でした。また機会があったら映画の感想は書きます。さて映画ではドン・シャーリー(役の人による)の演奏シーンが当然ながらフューチャーされているのですが、クラシックからの影響が大きいジャズ・ピアニストという個性が十分に伝わっては来なかった印象でした。サントラ、あるいはイメージ・アルバム的なものもリリースされているグリーン・ブックですが、ここはドン・シャーリーの音楽をたっぷり聴くべくCDでリリースされているアルバムを探します。ところが多くの作品が入手困難であり、且つプレミアが付いている状態。映画の影響でしょう。そんな中、ベスト盤である本作(タイトルはGOLDEN CLASSICSというもので登録されています)だけは安価で入手可能となっていました。ちなみにAMAZONで現在、1569円、1~2カ月で入荷となっており、自分も注文から1カ月程度して届きました。

 アメリカの再発レーベルとして有名なコレクタブルによる編集。2006年にリリースされており、恐らく映画発表後、再発したものと思われます。映画で印象的だったターコイズグリーンのキャデラックをジャケットにフューチャーしているのは、グッジョブ。ただし解説などは一切付いておらず、ジャケットのペラ紙1枚だけという仕様はいただけません。せめて収録曲のクレジットは欲しかった所。

 ドン・シャーリーは作曲もしましたが、アルバム発表ではピアニストの活動に基軸を置いており、収録曲のほとんどがカバーという構成です。ブルース、ジャズ、ポップスと幅広いレパートリーを取り上げています。尚、クラシック音楽の作曲には、積極的に携わっており交響曲も書いているとのこと。

 先に書いたようにクラシックからの影響が大きいジャズ・ピアニスト、という個性を存分に楽しめるという点で満足な一枚。多くはドラムレスであり、ピアノと弦楽器を中心とした、穏やかで美しいジャズを聴くことが出来ます。イージーリスニング的で癒される聴き心地である一方、ピリピリとした緊張感も同居している辺りがポイント。正直なところ、映画が無ければ、発見できなかったミュージシャンでした。逆に言えば、映画でドン・シャーリーを知ったなら(配信でもいいので)彼の音楽を楽しんで損はありません。

※映画では、ショパンのエチュードOP. 25 第11番「木枯らし」を演奏しているところが素晴らしいのですが、本作にもサントラにも入っておりません。自分が調べた限り、オリジナル・アルバムに収録されていることも確認できなかったので、当時演奏はしていてもレコーディングはしなかったのかもしれません。また見つけたら追記します。

Don shirley - Stand by me
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ARTHUR CRUDUP/classic by arthur Crudup

ARTHUR CRUDUP/classic by arthur Crudup
1940年代後半~1950年代 アメリカ
『違いが分からない男のブルース・レビュー28』

 今回からブルース記事はSpotifyを使って書いております。ブルース・シンガーのアルバムをCDで購入しようとする時、(対象ミュージシャンがアルバムをリリースしていないなどの理由で)どうしてもベスト盤になりがちですが、レーベルをまたがって活動していたりするので、お目当ての曲がどれに入っているのか分からないことが多いです。でもSpotifyのような配信スタイルなら、いくつものベスト盤を横断して聴けるのでハイライト曲を漏らすことはありません。Spotifyは音質が残念だと思っていましたが、ことブルースの歴史的な作品に関しては1950年代を中心とした「味のある」録音状態が多いので、あまり気になりません。余談ではありますが、最近Spotifyのプレミアム勧誘メールが多く届き、少し迷惑しています。音質さえ何とか(ハイレゾ対応)してくれれば、いつでもお金を払う用意がある、と言っておきましょう。

 前置きが長くなりました。今回はアーサー・クルーダップを取り上げます。”エルヴィス・プレスリーが「That's All Right」をカバーした“という形容で知られるブルース・シンガー。今まできちんと聴くことが無かったので、今回掘り下げてみようと思いました。
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 1905年ミシシッピ州フォレスト生まれ。ゴスペルやブルースに親しんでいたアーサー・クルーダップは、1939年にシカゴに渡り、ブルース・シンガーへの道を志した。しかし現実は厳しく、梱包の仕事などをこなしながらストリート・ミュージシャンで日々の暮らしを凌いでいく状況。そんなギリギリの状況でRCA傘下のブルーバード・レコードと契約することに。当時36歳。ブルーバード・レコードでアーサーを担当したタンパ・レッドは、彼の自由にさせる放任主義を貫き、1940年代前半のRCAにオリジナル曲を次々に録音しています。その後も1950年代に掛けて、エース・レコード、チェッカー・レコード、トランペット・レコードとレーベルを渡り歩きながらレコードを発表。エルヴィス・プレスリーによる宣伝効果などもあり、この辺りが全盛期です。その後はギャラの分配で揉め、引退状態に。以後、数回の復活を経て、1974年に亡くなっています。後に多くの曲がカバーされることになった偉人にも関わらず、プロとなってからも十分な給料をもらうことが出来ず、農業や密造酒作りで生活をしていたという事実が侘しいです。

 今回選んだタイトルは2016年に編纂されたベスト盤です。最新編集だから、ということで選んだのですが、「That’s All Right」「My Baby Left Me」の2曲が外されているのは残念。それ以外は順当な選曲でオリジナルの有名曲を網羅した内容。威勢のいい高音の歌声とギクシャクとしたギターは、愛嬌があり、苦労人の逞しさを感じます。これを聴いて当時の労働者は慰められたのでしょう。

Chicago Blues : Arthur "Big Boy" Crudup
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Barbara Dane/Hot Jazz, Cool Blues & Hard-Hitting Songs

Barbara Dane/Hot Jazz, Cool Blues & Hard-Hitting Songs
1950年代 アメリカ
『違いが分からない男のブルース・レビュー27』

 ブルースの新規開拓を目的とした連載だったこの企画も27回目。ネタにするべきブルース・シンガーを探すのがそろそろ難しくなってきた感じです。今回取り上げるバーバラ・デインは、タイトルからも分かる通り、フォーク、ブルース、ジャズ・ヴォーカルと多岐に渡って活躍している人物。純然たるブルース・シンガーと言えませんが、ご容赦ください。

 1927年デトロイト生まれ。音楽に関わり始めたのは高校時代の頃。1940年代のデトロイトは経済発展が目覚ましく、且つ労働組合による運動も活発化。人種平等と労働者の権利を求めるデモに、バーバラ・デインも参加することとなります。デモの一環として同世代(10代)の若者たちと共にバンドを結成。パフォーマンスを披露することで、地元の音楽プロモーターからの関心を集めました。ただ、この時点ではプロモーターからの誘いは断り、工場の正門や組合のホールで歌うことを楽しんでいたとのこと。
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 1949年にサンフランシスコへ移住。これを機に両親ら家族を養うために、ラジオやテレビでトラッドや流行歌を歌う音楽活動を開始します。1950年代、時代の流行に合わせてブルースの古典やジャズのスタンダードを独自の解釈で披露。彼女が主に活躍していたエンバカデロにあるクラブから評判が広がっていき、ジョージ・ルイスやキッド・オーリーのようなニューオーリンズのジャズミュージシャンや、トルコ・マーフィー、バート・ベールズ、ボブ・ミルケーといった地元のミュージシャンと交流。その他、メンフィス・スリム、ウィリー・ディクソン、マディ・ウォーターズ、クララ・ワード、ママ・ヤンシー、ウェス・モンゴメリー等、様々なミュージシャンと交流。フォーク、ブルース、ジャズとジャンルを超えた活動を見せ、1980年代までアルバムを発表しました。その後は社会活動を行うことに専念しています。2018年現在、90歳。

 今回、聴いたアルバムは2枚組のベスト盤。38曲も収録している充実の内容。前述した共演メンバーの他、ライトニング・ホプキンスやチャンバー・ブラザーズ、ドク・ワトソン、ピート・シーガーとの共演も収録しています。バーバラの歌声はパワフルで泥臭い。なるほど、こんな歌声で平等や権利を歌われたら、励まされることだろう。

Barbara Dane & Lightnin' Hopkins - I'm Going Back, Baby (Back Behind The Sun)
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Casals Trio:Beethoven Piano Trio No.7 Archduke/Schubert:Piano Trio No.1

Casals Trio:Beethoven Piano Trio No.7 Archduke/Schubert:Piano Trio No.1
カザルス・トリオ/ベートーヴェン:大公トリオ
1926~1928年 フランス(録音:ロンドン)
『お正月にピッタリの優雅な室内楽』

 年始に聴いていたクラシックをご紹介。帯には「史上最高の名トリオ、カザルス・トリオの代表作。」の文字。初めて聴きましたが、お正月にピッタリの優雅な室内楽でうれしかったです。
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●カザルス・トリオについて。
ピアノ:アルフレッド・コルトー
ヴァイオリン:ジャック・ティボー
チェロ:パブロ・カザルス
上記3人によるトリオ。1905年、パリを拠点に活動していた若手演奏家3人により、結成されました。初期には三重奏を通じて切磋琢磨していた彼らですが、それぞれが頭角を現すに伴い、トリオとしての活動は減少。本作が録音された1920年代後半には年に数回というペースでしか活動していなかったとのこと。もちろん、演奏家としての腕は上がっており、より素晴らしい演奏を披露してくれています。

●ピアノ三重奏曲 第7番 変ロ長調「大公」作品97 について。
 ベートーヴェンが1811年に作曲した曲。「大公」はベートーヴェンと親交が深かったルドルフ大公のこと。優雅で幸福、そして清々しいメロディーが溢れた曲です。ベートーヴェンのイメージではあまり無い、柔和な魅力が楽しめました。

●アルバムについて。
 1920年代の作品。今から98年前の録音なので、ところどころプチプチのノイズが入っています。また籠っている感じもあり。最新技術ハイサンプリング・レコーディング・システムをもってしても覆せないハンデを感じました。ただ、そこを味と割り切れれば、晴れやかな三重奏を存分に楽しめます。餅が2個入ったお雑煮を食べて、このCDを聴いているとやがて横になり、午睡を貪ることになるでしょう。

Cortot, Thibaud, Casals - Beethoven Archduke, Trio Op.97 in B flat Major
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Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962

Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962
1950年代 アメリカ
『違いが分からない男のブルース・レビュー25』

 2016年6月以来のブルース記事、ついに復活。本日はロウエル・フルソンを取り上げます。

●経歴
 1921年、オクラホマ州タルサ生まれ。10代の頃からタップ・ダンサーとして活動しており、音楽に理解のある家庭で育ったとのこと。尚、この頃にはテキサス・ブルース・スタイルのバンドに参加していました。成人した1940年代にカルフォルニアへ移住。これを機にブルース・シンガーとしての活動を開始します。彼は時代毎に音楽性を変えています。まず初期(45年~50年頃)は地元カルフォルニア周辺のレーベル(複数)での伝統的なテキサス・ブルース。続いて中期(50年~64年)にはチェッカー・レーベルに移籍。ピアノ、サックスを加えたバンドを結成し、スロー・テンポのブルースを指向しています。ここでは自身のルーツであるゴスペルの要素が加わっているのも特徴。同じく中期の後編としてメジャー・レーベル、ケントに移籍していた時代があります。(64年~)ロックンロール誕生期にあたる、この時期ではビートを強調したブルース・ナンバーでヒットを生んでいます。以後も地道な活動を続けており、1980年には来日公演も実現しています。1999年にカリフォルニア州ロングビーチにてなくなったとのこと。戦後モダン・ブルースの歴史を作った一人です。尚、B.B.キングに影響を与えたブルースマンとしても知られており、B.B.キングは「眠れる巨人」と称していたそうです。

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50年代のロウエル・フルソンと言えば、この写真で決まりだ!笑顔が決まっています。

●チェッカー・レーベルでのロウエル・フルソン
先に書いたように、この頃の彼は弾き語りからピアノ、サックスを加えたバンドへと表現方法を変えています。ピアノはロイド・グレン、アルト・サックスはアール・ブラウンが担当。ソウル、ゴスペルの要素も多く含んだスロー・ブルースが中心です。歌、ギター共に派手さはありません。バンドとしてのサウンドを重視しており、あまり前に出ないのも特徴。ただし、生活感の滲み出る泥臭くもソウルフルな歌唱、ロープ・ギターと自称するザクザクとうねるギター、ともにインパクト十分。ここぞという時の存在感は十分です。曲は技巧で聴かせるというよりはムードを重視しており、ポップなものが多い印象。ゴージャスな雰囲気満点のねっとりとしたサックスと、穏やかに跳ねるピアノも、素晴らしい。

Reconsider Baby
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