一十三十一/Ecstasy

一十三十一/Ecstasy
2017年 日本
『自作自演としての我をもう少し』

 通算9枚目。近年はシティ・ポップ~テクノ・ポップの路線でアルバムを出しており、そのことごとくが高品質でした。ただデジタル重視のサウンド・プロデュースが強くなるにつれて、ちょっと量産品のようなイメージもついてしまいました。プロデューサーの意向にズバッと対応してしまう柔軟性は素晴らしいのですが、一方でもう少しアクの強さも欲しい。などと考えつつも新作を聴いてみる次第。
91uKQnZ_R5L__SL1500_.jpg

 やけに落ち着いている・・・チルアウトっていうのかな。全曲でDorianがプロデュースしているとのことです。映画の1シーンのようなセリフSEが入るなど、Dorianがバックトラックをカッチリ作り込んでいます。メカニカルな印象を更に強めたアルバムとなっています。透き通った歌声は健在。バックトラックとの相性は抜群で、血の通ったボーカロイドの如し。作曲に関しては、ユーミンライクな良曲が揃っています。『カイエ』や『copine』の頃の大貫妙子のようなところもあり。それぞれ、一つずつと抜き出して聴くと、ポップであり夏のイメージも伝わるのです。しかしながら全編で聴いてみると、Dorianのバックトラックの主張が激しい分、アルバムの構成が平面的に感じました。ぼーーっと浸って聴いているのが、ベストな付き合い方かもしれません。

Flash of Light
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ 日本ポップスSSW

Grace VanderWaal/ Just the Beginning

Grace VanderWaal/ Just the Beginning
2017年 アメリカ
『大人大活躍』

 アメリカンズ・ゴット・タレント2016年度の優勝者、グレイス・ヴァンダーウォールのデビュー作。アメリカンズ・ゴット・タレント、というのはアメリカのオーディション番組のことらしく、その名前から受けるイメージ通りの内容のようです。優勝した頃には12歳だったそうで、つまり本作をレコーディングしていた頃には13歳ということになります。
81Dq3gjZn3L__SX355_.jpg

 最初に聴いた時にはそのような情報は知りませんでした。オォォォォォ、というような詠唱(ヴォーカリーズ)を駆使したパワフルで清々しい歌唱、ピアノを土台にした大らかな楽曲群が魅力です。デジタル世代ですから、プログラミングやストリングスを被せているのですが、手拍子や自身の歌声、ピアノの音色といった生音を中心に組み立てていて素朴さを十分残しているのが素晴らしい。さすがにこの辺りの編曲は大人が関わっていると思います。一方でスケールが大きくドラマティックな展開になる曲が多く、13歳の新星らしからぬ「いかにもアメリカっぽい商業音楽臭」が鼻についてしまうところもあり。大人のプロデュースは功罪半ばといった感じです。

 13歳の新星sswのデビューと言われると、大人が介入しまくっているのでもやもやするところ。
しかしながら、全体的には元気なフェイストみたいな瑞々しい魅力があり、楽しめました。

Grace VanderWaal - So Much More Than This
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ アメリカポップス

折坂悠太/ざわめき

折坂悠太/ざわめき
2018年 日本
『開放的な清々しさが感じられるのが特徴』

 祭囃子や民謡、昔の歌謡曲のエッセンスなどと、ジャズ、レゲエ、シャンソンの要素を混ぜ合わせた、土臭さたっぷりの音楽。そんな音楽をやる折坂悠太の5曲入り新作が出ました。
71udesXw-4L__SY355_.jpg

 今回は弾き語りではなく、バンド編成での録音。1曲目「芍薬」のみ、ドラムが打ち鳴らされるお祭りソングで、他は穏やかな曲が並んでいます。ピアノ、管楽器を交えた室内楽という風情。

 歌詞の日本語の美しさは健在。相変わらず古風な表現を使いながらも、以前よりも分かりやすくなっている気がします。山あり谷ありで、うねるような節回しも相変わらずで、合奏となっても歌を軸に据えています。発声に気持ちが乗っていて何を歌っているのか分からないところも魅力のひとつ。

 弾き語りの内省的で穏やかな魅力とは異なる、開放的な清々しさが感じられるのが特徴です。

折坂悠太 - 芍薬 (Official Music Video)
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ 日本フォーク

Tom Brosseau/Treasures Untold

Tom Brosseau/Treasures Untold
2017年 アメリカ
『歌が人々を温める様子をパッケージ』

 ノースダコタを拠点に活動しているフォーク・シンガー、ソングライターの9枚目。2014年に7枚目のアルバム『Grass Punks』を発見、このブログで紹介してからファンになりました。カントリーからの影響を感じさせる、内省的でしんみりとしたメロディー、語り口が魅力的。
a3028042143_10.jpg

 今回のアルバムはケルンでのライブを録音したもの。ギター弾き語りのみです。かつてあった「古い歌を伝承しながら、そこに自分の歌を加えていく」というカントリーやトラッド歌手の在り方。トム・ブロッソーは、そのスタイルを守っていたようで、今回のアルバムでは全12曲中6曲がカバーとなっています。本作は、今もフォーク・シンガーによって伝承歌が生き続けている、という状況を伝える役目を果たしているのだと思います。
曲目は以下。右側は作曲者です。

Empire Builder/Tom Brosseau
You Win Again/Hank Williams
Don't Forget This Song/A.P. Carter
I Am the Light of the World /Rev. Gary Davis
Love to Play Guitar /Tom Brosseau
Cologne (Monologue) /Tom Brosseau
The Horse Will Not Ride, the Gospel Will Not Be Spoken /Tom Brosseau
When I'm Gone /Elizabeth Cotton
Dreaming With My Tears in My Eyes /Waldo O' Neal / Jimmie Rodgers
Today Is a Bright New Day /Tom Brosseau
Jimmie Rodgers (Monologue) /Tom Brosseau
Treasures Untold /Ellsworth T. Cozzens / Jimmie Rodgers

 目を惹くクレジットはジミー・ロジャース。トム・ブロッソーのオリジナル曲として「Jimmie Rodgers」なる曲も捧げられており、思い入れが深いことが伝わります。ジミー・ロジャースは1820年代に活躍した人物。トリビュート・アルバムを企画したボブ・ディランを始め、ボノやジョン・メレンキャンプなど多くのミュージシャンから尊敬を集めているカントリーの父と呼ばれている偉人です。ヨーデルから影響を受けた歌唱とメロディーが特徴であり、その音楽性が後のカントリー・ミュージックの礎となりました。

 仕事終わりにお酒を飲みながら聴き入っている観客と、歌うトム・ブロッソー。ほのぼのとした空気感が素晴らしく、自分もそこにいるような気分になれます。昔々、鉄道職員へ向けて歌っているジミー・ロジャースもこういう感じだったのかもしれません。

Tom Brosseau - The Horses Will Not Ride, The Gospel Won't Be Spoken - Treasures Untold
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ アメリカフォーク

Poppy/Poppy.Computer

Poppy/Poppy.Computer
2017年 アメリカ
『ぴーおーぴーぴーわい、あいむぽっぴー』

 去年「いーすたーいーすたー」というきゃりーぱみゅぱみゅの曲が、仕事中にあまりにもヘヴィローテーションされすぎて、脳みそから離れなくなった体験をしました。(今年は無くて良かった!)それには及ばないものの、「ぴーおーぴーぴーわい、あいむぽっぴー。」という、この能天気なフレーズ、なかなかの脳みそこびりつき具合です。
41RUK0v-JJL__SY355_.jpg

 ポピーは「コンピュータの中に住んでいるんだよ」などとのたまっておりますが、マサチューセッツ州ボストンで生まれた23歳の女性。歌手、作曲家、女優、ダンサーと多岐に渡って活躍しているそうです。平たく言うとタレントだと思います。幼少期よりマンハッタンのダンス・カンパニー、ロケッツに憧れを抱き、ダンスに夢中になっていたとのこと。ボストンの学校ではいじめを受けるようになり、その逃げ道として音楽の道を志すことになります。尚、彼女の父親はバンドのドラマーです。ポピーは2007年家庭の事情でナッシュビルに引っ越し、更に2009年、今度は自身が音楽活動をスタートさせるためにロサンゼルスへ移住します。2012年からソーシャルメディアを通じての音楽活動を開始。特にyoutubeでの活動で人気を集め、2017年本作でデビューすることとなります。

 正直、はっちゃけたお嬢さん、というイメージで見ていたので、自分で曲を作る人だと知って驚きました。さて音楽性ですが、彼女は日本文化からの影響を大きく受けており、音楽に於いても80年代から90年代に欠けてのテクノ歌謡からの影響が強いようです。何故そこに?という疑問は残りますが、確かに濃い遺伝子を感じます。全力で演じている風の闇を感じさせるほど、元気はつらつキャピキャピな歌唱と、緻密なプログラミングによるアレンジ、テクノ歌謡由来のポップなメロディー。これら3つの要素が彼女の音楽の特徴と言えます。中毒性は高く、「私は一体何を聴いているのだ。」と、おっさんが我に返っても、再び没頭してしまうほど。「ぴーおーぴーぴーわい、あいむぽっぴー。」と鼻歌しながらカートを運ぶ我、気持ち悪し。

I'm Poppy - Official Lyric Video
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ アメリカポップス