Timothy Seth Avett As Darling/IV

Timothy Seth Avett As Darling/IV
2017年 アメリカ
『ニック・ドレイク、ロン・セクスミスのラインを通っているフォークが好きなあなたに。』

 甘く切ないメロディーと軽妙な歌い口。田舎の家の軒先で演奏しているかのような、素朴で気安い佇まいはまるで70年代の日本語フォークの如し。この寂しいギターの音色は何だ!これはいいシンガー・ソングライターです。

 ティモシー・セス・エイベット。3人兄弟の末っ子として、ノースカロライナ州コンコードにて、1980年に生まれました。現在36歳。兄であるスコットと共に幼少期よりバンド演奏を始めています。兄のスコットがバンジョー、セスがギター、幼馴染のボブ・クロフォードがダブル・ベースという編成。2000年よりエイベット・ブラザーズと名乗って活動しており、その後、キーボード奏者のジョー・クォンを加えて現在は4人編成です。ブルーグラス、アメリカーナといった伝統音楽に根差したカントリー・ロックをやっています。→音源(youtube) 本国アメリカでは人気を獲得しており、日本語のページもちらほらと。実績を積んでいるグループです。初めて聴きましたがルーツに根差していながらも渋くなり過ぎず親しみやすい音楽で素晴らしい。さて、セスの話に戻ります。グループとして9枚のアルバムをリリースする傍らで、セスはソロ活動をしており、これまで3枚のアルバムをリリース。2005年のサード以来、ブランクが空いていましたがこの度12年振りの4作目がリリースされました。
seth_iv_cover_1000x1000.jpg
このジャケからするとフォークというよりも甘いピアノ・バラードが似合いそうですが・・・

 エイベット・ブラザーズと比べるとメロウで淋しげな表情が印象的な作風。ギター弾き語りを中心に、曲によってはバンド・セット、ヴァイオリンが入る曲もあり。もちろんアメリカ発の音楽なので、陰よりも朗らかさが先に立つ部分もありますが、総じて穏やかなことは確か。メロディーの質が素晴らしい。ニック・ドレイク、ロン・セクスミスのラインを通っているフォーク好きな音楽ファンには是非聴いてもらいたいです。まずは以下の曲をどうぞ。

should we move
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ アメリカSSWフォーク

Chastity Brown/Silhouette of Sirens

Chastity Brown/Silhouette of Sirens
2017年 アメリカ
『ゴスペル、アイルランド、ブルースが同居』

 アフロヘアの女性ミュージシャンが登場すると、ついついチェックしてしまう。やはり華やかで目立ちますから。そしてチャスティティー・ブラウンを見つけました。
1489016334591.jpg

 1982年、アイルランド人の母とアフリカ系アメリカ人ブルース・シンガーの父の間に生まれたチャスティティー。ニューハンプシャー州北部で生まれ、テネシー州ユニオンシティで育ち、現在はミネソタ州ミネアポリスを拠点に活動しています。幼い頃からアイルランド民謡やブリティッシュ・トラッド、フォークを聴きながら、同時に父の影響でブルースにも親しんだ彼女。礼拝堂でのゴスペル・コーラス隊の中でドラムとサックスを演奏して育ったそうです。多様な音楽経験と何度かの移住を経て、豊かなバックボーンが形成されているようです。彼女は影響を受けたものとして、ジェイムス・ボールドウィン、カーソン・マッカラーズという二人のアメリカ人作家を挙げています。2007年にアルバム・デビュー、本作で5枚目になります。現在はマイケル・キワンカ、ダー・ウィリアムズ、ラウル・ミドン、レオン・ラッセル等のライブ・ツアーをサポートするなど、知名度を獲得。ミネアポリスにてベスト・フォーク賞を受賞したことを始め、いくつかの音楽賞も受賞。名前が売れてきています。
ffchastity.jpg

 壮大で力強いゴスペル要素、図太いブルース・ロック、枯れたカントリー・ギターといった要素が同居。またシャッフル、ビート・ナンバーもいくつか収録されており、ブリティッシュ・ロックからの影響も感じさせるのがポイントです。哀愁を帯びたメロディー、パワフルな歌唱共に申し分なく伸び伸びとしたアメリカン・ロック作として楽しめました。

Carried Away
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ アメリカSSWポップスソウル

Imelda May/Life Love Flesh Blood

Imelda May/Life Love Flesh Blood
2017年
『ジプシー、サンバも取り入れた、柔軟な黒さへの憧れ』

 名前は知っていたもののアルバムを購入したのは初めてです。声量、艶、溜め、全てツボにはまった素晴らしいシンガー。「Crazy Love」(ヴァン・モリソン)調のバラードである1曲目「Call Me」を聴いてそう思いました。
imelda_may_wide-4524384d5e3478b9d9762f5c27cfe1b9b947436d-s900-c85.jpg

 イメルダ・メイはアイルランド、ダブリン出身のシンガー・ソングライター。1974年生まれ。2003年にアルバム・デビューを果たして以来、4枚のアルバムを発表。本作は5枚目となります。離婚後、LAで録音されたとのこと。
imela.jpg

 プロデューサーはTボーン・バーネットが担当。80年代から90年代にかけてロイ・オービソンやエルヴィス・コステロなど、多くの作品を手掛けた名プロデューサーです。12名ものスタジオ・ミュージシャンを招聘して録音。またゲストにはボノ、ジェフ・ベック、ジュール・ホランドなど豪華なメンツが集結しており、彼女の名声の高さを伺わせます。

 アルバムの内容は、タンゴ、ジプシー、ジャズ・ヴォーカルのムードも漂う、ソウルフルなポップ・ソング集。60~70年代を彷彿とさせるブルージーな演奏は、温故知新を得意とするプロデューサーのTボーン・バーネットならでは。骨太なアンサンブルを聴かせてくれます。そんな中、うねるようなオルガンの使い方はアイルランド、イギリスらしさを感じさせます。

前述したヴァン・モリソンのように、黒人音楽、フォーク、トラッドをアイルランド人として吸収、転化して、彼女なりの音楽を作り上げています。ソウルフルであり、民族音楽らしいドロドロとした熱狂も感じさせてくれる、かっこいい音楽でした。

Black Tears (Audio) ft. Jeff Beck
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ イギリスSSW

Alasdair Roberts/Pangs

Alasdair Roberts/Pangs
2017年 イギリス
『蘇える中世イギリスの幻想風景』

 正統派のフォーク・ロック。オルガン、ピアノ、フィドル、エレキギター、フルート等が奏でるトラッドに根差した荒涼としたメロディーは、まるでフェアポート・コンヴェンション(男所帯)を彷彿とさせます。
Alasdair-Roberts-redwood-photography-2.jpg

 スコットランド出身のシンガー・ソングライター、アラスディア・ロバーツ。カランダーという町で育ち、現在はグラスゴーを拠点として音楽活動をしています。2001年からCDのリリースを開始しており、ラフ・トレードやドラッグ・シティといったレーベルより9枚の作品を発表。本作は10枚目のアルバムとなります。ヴァセリンズやジェフリー・ルイスの作品を手掛けている若手のエンジニア、ジュリー・マクラーノンが録音を担当。
large_8865a331-fea4-486e-9213-f1a992a64558.jpg

 2017年ならではのクリアな音質ですが、やっていることは70年代英フォークの回顧。程よく枯れたヴォーカルと土臭い楽曲群は相性抜群。新しさは全く見いだせないものの、フェアポート・コンヴェンションやトゥリーズが奏でていた中世イギリスの幻想風景を蘇らせており、魅力十分。既にベテランの域に達するミュージシャンですが、全く知りませんでした。

An Altar in the Glade
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ イギリスSSWフォーク

ANDY BOWN/GONE TO MY HEAD

ANDY BOWN/GONE TO MY HEAD
1972年 イギリス(アメリカ原盤)
『バラードがいい』

 以前レビューしたジューダス・ジャンプにも参加していたアンディ・ボウンのファースト・ソロ作です。いわゆる「明るいエロ」路線のジャケで本作のことは覚えていて、CD化されたのを機に聴いてみました。
andybownhead.jpg

 本作で、アンディ・ボウンはヴォーカルとアコギを担当。若干、パワー不足ですが、若干しゃがれた男前な歌声を披露しています。バックのメンツはなかなか豪華。まずギターにピーター・フランプトン。ドラムにミッキー・ウォーラー、ピアノにジミー・ホロヴィッツ、バック・ヴォーカルにレスリー・ダンカンというラインナップ。

 バンド・スタイルの曲とSSWタイプの曲が混在している中途半端な内容ながら、各楽曲はなかなかに聴かせてくれます。一部、アレンジを盛り過ぎている感じの曲があるのが玉にきず。英SSW作品をコレクションしているのであれば、後悔しないであろう好作品です。

The Mourning Leaves

続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ イギリスSSW