一十三十一/Ecstasy

一十三十一/Ecstasy
2017年 日本
『自作自演としての我をもう少し』

 通算9枚目。近年はシティ・ポップ~テクノ・ポップの路線でアルバムを出しており、そのことごとくが高品質でした。ただデジタル重視のサウンド・プロデュースが強くなるにつれて、ちょっと量産品のようなイメージもついてしまいました。プロデューサーの意向にズバッと対応してしまう柔軟性は素晴らしいのですが、一方でもう少しアクの強さも欲しい。などと考えつつも新作を聴いてみる次第。
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 やけに落ち着いている・・・チルアウトっていうのかな。全曲でDorianがプロデュースしているとのことです。映画の1シーンのようなセリフSEが入るなど、Dorianがバックトラックをカッチリ作り込んでいます。メカニカルな印象を更に強めたアルバムとなっています。透き通った歌声は健在。バックトラックとの相性は抜群で、血の通ったボーカロイドの如し。作曲に関しては、ユーミンライクな良曲が揃っています。『カイエ』や『copine』の頃の大貫妙子のようなところもあり。それぞれ、一つずつと抜き出して聴くと、ポップであり夏のイメージも伝わるのです。しかしながら全編で聴いてみると、Dorianのバックトラックの主張が激しい分、アルバムの構成が平面的に感じました。ぼーーっと浸って聴いているのが、ベストな付き合い方かもしれません。

Flash of Light
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坂口恭平/アポロン

坂口恭平/アポロン
2018年 日本
『芸術の神を冠したファーストアルバム』

 熊本出身。建築家や画家として活躍している坂口恭平が、今度はシンガーソングライターとしてアルバムを発表。自分はそんな凄い経歴を知らず、寺尾紗穂参加ということで試聴した結果、購入しました。
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 アコギ弾き語りを坂口恭平、ベースに厚海義朗(GUIRO)、ドラムに菅沼雄太、ピアノに寺尾紗穂という布陣。

 ほぼ全編でゆったりとしたリズムのカントリー、フォーク・ロックをやっています。寺尾紗穂のピアノが前面に出ているので、室内楽の雰囲気が漂っている印象。坂口恭平の歌は声域が狭いので地味目ながらも、伸び伸びとしていて良いです。一方でほぼ全編、のんびりな楽曲で統一されているので、少しダレる部分もあり。ヒップホップを取り入れた「あの声」のような変化球がもう少し入っていれば良かったかも。
 
 ハンバートハンバートの佐藤良成がリードを取る曲のような劣等感を含んだ味わいを期待したのですが、もっと穏やかで平和な音楽となっています。また、寺尾紗穂がコーラスや時にはリード・ヴォーカルも務めており、華やかさを添えているのがポイント。晴れた休日の始まりに聴くべきような、期待感を静かに盛り上げてくれる音楽です。

休みの日
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りりィ/南十字星

りりィ/南十字星
1980年 日本
『ドスを含んだ歌声がAORサウンドからはみ出るところも素敵』

 1970年代半ばからのポップス路線のりりィ作品。その終盤に当たるEMIでの最終作です。中古盤店でつまんだ『りりシズム』に、思いのほかハマっていたところ。そこに初CD化という報を受けては聴かずにはいられません。

 大部分の楽曲を国吉良一が担当している他、木田高介も2曲で参加。尚、本作は発売直前に亡くなった木田高介に捧げられています。
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 AOR度は更に高くなっています。スタジオ・ミュージシャンによる円熟の演奏による爽やかなアンサンブルが存分にフューチャーされており、バンドのアルバムのような趣があり。
なるほど、ライトメロウのシリーズで再発されることにも納得。所々、歌謡曲チックなストリングス・アレンジの曲があるな、と思っていたらやっぱり木田高介さんの曲でした。

 女の子向けアニメの主題歌をりりィが歌ったかのような、『風のランナー』はインパクト抜群。どっしりしたヴォーカル・パートから洗練されたシンセサイザー・ソロへと流れるところが気持ちいいです。

 この他にも70年代中期~後期に於けるりりィのアルバムがCD化されているそうなので、これを機に集めてみようと思います。生み出す雰囲気が好きだったのですが、この時期のアルバムを聴くといい曲を書くソングライターだったのだな、と再認識しました。
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Danielle Cawdell/Silence Set Me Free

Danielle Cawdell/Silence Set Me Free
2018年 イギリス
『厳しい冬の屋内で暖を取っているような聴き心地』
 
一粒一粒、しずくが滴り落ちるようなピアノと、わななくエレキギターの倍音。寒々しく幻想的な音楽は、ジョニ・ミッチェルからの影響をイギリスの地で実践したスタイル。70年代のブリティッシュ・フォークをも彷彿とさせます。
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 ダニエル・コーデルはピアニストにして、シンガーソングライター。イギリスのバーミンガムを拠点として活動しています。ウェスト・ミッドランドに住むシンガーソングライター、ダン・ホワイトハウスが主催するソングライター・サークルのワークショップに参加。これをきっかけとしてダンの後援を取り付け、更にもう一人、バルセロナのプロデューサー、ジェイソン・ターバーの助力を得ることとなり、二人のプロデュースによりデビュー・アルバムが完成しました。
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 ピアノの弾き語りをベースとした楽曲群で、いくつかの楽曲でエレキギターやストリングスが加えられているものの、総じてシンプルに仕上がっています。前述した通り、ジョニ・ミッチェルからの影響が顕著で、静かな中に厳しさを感じさせる楽曲群が印象的。歌声は高音が澄み切っていて伸びやか。厳しい冬の屋内で暖を取っているような聴き心地。

Danielle Cawdell - Silence set me free - Treehouse Sessions Live Stream - #TreeTV
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Anna Burch/Quit the Curse

Anna Burch/Quit the Curse
2018年 アメリカ
『桜散ったら憂鬱ポップ』

 ミシガン州デトロイト出身のSSW、アンナ・バーチのデビュー作。元々、フォークロックバンドFrontier Ruckusのメンバーとして、2003年より音楽活動をスタート。しかし2014年にガレージポップバンドFailes Flowersを結成。そちらへ専念するためにFrontier Ruckusは脱退しています。Failes Flowersでは今の所、デモとアルバムを1枚ずつ発表しているのみ。そして並行してリリースされたソロ・アルバムが本作となります。
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 60年代を想起させるノスタルジックなメロディーが素晴らしく、且つ意表を突く転調で聴き手を飽きさせません。いい曲作っています。全編、バンド演奏で録音されていますが、まったりと落ち着いたミドルテンポの曲調のものが多く、脱力したアンサンブルと言えます。ざらついたギターサウンドと濃いエコーにはガレージポップの名残りがあり。気怠くも清々しい歌唱と相まって、なかなかにサイケデリックな感じです。
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2 Cool 2 Care
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