Geyster/With All Due Respect

Geyster/With All Due Respect
2017年 フランス
『今度のガイスターはディスコ趣味全開』

 フランスのガエル・ベンヤミンによるプロジェクト、ガイスターの最新アルバム。通算8枚目です。前作は3枚組の大作だったのですが、まさかもう新作が届くとは創作意欲の旺盛さに驚きます。

 自分がガイスターを知ったのは6thアルバムである2013年「Down On Broadway」でした。ブリティッシュ・ロック要素の強い作風が気に入っていたのですが、彼の本道はAORやエレクトロ・ポップのフィールドにあるようです。またガエル・ベンヤミンはプロデューサーとしても活動しているマルチ・ミュージシャン(宅録職人)なので、作品ごとに性格付け(コンセプト)がはっきり成されているのも特徴。

さて今回のアルバムですがビートが強調されており、エレクトロ・ポップ、ディスコの要素が強い音楽性となっています。
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同郷のダフトパンクにも通じるソウル、ファンク要素を加味した洗練されたエレクトロ・ポップが楽しめます。きめ細かい裏音の配置、余裕を感じさせるヴォーカル、キラキラのキーボード・サウンド、ジャズを彷彿とさせる奔放なソロパートと従来のガイスターが好きなAORファンにも楽しめる内容だと思います。ただ「Down On Broadway」が好きだった自分としてはちょっと寂しくもあり。プリファブ・スプラウトのカバーはうれしかったけれDも。

Geyster (feat. Ethel Lindsey) - Easy (Music Video)
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徳永憲/信じるに値しない男

徳永憲/信じるに値しない男
2017年 日本
『滋賀が寒いところだということが良く分かる』

 10作目。前作発表後、東京から故郷の滋賀へと転居しており、再出発の1枚となります。
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 ギター弾き語りをベースに宅録機器を駆使して制作するというスタイル。ここ数枚はポップになったり、ロック度を増したりしながら、どんどん耳馴染みが良くなっていったという印象でした。ゲストの参加による音もカラフルになっていました。
しかし新作はかなり硬派。特に前半の曲ではサビがサッパリとしており、いつものドラマティックな曲展開は控えめです。代わりにトラッド由来の寒々しさが強調されていて、冬の厳しさが伝わってくるような聴き心地。録音機材も前述のようにシンプルなので、音も概ね白と黒の世界の如し。帯にもありますが、初期の作風へと回帰しようという意図を感じます。内省的な徳永憲の本質を改めて確認出来ました。

序盤の3曲は、沈み込むような打ち込みのドラムとフルートがダークでオリエンタルな雰囲気を醸し出しており、レッド・ツェッペリンの「III」を思い出しました。

 アルバムタイトル「信じるに値しない男」はインパクト十分の言葉。長らく彼の音楽を楽しんできたので「そんなことない」と反駁したい所ですが、ご本人がそういっているのだからそうなのでしょう。故郷に帰って最初のアルバムタイトルで、信じるに値しない男だと表明している。田舎から上京して帰郷、と言う流れから来る悲哀を連想する言葉。僕は彼が信じるに値しない男だと受け入れつつ。今後、滋賀から登場する新作を、待っていようと思います。

雪の結晶
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実川俊晴/ポップ・ソングス 1979-2016

実川俊晴/ポップ・ソングス 1979-2016
2017年(1979~2016) 日本
『幻にしておくのがもったいない』

 マギー・メイのアンソロジーに続く、実川俊晴アーカイヴ・コレクション第2弾。前作のレビューで『「はじめてのチュウ」の作者』というタタキで興味を持ったと書きましたが、その意味からするとGS時代の前作よりも今回のアルバムが本命でした。
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 幻のポップ・クリエーターと帯で称されているので、てっきり作曲家一本槍だと思っていたのですが、きちんとソロ・アルバムもリリースしておりました。今回のアンソロジーでは、唯一のソロ作及びシングルをまとめたディスク1と、未発表を中心とした80年代以降の音源をまとめたディスク2という構成になっています。

 解説を読むとビージーズ、パイロットから影響を強く受けたとありますが、その通りの甘く爽やかなポップ・ミュージックが堪能できます。ドラマティックな英米折衷のメロディーと曲展開、そして若干声量は足りないけれども、とろけるようなファルセット・ヴォーカルが素晴らしい。ディスク1はアルバム音源を中心にした統一感があります。ディスク2はそれに比べると音質を含めてバラバラですが、70分オーバーでレア音源を収録してくれており大満足です。

 詳細な解説もありがたい。

実川俊晴 ポップ・ソングス 1979-2016 TOSHIHARU JITSUKAWA POP SONGS 1979-2016
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Aliocha/Eleven Songs

Aliocha/Eleven Songs
2017年 フランス
『素はセンチメンタル、アレンジでデカダンス』

 慎ましやかな歌い出しから、もったりとしたドラムが従い、やがてオルガンが唸るクライマックスへ。そういう曲調のオープニング・ナンバー「The Start」は、何だかジョン・レノンの「(Just Like) Starting Over」を彷彿とさせます。基本スタイルは米ロックンロールの腰の強さと、ブリティッシュ・フォークの侘しさを併せ持ったフォーク・ロック。フランス出身だけに、退廃的でロマンティックなムードが特徴的です。また、しぶとさを感じさせる低い歌声や、哀愁味のあるメロディーも魅力。

 フランス、パリ出身のSSW、アリオカ。姓はシュナイダー。映画俳優の父と、実業家兼モデルの母を持っています。
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そういうことなので、フランスでは既に男前なSSWとして人気は博しているようです。

父の知り合いだったという、カナダのケベック州出身のSSW、ジャン・ルルーと出会うことで自作自演歌手への憧れが芽生えたとのことです。ジャンと彼のバンドの助太刀を得てレコーディングを経験。これらの成果として2016年にはデビュー作を発表します。同年、フランスのパリ、カナダのモントリオール、アメリカのロサンゼルス、スウェーデンのイエテボリと音楽旅行を敢行。パリのプロデューサー、サミー・オスタやスウェーデンのドラマー、ルドウィック・ダールバーグを始めとする若い才能達との出会いによって、1枚のEPと1枚のアルバムを完成させています。今回ご紹介するのは2017年6月にヨーロッパでリリースされたセカンド・アルバム。
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 ギター弾き語りをベースにした楽曲が11曲並んでいるものの、録音はバンド編成。鍵盤の入る曲も多く、加えてヴォーカルにエコーが入るところがあるので、アコースティックながらカラフルな印象です。前述した通り、英フォーク、米ロックンロール及びそこから派生する英ロックの影響が強いサウンドです。ケベック出身のジャン・ルルーの指導が入っている成果なのか、フランスらしい、どんより、あるいはどろり、と形容するような耽美性は控えめ。その代わり俳優の父を持つからなのか、楽曲にはドラマティックで演劇的な特徴があり。特にキーボード・アレンジが神秘性を演出しており、ドイツ時代のデヴィッド・ボウイやサイケ時代のドノヴァンのような醒めた退廃ムードが楽しめます。

Sarah
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鳴海寛/僕は詩つくり

鳴海寛/僕は詩つくり
2017年(1975~1978) 日本
『爽やかで儚いポップ・ミュージック』

 自分は東北新幹線というデュオのメンバーとしてしか、鳴海寛というミュージシャンのことを知りませんでした。今回、彼のソロ音源をまとめたアルバムが出ることを知り、興味を持ったのは、東北新幹線の唯一のアルバムを何度も聴いていたからです。今回、アルバムの解説を読むことで東北新幹線解散後、frascoというグループで活動してアルバム3枚をリリースしていることや、山下達郎のライブ・ツアーに参加していたことを知りました。残念ながら2015年に鳴海氏は亡くなられたとのこと。しかし生前に許可を得ていた70年代の発掘音源である本作はめでたくリリースされました。
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 ボサノヴァやゴールデン・ポップスの流れを汲む、爽やかで儚いポップ・ミュージックをやっています。丁寧に一語一語発せられるファルセットのヴォーカル、たおやかな女性コーラス、キラキラしたキーボードなど、AORの影響を感じさせる洗練されたアレンジの合奏が素晴らしい。尚、4曲目ではギターに水谷公生が参加。

 発掘音源だけに一部の録音状態はラフです。

 今回発掘された楽曲の完成度は素晴らしく、改めてファンになってしまいました。これは関連音源を集めなければ!

2017年6月28日発売 鳴海寛NEW ALBUM『僕は詩つくり』より
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