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ミッキー・カーティスと侍/侍

ミッキー・カーティスと侍/侍
1971年 日本
『プログレ日本代表として』

 プログレッシヴ・ロック黎明期であった1970年代初頭に活躍していたグループ、侍のアルバム。本作はイギリスではデビュー作として、日本ではセカンドとして、リリースが前後しています。ユニバーサルが1000円で廉価再発してくれたので(ニッポンの名作シリーズ)ファーストと共に2枚セットで購入しました。
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 日英混合のメンバーによるオルガン、フルート、琴を交えた泥臭さが残るアンサンブル。全編英詞。英ブルース・ハード・ロックの影響を多分に残しつつ、ピンク・フロイドやキング・クリムゾンを彷彿とさせるドラマテイッックな叙情を加えたサウンドが特徴です。時間が経過した現在の耳で聴くと、オーソドックスな英プロフレの模倣という感想になりますが、数年遅れていた当時の日本のシーンを考えると、野心的なアルバムだったのでしょう。英プログレ以上にカッチリした構成や、「Boy With a Gun」の冒頭のような日本的な旋律に、イギリスに乗り込んだ日本代表の印を感じることが出来ます。

 セカンド作『河童』も合わせて紹介します。イギリスから帰国した1971年に録音された本作。前作の時点で大作が多い7曲という構成でしたが、こちらは全5曲とより傾向が顕著になっています。ヴォーカル・パートも少なくなってインプロヴィゼーションがより強化されて、聴き応え十分。沖縄音階を取り入れた楽曲「誰だった」では日本語詞を採用しています。ただし歌というよりも語り。この曲に限らず、侍はミッキー・カーティスのヴォーカルが非力な為、ネックとなっています。日本での録音であるにも関わらず、英アンダーグラウンドの空気感が充満しているのが印象的。またファーストよりもヘヴィ・ロック化しているのもポイントです。個性という部分ではもう一つ足りないですが、英プログレの標準レベルに達している佳作。

VISION OF TOMORROW
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カンバス/アイランド

カンバス/アイランド
2018年 日本
『5年間練った鉄壁のセカンド』

 福岡出身、現在は東京を拠点に活動するポップ・デュオによるセカンド・アルバム。今回はハピネス・レコードからリリースされています。セルフ・プロデュースですが、先行でリリースされた2曲のみマイクロ・スターの佐藤清喜がプロデュースで参加。まだデュオの面影が残りアコースティックな雰囲気があった前作と変わって、完全なバンド・サウンドになっています。セッション・メンバーにはハピネス人脈である北山ゆう子(drum)の他、今井カズヤ(key)が参加。他、ブラスセクションが付いた楽曲「ラバー」があり。
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 かっちりプロデュースされた印象で、まさしくシティ・ポップな聴き心地。5年という時間を掛けているのもあり、完成度の高い楽曲が揃っています。鍵盤、ドラムが入ることでアコースティックなイメージは無くなっているのが、少し寂しい。演奏部分が強化されており、「惰性」の後半部分で聴くことが出来るアメリカ西海岸ロック系爽やかギター・ソロを筆頭に、小川貴史のギターは強力です。一方の菱川浩太郎も太く小気味よいベースが素晴らしい。さっぱりとした乾いた音色で都会的な雰囲気を演出しているピアノ、ドラムの助っ人二人も申し分なし。最後になりましたが、小川貴史の澄んだ歌声は変わらず、更に安定感を増しています。どっしりしすぎて前作の掠れた感じが、少し名残惜しいくらい。

丑三つ時に君想う
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HARCO/あらたな方角へ

HARCO/あらたな方角へ
2017年 日本
『かつてHARCOの音楽を楽しんでいた時代を思い出す』

 聴きそびれていたHARCOの新作。帯にラストアルバムとありましたが、次作よりHARCOではなく青木慶則名義で活動するとのこと。
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 ポップに振り切った前作『ゴマサバと夕顔と空心菜』と比べると、シンセサイザーやプログラミングによる冷たく無機質な音が前面に出ていて、夜の未来感があり。ミニアルバム3枚をリリースしていた時期、あるいはその前の辺りを彷彿とさせる実験精神が多く含まれています。豪華ゲスト多数参加(山崎ゆかり、山田稔明、田中潤など)が彩りを添える役割に抑えられており、あくまでHARCOの個性が際立っているのが素晴らしい。
 
 かつてHARCOの音楽を楽しんでいた時代を思い出すような、懐かしい気分になったのが、なるほどラスト・アルバムということなのでしょう。

HARCO - アルバム「あらたな方角へ」トレイラー
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稲村一志と第一巻第百章/フリー・フライト

稲村一志と第一巻第百章/フリー・フライト
1977年 日本
『何度も再発してくれてありがたい!』

 解説には「ショーボート屈指の名盤」、帯には「北海道のシュガーベイブ」とストレートに絶賛のコメントが並んでいる本作。アルバム・ジャケットに見覚えはあったものの、いままで聴く機会がありませんでした。一度聴いてみると、絶賛するのも納得の素晴らしい内容でした。何度も再発してくれてありがたい!
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 本作は稲村一志を中心とするグループの唯一作。北海道を拠点として活動していました。ブックレットには大瀧詠一のコメントも掲載されており、大きな影響元であり、且つ交流も持っていたとのこと。
ジャズ、ソウルの要素を内包したシティ・ポップをやっており、一部ではレゲエを取り入れるなど、バラエティ豊かで洗練された音楽が楽しめる内容。ブラス・セクション、管弦楽器、コーラス隊を加えた大所帯によるアンサンブルは、適度な隙間があり、ジャケット通り、夜を感じさせる穏やかさが特徴。また本作は4チャンネルで録音されたとのことで、現場の気怠さが伝わるようなザラザラとした粗さも、魅力を生んでいるポイントとなっています。

稲村一志と第一巻第百章GOKUU

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森田童子/狼少年

森田童子/狼少年
1983年 日本
『80年代風にはなれない素材』

 森田童子の再発盤レビューもラスト1枚。2018年4月に森田童子は亡くなられました。音楽活動を休止して久しかったですが、CD再発の企画にOKを出してくれたおかげで、作品が再び流通に乗ることになりました。ありがとうございます。

 6枚目の最終作。
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 1曲目、いきなりのタンゴに戸惑う。キラキラのシンセサイザーによるダンス・ミュージックが、1983年という時代を思い出せます。森田童子による儚い歌声は相変わらずなだけに、ポップな楽曲とのミスマッチが際立っている印象。編曲は石川鷹彦が担当。『マザースカイ』以来の起用となります。シンセサイザー重視はもちろん、ストリングスもふんだんに取り入れており、クッキリ、キラキラとした80年代アレンジ(テクノポップ、ディスコサウンドにも近い)に仕上がっています。一部トーキングボックスも使用しており、SF映画のような趣に。「当時の最先端だった」と擁護するしかない状況で、古臭さは否めないアレンジとなっています。歌詞は相変わらずの世界観ながら、曲とのミスマッチは歴然で、歌がサウンドから浮いている印象。従来の作風に近い、シンプルなアレンジの「球根栽培の唄」辺りがハイライト。

球根栽培の唄
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