Fleece/Voyager

Fleece/Voyager
2017年カナダ
『どんよりスペーシーなプログレ・サウンドに爽やかコーラスが舞う』

 ピンク・フロイドや中期ビートルズを想起させるファンタジックでスペーシーなサイケ・サウンドが特徴。変拍子を多用するプログレッシヴな音楽性は、クラシック・ロック・ファンにも受け入れられそうなもの。
fleece-voyager.jpg

 カナダのモントリオールで2014年に結成されたロック・グループ、フリース。シンセサイザーとキーボードによる鍵盤二人体制の5人組です。本作は2ndアルバム。サイケデリック、ジャズ、グランジをブレンドしたロック・サウンド、と自身のページでは標榜しています。映像を想起させる幻想的なキーボードの絡み合ったサウンドも特徴で、先に挙げたようにピンク・フロイドやイエス、キング・クリムゾンなど、プログレッシヴ・ロックからの影響が伺えます。ベース、ドラム共に乾いており、エレクトロのような無機質さが印象的。このリズム隊のおかげで複雑なメロディーが続いても全くブレない芯が通っています。透明感のある高音ヴォーカル、厚みのある爽やかなコーラス・ワーク共に見事。強固なバンド・アンサンブルにより、重厚なプログレッシヴ・ロックを楽しむことが出来ます。重厚さから来る重々しさの他に、内省的な暗さが全編から漂うこともポイント。

Fleece.jpg

 一方で美しく柔らかいメロディーが散りばめられた楽曲ながら、難解な展開が祟ってあまり頭に入ってこないのはマイナス・ポイント。

Fix It Together
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ カナダロック

Procol Harum/Novum

Procol Harum/Novum
2017年 イギリス
『ファーストのジャケ・オマージュとは裏腹に骨太な内容』

 新作のジャケット・デザインはファースト・アルバムのイラストを参考にしたとのことで、原点回帰の匂いがプンプンします。安直だなぁ、と思いつつもこういう仕掛けをされると聴いてみたくなります。
procol_novum.jpg

 プロコルハルムは、オルガンを軸としたクラシカルなロック・サウンドが特徴の英ロック・グループ。1960年代に結成、ロック黄金期となる1970年代にいくつかの名盤を残しています。邦題「青い影」で知られる代表曲「A Whiter Shade Of Pale」は日本でも人気があり、それが収録されているのが本作のオマージュ元となったファースト・アルバム(1968年発表)でした。またユーミンが初期に影響を受けていたことに言及しており、2012年にはジョイント・ツアーによる来日が実現しています。
Procol-Harum.jpg

 近年のプロコルハルムの事情については疎いのですが、2003年に発表したアルバム「Wells On Fire」以来、14年振りのアルバムとのこと。オリジナル・メンバーはヴォーカル兼ピアノ奏者のゲイリー・ブルッカーのみで、ジミヘン・フォロワーのギタリストとして知られるロビン・トロワーや、初期作品でオルガンを弾いていたマシュー・フィッシャーなどの黄金期メンバーが不参加です。オルガン奏者にはジョシュ・フィリップスが加入しており、グループの特徴であるツイン・キーボード体制は維持されています。ロビン・トロワーの代わりとなるギタリストには、70年代、ジャズ・ロック・グループIFに参加していたジェフ・ホワイトソーンが起用。尚、目玉としてクリームの諸作で知られる作詞家、ピート・ブラウンが全面的に参加しています。

 本作の音楽性について。クラシック由来の荘厳な雰囲気とブルース・ロックが混ざり合った個性がファーストの魅力だとすれば、それは再現出来ていません。最大の要因はオルガンでしょう。各曲のイントロではクラシカルな味わいを演出しておきながらすぐ引っ込んでしまうのは物足りません。ほのぼのとしたパブ・ロック的なブルース、ロックンロール・ナンバーが多く、『A Salty Dog』や『Home』を彷彿とさせる作風。ジャケットから受ける印象とは異なるものの渋いブリティッシュ・ロックが楽しめるアルバムです。骨太で泥臭いバンド・サウンドはおじいちゃんバンドとは思えないパワフルさ。そして、塩辛い歌声に変貌したゲイリー・ブルッカーのヴォーカルが表情豊かで素晴らしい。

 また、質の高い楽曲群が揃っていることもポイント。黄金期を支えた主要ソングライターの二人が去っている状況で期待値が下がっていたのでうれしい驚きでした。さすが、ソロとしてのキャリアも長いゲイリー・ブルッカー。見直しました。
Soldier
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ イギリスロック

Albert Lee/Hiding

Albert Lee/Hiding
1979年 イギリス
『カントリー愛全開のほのぼのアルバム』

 1978年、エリック・クラプトンのバンド・メンバーとして迎えられたギタリスト、アルバート・リーが、その翌年に発表した初のソロ作。
img_0.jpg
 
作品は、プロデューサーであるブライアン・エイバーンのつてでエミルー・ハリスのバンド・メンバー(ホット・バンド)が集結したアメリカ録音、古巣であるヘッズ・ハンズ&フィートのメンバーをバックにしたイギリス録音からなっています。

 バンド時代は自作曲に拘っていた彼ですが、ここではカバー曲も多く採用。チャス&デイヴの提供曲、エミルー・ハリスの作曲パートナー、ロドニー・クロウェルの提供曲の他、ルーヴィン・ブラザーズ、ダイアー・ストレイツなどのナンバーが収録されています。

 早弾きギタリストでもあるアルバート・リー。もちろん流麗なブルース・ギターを堪能出来るのですが、どちらかと言えば、ゆったりとしたリズムに程よく枯れた歌声が乗るレイドバックな味わいが特徴です。

 エミルー・ハリスの艶やかなハーモニー、軽快な演奏が楽しめる良いアルバム。2016年に再発されています。

Billy Tyler
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ イギリスロック

ALICE COOPER/BILLION DOLLAR BABIES

ALICE COOPER/BILLION DOLLAR BABIES
1973年 アメリカ
『ドノヴァンとのデュエットが貴重』
 
 2011年にリマスターされたアリス・クーパーのカタログ。これを日本盤で揃えようと思うと、紙ジャケ盤かタワーから限定で再発された廉価盤か、選ぶことになります。アリス・クーパーの紙ジャケは仕掛けが凝っていて楽しいのですが、如何せん高いのが悩みどころ。税込み3200円にプレミアが付いて3900円くらいが相場になっています。しかしタワーの廉価再発も見逃してしまったので、こちらで集めるしかない状況。ワーナーの「FOREVER YOUNG」シリーズにラインナップされる日を待つという手が一番賢明なのかもしれません。

 前回は『Eighteen』のレビューを書きました。今回は『School’s Out』を飛ばして『BILLION DOLLAR BABIES』について書こうと思います。本作は移籍後4枚目のアルバム。ブラスやストリングスが煽る派手なアレンジは演劇調で、アリス・クーパーの個性が確立されています。マーク・ボラン、キース・ムーンが参加しているとのことで、鋭いギター、太いドラムなど、うねるロック・サウンドにはブリティッシュ・ロックの影響が感じられ、彼らの後押しがあったのでしょう。例えば「Unfinished Sweet」はクィーンを彷彿とさせます。
Alice_Cooper_-_Billion_Dollar_Babies.jpg

 ハイライトはドノヴァンとのデュエットが聴けるタイトル曲。アリス・クーパーと渡り合う怪人振りを披露しているドノヴァンが素晴らしい。この曲を含め、作曲面ではポップ且つ無駄が無く派手な曲が並んでおり、完璧な出来。さすが名盤です。リマスターの効果も絶大で、ハッキリクッキリ聴こえます。初期にCD化されたタイトル群が如何にダメな音質だったか改めて思い知りました。

Elected
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ アメリカロック

META META/MM3

META META/MM3
2016年 ブラジル
『ジャズかブラジルかプログレかはさておき、この混沌は凄い』

 妖しさたっぷりに物語を紡ぐ女性ヴォーカル、ブルージーにしてアンダーグラウンドなギター、暴れまわるサックス。70年代アンダーグラウンドのような混沌としたサウンドが魅力のアルバムです。めためた、という言葉の響きはかわいいのですが、音楽性はかなりシリアス。

 まずこのジャケが強烈。
capa_mm3_alta.jpg
イサカを思い出してしまいました。
Front Cover001 copy
だがしかし、彼らはブラジルのグループ。女性ヴォーカルのジュサーラ・マルサル、ギタリストのキコ・ヂヌッシ、サキソフォンのチアゴ・フランサによるトリオで2008年に結成され、2011年にデビューしています。これまで3枚のアルバムと1枚のEPを発表。本作は4thアルバムとなります。先入観でプログレ・バンドだと勘違いしていましたが、彼らはジャズ畑で活躍しているミュージシャンが集まったバンドで、ジャズ・グループとして活動しているようです。初期の作品は一部輸入盤ショップなどでレビューもされており、それによるとアフロ・ジャズ的な音楽性で、コルトレーンにも影響されているとのこと。
mm3.jpg

 さて本作の内容について。本体である彼らトリオに加えて、キーボード、ドラムが参加しています。ドタバタしたドラムを加えたサックス、ギターが絡むバンド演奏はとにかく不穏でダーク。女性ヴォーカルによる妖しい語り口も絶妙で、改めて聴いてみてもやはり英アンダーグラウンドのような音楽性だと実感出来ました。躍動するリズム辺りにブラジルらしさを感じることが出来ます。ムタンチスに共通する熱気を発しているロック・バンドだと思います。

Mano Légua
続きを読む(動画があるよ) » 関連するタグ ブラジルジャズロック