Lauren Ivy & The Engine/ Soul Kit EP

Lauren Ivy & The Engine/ Soul Kit EP
2017年 イギリス
『ブリティッシュ・ブルース・ロックの新星』

 「朝日のあたる家」をオルガン・ギンギンで、たそがれカバー。ヴォーカルは女性で感情たっぷり。当ブログではフルアルバム重視で普段あまりチェックしないEPだけれども、これは聴くしかないでしょう。
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 チャンネル諸島にあるジャージー島で結成された4人組、ローレン・アイヴィー&ジ・エンジン。2015年から活動を開始、当初からこれまで、クラブなどでブルースやソウルのカバー曲を演奏して過ごしているとのこと。左腕にド派手なタトゥー(ブリティッシュな柄です)を施した華やかなローレンと、もさいおじさんという対比を成すルックスが受けて地元では人気を博しているそうです。今回は彼女達の曲が映画『アナモルフォシス(Anamorphosis)』で使用されることになり、それに合わせてEPを制作。上記の「朝日のあたる家」はカバーですが、他4曲は(「Frankie And Johnnie」なんて曲もありますが)オリジナルです。
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 ローレンのタトゥーを含むルックスはもちろん素晴らしいのですが、嗄れ声での情熱的な歌唱も劣らずに素晴らしい。加えてモッズを彷彿とさせるブイブイに揺れるオルガン、クリーンなソロを披露するブルース・ギター、腹にドスドス来るリズム隊とバックの演奏も文句なし。オリジナル曲は総じて60年代ルーツを感じさせるもので、シャッフル、退廃的なミドル・ナンバー、ピアノ・バラードと多彩です。挨拶代わりの一枚ということでしょう。彼らはエレクトリック・ブルースをやっているとFACEBOOKで表明していますが、この曲数ではまだそこまで明確に見えて来ません。確かに英ブルース特有の熱と粘り気は感じられますが。。。真の個性が明らかとなるフル・アルバムを待ちたいと思います。

Soul Kit - Lauren Ivy and the Engine
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Balto/Strangers

Balto/Strangers
2017年 アメリカ
『よそものとして自身のルーツを探求する』

 引退してしまいましたが、把瑠都というお相撲さんがいました。あの方の名前は自身の故郷である旧エストニアが面していたバルト海から取られたものだそうです。そして本日、ご紹介するバルトというグループ。そのリーダーであるダニエル・シャロンはシベリア(ロシアの南東部)にある、バイカル湖のほとりで生まれ育ったとのことで、やはりバルト海からグループ名を取っています。(バイカルでも良かったのでは、と思わなくもない)

 幼少期をシベリアで過ごしたダニエルは、オレゴン州ポートランドへ移住。そこで2010年に結成された4人組のグループがバルトです。アメリカーナのルーツを探求しているダニエルが音楽性をリードする形でファースト・アルバムを完成させました。オレゴン州にある農業島(田んぼとかしかないのかな)のスタジオを発見した彼らはそこに数多くの楽器を持ち込み、9日間籠って作り上げたとのこと。アルバムでの音楽を「Mercurial(気まぐれな)」アメリカン・ロックンロールと命名しています。
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うーん、このジャケだと中古新入荷でエサ箱漁っててもスルーしちゃいそう。

 メンバークレジットにはありませんが、鍵盤が大活躍しています。ギター、鍵盤ともに残響のある高音が印象的な、抜けのいいアメリカン・ロックをやっており、この辺りは看板通りのサウンド。ただダニエルの出自が影響しているのか、メロディーには哀愁が漂っており、とにかく湿っぽい。アメリカ特有のカラッとしてサウンドとは一線を画しています。隙間が多く、土着的な雰囲気を醸し出しているのも特徴です。これがシベリアの風土なのかは分かりかねますが、異邦を感じるのは確か。感傷的にコブシを回すヴォーカルが素晴らしい。
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 ダニエルはシベリアで孤独な幼少期を送っていたそうです。その後、アメリカに渡ってからはアメリカーナを探求するほどアメリカの音楽を愛しつつも、いざ表現するときには自身のルーツであったシベリアの音が混ざってしまうことに気が付いたのでしょう。そして吹っ切れたタイトル『Strangers』。だからこその個性が発揮されています。次回作が楽しみ。

Balto - Shots In The Dark
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Heads Hands & Feet/ Heads Hands & Feet

Heads Hands & Feet/ Heads Hands & Feet
1971年 イギリス
『沼に片足を』

 マッスル・ショールズ・スタジオ誕生から2年を経た1971年。イギリスにもじわじわと浸透してきたスワンプ・サウンド、その洗礼を受けたミュージシャン達。彼らが生み出すことになるブリティッシュ・スワンプの作品群、その最初期にあたるグループがヘッズ・ハンズ&フィートです。

 今日、エリック・クラプトンのツアー・ギタリストとしても知られるアルバート・リー、チャス&デイヴとして活躍することになるチャス・ホッジズなど、当時から腕利きのセッション・プレイヤーとして知られていたメンバー達が結成したグループ、ヘッズ・ハンズ&フィート。そのデビュー作です。
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 先に書いたように彼らはスワンプからの影響を色濃く反映した音楽性を持っていますが、前身グループではサイケ・ポップをやっていたりと基本的に流行に敏感であり、一山当てたいという野心が分かりやすいグループです。本作でもブルース、R&Bというスワンプ要素だけでなく、フォーク、カントリー、ジャズ・ロックなどの要素が混在。まさにファーストらしい取っ散らかり具合ですが、アメリカ南部へのリスペクトという筋は通っています。歌唱、演奏共に申し分なく、アメリカ憧憬の奥から侘しさが滲み出るイギリス出身グループならではの音楽が楽しめるアルバム。

 永らく、音質の悪いシー・フォー・マイルズ盤で我慢して来た本作ですが、2016年にSHM-CDにて再発されています。

Country Boy
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Python Lee Jackson/In A Broken Dream

Python Lee Jackson/In A Broken Dream
1972年 オーストラリア
『ロッド・スチュワートが3曲で参加』

 フェイセス加入前のロッド・スチュワートが3曲で参加、という文言がインパクトを放つ!高校生の頃、ラジオ番組パワー・ロック・トゥデイでこのアルバムを知り、大学生の頃、西新宿の中古レコード店で発見して購入。(プレミアは付いていませんでした)そして2016年、遂にCD化されました。
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 以下、ヴィヴィッドの解説を参考にして簡単なプロフィールをどうぞ。1965年にオーストラリア、シドニーで結成された4人組グループ、パイソン・リー・ジャクソン。当初はオーストラリアで活動していましたが、メンバーの半分がイギリスだったこともあり、1968年にはイギリスへと活動拠点を移すことになります。ロッド参加の経緯は、ヴォーカルを務めるベントリー自身が、既にソウル系ヴォーカリストとして実力が知られていたロッドに3曲歌ってもらうように頼んだとのこと。そちらはシングルとしてリリースされたものの、バンドは程なく分裂状態へ移行。ヤング・ブラッド・レーベルのミキ・ダロンが中心となって、メンバーを集結させて録音した音源を合わせて発表したのが本ファースト・アルバムです。

 オーストラリア時代にはサム&デイヴやカーティス・メイフィールドのカバーをシングルとしてリリースしていたパイソン・リー・ジャクソン。本作での音楽性もソウル度が高いです。ベントリーの書く曲はソウルフルでブルージー。泥臭く暑苦しいナンバーが並んでいます。ロッドの他、ゲイリー・ボイルも参加しており、オーストラリアのグループですが、イギリス主導のアルバムと考えて問題ありません。ロッド参加曲は文句なしにカッコよく、ショットガン・エクスプレス(←これ、インスト曲でした)でのパフォーマンスを彷彿とさせます。一方でそれ以外、グループ主導の音源はどうしてもインパクトで数段落ちるのが正直な所。悪くはないソウル要素を含むブルース・ロックではあります。エクスペリエンスの「Hey Joe」みたいな曲もあったりするのはご愛嬌。アルバムとしてのまとまりに欠けるものの、ロッド・スチュワートが好きであれば、一度は聴いておくべき一枚です。

Doing Fine
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DAVE KELLY/DAVE KELLY

DAVE KELLY/DAVE KELLY
1971年 イギリス
『枯れたブルース・ギターと渋いヴォーカルが炸裂』

 ザ・ブルース・バンドのリーダーであり、ジョン・ダマー・ブルース・バンドのギタリストとして活躍していたデイヴ・ケリーがジョン・ダマー・ブルース・バンド脱退後に発表したセカンド・ソロ。前作のレビューはこちら
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 セッション・メンバーにはジョアン・ケリー、セッション集団ランプルスティルトスキン、そしてピーター・グリーンが変名で参加しているとのこと。その他、デイヴ・ケリーのブルース仲間と、ジャズ系プレイヤーも参加しています。

 相変わらず当時24歳とは思えない、枯れたブルース・ギターと渋いヴォーカルが炸裂しています。今回のソロ作はバンド録音がされており、前作よりも聴きやすい印象。ロックがカラフルで多様化していた1971年という時代を反映して、ブルース・ロックのみならずフォーク・ロック、ファンクにも挑戦しており、バラエティー豊かな楽曲群となっています。色々と手を出しているとは言え、どれも後追いで聴いてみると伝統的なものばかり。セッション・プレイヤー達の時にシリアス、時に熱狂的な演奏もあり、ジョン・ダマー・ブルース・バンドから続けて聴いても違和感なく楽しめるアルバムだと思います。「朝日のあたる家」のようなハードボイルドなブルース「The Fields Of Night」ではピアノが幻想的に舞っており印象的。このような細やかなアレンジも聴きどころ。

Green Winter
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