見汐麻衣/うそつきミシオ

見汐麻衣/うそつきミシオ
2017年 日本
『揺らめきが心地よく聴いていることを忘れる』

 埋火というバンドが好きで、それが解散してからは中心人物である見汐麻衣が結成したマナーズをチェック。しかしながらその後、音沙汰が無く、久しぶりに届いたのがこのソロ・アルバム。

 彼女自身の歌とメロディーは、日本の童謡や唱歌に由来する親しみやすさ、懐かしさを持っています。特に少し掠れる高音は寂しさが強調されて印象的。ジャズ、プログレの影響を感じさせる楽曲はこちらの予想を裏切るような凝った展開のものが多く、前述の親しみやすさと対比を成しています。結果、振り回されながらグイグイと引き込まれていく不思議な魅力を持った音楽として、これまで楽しんできました。

 マナーズの特徴であったジャズ要素はそのまま、ジャズ・ヴォーカルの方へと音楽性を滑らせたような印象のアルバムです。エコーなどのサイケデリックなアレンジが無い為、ともすれば埋まってしまいがちであった彼女の歌声がすっきりと聴こえるのが気持ちいい。主にシンセサイザーから醸し出される浮遊感、気怠さは健在です。

 一方で生音によるバンド・サウンドが強調されていて、グルーヴ感が増しているのがポイント。ソウル、ジャズ、サイケが一体となっていよいよ混沌としているはずですが、聞き心地は軽やか。ブイブイ唸るベースにカッティングギターが入り、キラキラしたキーボードが踊る、みたいなAORナンバーが多く収録されているのに関わらず、相変わらず不安定で引っ掛かりを持っているところが凄い。
意表を突く曲展開を控えめにして、ダークなムードを大切にしています。

聴きはじめるときは集中していながら、いつの間にか、浸っていて終わった時に我に返るような音楽。思えばこれまで彼女がやってきた音楽もそういうものだった気がします。

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夜が迫る街に溶け込んでいく、みたいなジャケも音楽性を表していると思います。


はなしをしよう
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鳴海寛/僕は詩つくり

鳴海寛/僕は詩つくり
2017年(1975~1978) 日本
『爽やかで儚いポップ・ミュージック』

 自分は東北新幹線というデュオのメンバーとしてしか、鳴海寛というミュージシャンのことを知りませんでした。今回、彼のソロ音源をまとめたアルバムが出ることを知り、興味を持ったのは、東北新幹線の唯一のアルバムを何度も聴いていたからです。今回、アルバムの解説を読むことで東北新幹線解散後、frascoというグループで活動してアルバム3枚をリリースしていることや、山下達郎のライブ・ツアーに参加していたことを知りました。残念ながら2015年に鳴海氏は亡くなられたとのこと。しかし生前に許可を得ていた70年代の発掘音源である本作はめでたくリリースされました。
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 ボサノヴァやゴールデン・ポップスの流れを汲む、爽やかで儚いポップ・ミュージックをやっています。丁寧に一語一語発せられるファルセットのヴォーカル、たおやかな女性コーラス、キラキラしたキーボードなど、AORの影響を感じさせる洗練されたアレンジの合奏が素晴らしい。尚、4曲目ではギターに水谷公生が参加。

 発掘音源だけに一部の録音状態はラフです。

 今回発掘された楽曲の完成度は素晴らしく、改めてファンになってしまいました。これは関連音源を集めなければ!

2017年6月28日発売 鳴海寛NEW ALBUM『僕は詩つくり』より
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Una Healy/The Waiting Game

Una Healy/The Waiting Game
2017年 イギリス
『最近見かけなくなった、普通のガール・ポップ』

 一見すると「原宿を歩いていそうなギャルが好きそうな感じのケバいポップス」をやっていそうなイメージ。ほら、『NOW』とかに入っていそうな感じというか。(※偏見に満ちています)実際、溌剌としたガール・ポップでしたが、どっしりと落ち着いた曲調と清涼感のあるヴォーカルは予想外。ベリンダ・カーライルやウィルソン・フィリップスなど、80年代~90年代のガール・ポップを彷彿とさせます。
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 ウナ・ヒーリーは1981年生まれの35歳。アイルランドのサーリス出身です。シンガーコンテストを経て、2000年代にサタデーズというガール・グループで活躍。その頃から作曲活動を開始。2014年にグループが活動休止することを受けて、ソロとしての作品制作に取り掛かっています。そして出来上がったのが本作です。イギリス方面では支持を集めているようで、アイルランド、イギリス、スコットランド、全てのチャート上位(12~28位)に食い込んでいます。

 ハキハキとした発声、躍動感があり、加えて爽やかな歌声はさすがコンテスト出身者。バンド・セットにストリングスを少し加えたサウンド、王道のガール・ポップ、という内容で刺激は少なめながら、クオリティは十分です。

Una Healy/The Waiting Game
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YMCK/FAMILY SWING

YMCK/FAMILY SWING
2017年 日本
『手を変え品を変え6枚目』

 周期的に猛烈に聴きたくなる時期があるYMCK。その周期に入ったので最新作をご紹介いたします。6枚目のアルバム。
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 ジャズをテーマとしており、また二組の宝石泥棒同士による宝物争奪戦というストーリーを組み込んだコンセプト・アルバムになっています。8ビット・ミュージックから想起するイメージでは、制約が多くアイデアが広がりそうにないと考えてしまいます。しかし、今回も新しい切り口で新鮮味を出してくるのはさすが先駆者だと思います。

 ジャジーになった音楽性で、8ビットなのに、というべきか『FAMILY DANCING』辺りから増してきているグルーヴ感が本作でも健在で素晴らしい。元々、ジャズへの愛情があるからこそ。なのでしょうがブラス隊などを加えずともビッグバンド調のメロディーを多用してジャズの雰囲気を出しているのは職人気質を感じさせます。

 ささやくような女性ヴォーカルの歌声は相変わらず魅力的。今回は歌詞がストーリーになっているので、語り部としての役割も大きいのですが電子音が飛び交う中でも、一つ一つの単語が聴き取りやすくバッチリ、ストーリーが把握できました。

 ただ歌詞が冗長で説明的になり過ぎている箇所があるのが、気になりました。抑揚を抑えたヴォーカルなので、こういう時にとて
も「説明してくれている感」が出てしまっています。
この辺は、絵本のようなブックレットを眺めながら聴く分には問題になりません。

 全体的には密度の濃いピコピコ音のシャワーを浴びることが出来て満足です。

YMCK / 輝きよわたしの手に from FAMILY SWING
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BELINDA BELL/WITH OUT INHIBITIONS

BELINDA BELL/WITH OUT INHIBITIONS
1972年 イギリス
『ド派手な映画音楽のようなジャズ・サウンドがアツイ』

 サンシャイン・ポップ系ソフト・ロックの人気作であったセカンドは、2012年に再発された際に入手していました。一方でこちらのファーストは2014年に再発(共にBIGPINKより)されていたのですが、どんな内容か全く知らなかったので長らく放置していました。

 ベリンダ・ベルはイギリスのポップ・シンガー。デビュー前にはスウェーデンで音楽活動をしていたようで、本作もスウェーデン録音がされています。作曲はしない専任歌手であり、本作ではウロデック・グルゴウスキーが作曲とアレンジを担当。ウロデック・グルゴウスキーはスウェーデンで活躍するジャズ系鍵盤奏者とのことで、この時点で自身の名義でアルバム・リリースを果たしています。
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 ジャズ系プレイヤーが集まっての録音。実際、ジャジーではあるものの、ストリングスはてんこ盛りであり、ドラムがかなりタイトで、映画音楽寄りのハッタリ満点な作風が特徴です。表情豊かに歌い分け、主張の激しい演奏陣に負けないパワフルな声量を持つベリンダ・ベルのヴォーカルは素晴らしい。ストリングス・アレンジは、21世紀に聴くと古臭さが目立つ印象。とは言え、ファーストとは異なるノスタルジックな魅力を楽しむことが出来ます。

Delivery Of Love
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