マジペパ/テル・ディスコ

マジペパ/テル・ディスコ
2017年 日本
『キラキラしたポップスで、オリエンタル要素もあり』

 NONA REEVESの西寺郷太と口ロロの村田シゲによる新しいバンド、という情報を聞きつけ、予約した1枚です。ただ、そういう認識でいたからか、16歳のフロント・ガール、吉田凛音の魅力を前面に押し出した音楽性に面食らってしまい、馴染むのに時間が掛かりました。
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 吉田凛音はアイドル畑出身のシンガー。ソロ活動開始後からプロデュースで参加していた西寺郷太が吉田凛音のバンドとしてメンバーを集め、マジペパと命名された。というのが経緯のようです。7人編成。

そんな経緯も知らず、帯裏の「マジペパは2020年代の『フリートウッド・マック』目指すで」の文字を発見した自分は、「これは80年代のフリートウッド・マックみたいにキラキラしたポップスで、オリエンタル要素もあり、みたいなことかな。」とか楽しみにしていました。

マジペパを聴き込んで馴染んだ今、確かにオリエンタル要素があるキラキラ・ポップだな、と感じています。プログラミングを多用した近未来的なサウンドは正に2020年代という感じであり、西寺郷太と村田シゲの合体の成果を感じることが出来ます。吉田凛音の表情豊かで溌剌とした歌唱も魅力的。また作詞は西寺郷太が全曲担当しているものの、曲はメンバーを中心に複数人で作っています。結果、バラエティーに富んだ内容になっていることはもちろん、クオリティーも素晴らしいことに驚きました。特にギターの山形氏はメインでI HATE MONDAYSというバンドをやっているとのことなので、チェックしなければ。

備長炭
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Entrance/Book Of Changes

Entrance/Book Of Changes
2017年 アメリカ
『土着的であり宇宙的』

 ピアノ、シンセ、ギターが溶け合うソフトなサイケデリック・サウンドに掠れた裏声が乗る。幻想的なストリングスもあり。爽快感十分。

 エントランスはガイ・ブレイクスリーによるソロ・ユニット。ガイはバルティモアを拠点とするグループ、The Convocation Of…のメンバーとして音楽活動をスタートしています。サイケデリックなハード・ロックを演奏していたバンドでしたが、2枚のアルバムを発表後、解散。その後、シカゴへ移り、エントランス名義を名乗ってソロ活動を開始。2003年のデビュー作以来、5枚のアルバムを発表しています。アメリカのカントリー、フォークをサイケデリックと掛け合わせる手法で、アシッド・フォークやネオアコのような作品を指向しているシンガーソングライターです。本作は6枚目のアルバム。
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 掠れた裏声は時に朗々と響き、トラッド的。ギターのつま弾かれる様も素朴。アメリカン・ルーツは濃厚です。一方でシンセ、ストリングスが幻想的なサイケ要素を担っているわけですが、こちらはとても立体的。カントリー、トラッドの持つ田舎臭さをセンチメンタルな装飾で消しているのがポイントです。

 土着的でありながら宇宙も感じさせる音楽。アルコールでもトリップ出来そうです。

ENTRANCE - Always The Right Time (Official Audio)

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Amber Gomaa/Moonchild

Amber Gomaa/Moonchild
2017年 オランダ
『アフリカ、ディスコ、プリンス、マイケルが詰まっています。』

 スペーシーでシアトリカル。シンセとギターが生み出す宇宙を縦横無尽にヴォーカリーズが飛び交う。更に中近東、中華など入り乱れる民族音楽色による雑多なイメージがエネルギッシュに音楽を彩っています。

 オランダ、アムステルダムを拠点に活動する女性SSW、アンバー・ゴマー。オランダ人とエジプト人のハーフです。2015年よりネットを通じて音楽活動を開始しており、本作は恐らくセカンド・アルバムとなります。彼女のフェイスブックによると、影響を受けた音楽として80年代音楽を挙げており、特にプリンスへのリスペクトが大きかったとのこと。またポール・サイモンの1986年作『グレイスランド』からインスピレーションを得たとも記述されています。『グレイスランド』はポール・サイモンの代表作にして問題作。南アフリカのミュージシャン達との共演により、アフリカン・ミュージックを大胆に導入した素晴らしい音楽です。
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 そして出来上がったアルバムがこちら。プリンス、マドンナ、アフリカ音楽、ドナ・サマーなどの要素が混ざり合い、濃厚な音楽が完成しました。デジタル・ビートとシンセを中心としたアンサンブルはすっきりしており、吐息がセクシーな透き通ったヴォーカルと相性抜群。メンバーにコーラス二人を加えており、前述した通り広い空間を感じさせるヴォーカリーズを実現させています。遊園地のような煌びやかな音楽なのですが、リズムがどっしりとしており整合性は取れています。

Who's Loving You
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土岐麻子/PINK

土岐麻子/PINK
2017年 日本
『21世紀シティポップにも慣れてきた』

 帯には21世紀シティポップの決定盤の文字があり、今回のアルバムも安心して聴けそうだと分かります。今年、上半期に繰り返して聴いていた3枚のうちの1枚です。日本の女性SSW、土岐麻子の新作。過去作レビューはこちら
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 プロデュースと楽曲提供者としてトオミヨウを起用。自分は勉強不足で今回、初めて知った方です。ピアノを切っ掛けとして作曲を始め、現在はアレンジやツアーサポート、映画音楽、舞台音楽の制作で活躍されているとのこと。全10曲で2曲はG.RINAが作曲しています。作詞は本人が担当。

 ストリングスやギターは入っているものの、今回のアルバムも打ち込み重視のサウンドです。ただ、これまでのアルバムでは「これが全部生音だったらなぁ。」とか頭を掠めていたのですが、今回は全く動じませんでした。ピアニストのプロデューサーということで、キラキラした鍵盤を活かした、爽やかで透き通ったサウンドが印象的。そして何より曲が素晴らしい。各曲それぞれ、性格付けがハッキリしていてバラエティに富んでいます。また、歌詞に関しては、存分にフェミニズムを発揮されているものの、前作で免疫が出来たのか、すんなり聴き通せました。

土岐麻子 / PINK
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San2 & His Soul Patrol/Hold On

San2 & His Soul Patrol/Hold On
2017年ドイツ
『ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースを思わせるロックンロール回帰グループ』

 ファスト・チューンでの躍動感、バラードでの艶っぽさ、共に見事に歌い上げるリード・ヴォーカルのサンツー(san2)をフロントに据えた、ソウル&ロックンロール・グループをご紹介。
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 ドイツ、ミュンヘンを拠点に活動しており、2011年頃にリーダーのサンツーを中心として結成されています。ブラス、鍵盤入りの5人編成。サンツーはサンフランシスコ、アムステルダム、ロンドンへの音楽留学を経験。フェイスブックの「影響を受けたミュージシャン欄」には以下の記載がありました。Junior Wells, Buddy Guy, Billy Preston, James Cotton, Michael Jackson, Aretha Franklin, Sam Cooke, James Brown, Little Richard, Jamie Cullum ブルースやロックンロールも抑えた王道ソウル・ファンと言えるでしょう。2枚目となる本作のプロデューサーにはジェフ・ガスコインを迎えています。ジェイミー・カラム、ジョージィ・フェイム、ヴァン・モリソンとの共演で知られるベーシストですが、アレンジャーとしても活動しているようです。プロデューサーとしての仕事は知られていませんが、ジェイミー・カラムをリスペクトしているサンツーが依頼したのでしょう。
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 ブラスが入っていますが厚みよりも軽快さを重視したアンサンブル。ギターは渋いブルージーなプレイを聴かせてくれます。リズム隊はアタックが強烈。他にジャジーなオルガン、ハーモニカ(サンツーはハーモニカ奏者として国際的な賞を受賞しています)という構成。サンツーのヴォーカルのおかげか、かなり熱のこもった演奏にも関わらず、爽やかな聴き心地です。曲はブルース、ソウル、ロックンロールを下地にしつつもかなりポップな出来栄え。音楽留学経験があるためか、ドイツらしい暗さ、重苦しさは皆無。ルーツがしっかりしたオーソドックスなナンバーが多いです。

Julie
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