土岐麻子/PINK

土岐麻子/PINK
2017年 日本
『21世紀シティポップにも慣れてきた』

 帯には21世紀シティポップの決定盤の文字があり、今回のアルバムも安心して聴けそうだと分かります。今年、上半期に繰り返して聴いていた3枚のうちの1枚です。日本の女性SSW、土岐麻子の新作。過去作レビューはこちら
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 プロデュースと楽曲提供者としてトオミヨウを起用。自分は勉強不足で今回、初めて知った方です。ピアノを切っ掛けとして作曲を始め、現在はアレンジやツアーサポート、映画音楽、舞台音楽の制作で活躍されているとのこと。全10曲で2曲はG.RINAが作曲しています。作詞は本人が担当。

 ストリングスやギターは入っているものの、今回のアルバムも打ち込み重視のサウンドです。ただ、これまでのアルバムでは「これが全部生音だったらなぁ。」とか頭を掠めていたのですが、今回は全く動じませんでした。ピアニストのプロデューサーということで、キラキラした鍵盤を活かした、爽やかで透き通ったサウンドが印象的。そして何より曲が素晴らしい。各曲それぞれ、性格付けがハッキリしていてバラエティに富んでいます。また、歌詞に関しては、存分にフェミニズムを発揮されているものの、前作で免疫が出来たのか、すんなり聴き通せました。

土岐麻子 / PINK
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San2 & His Soul Patrol/Hold On

San2 & His Soul Patrol/Hold On
2017年ドイツ
『ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースを思わせるロックンロール回帰グループ』

 ファスト・チューンでの躍動感、バラードでの艶っぽさ、共に見事に歌い上げるリード・ヴォーカルのサンツー(san2)をフロントに据えた、ソウル&ロックンロール・グループをご紹介。
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 ドイツ、ミュンヘンを拠点に活動しており、2011年頃にリーダーのサンツーを中心として結成されています。ブラス、鍵盤入りの5人編成。サンツーはサンフランシスコ、アムステルダム、ロンドンへの音楽留学を経験。フェイスブックの「影響を受けたミュージシャン欄」には以下の記載がありました。Junior Wells, Buddy Guy, Billy Preston, James Cotton, Michael Jackson, Aretha Franklin, Sam Cooke, James Brown, Little Richard, Jamie Cullum ブルースやロックンロールも抑えた王道ソウル・ファンと言えるでしょう。2枚目となる本作のプロデューサーにはジェフ・ガスコインを迎えています。ジェイミー・カラム、ジョージィ・フェイム、ヴァン・モリソンとの共演で知られるベーシストですが、アレンジャーとしても活動しているようです。プロデューサーとしての仕事は知られていませんが、ジェイミー・カラムをリスペクトしているサンツーが依頼したのでしょう。
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 ブラスが入っていますが厚みよりも軽快さを重視したアンサンブル。ギターは渋いブルージーなプレイを聴かせてくれます。リズム隊はアタックが強烈。他にジャジーなオルガン、ハーモニカ(サンツーはハーモニカ奏者として国際的な賞を受賞しています)という構成。サンツーのヴォーカルのおかげか、かなり熱のこもった演奏にも関わらず、爽やかな聴き心地です。曲はブルース、ソウル、ロックンロールを下地にしつつもかなりポップな出来栄え。音楽留学経験があるためか、ドイツらしい暗さ、重苦しさは皆無。ルーツがしっかりしたオーソドックスなナンバーが多いです。

Julie
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Thomas Azier/Rouge

Thomas Azier/Rouge
2017年
『暗くロマンティックなシンセ・ポップ』

 暗く寂しいメロディーによるシンセ・ポップが新鮮。中性的でロマンティックな作風はヨーロッパらしさが満載。ヴォーカルは芝居がかっており、デヴィッド・ボウイの影響を受けています。ドイツのSSW、トーマス・エイジャーのアルバムをご紹介。
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 トーマス・エイジャーは1987年、オランダのライデルドルプで生まれました。19歳でドイツのベルリンに移住。2012年(25歳)よりライブ活動を開始しています。ファースト・アルバム『HYLAS』を2014年に発表。本作はセカンドとなります。
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 フランスのパリで制作されたそうです。シャンソンの影響を受けたとのことで、それが冒頭のような(中性的でロマンティック)印象につながったのかもしれません。シンセサイザー、電子ビートを駆使したオーソドックスなシンセ・ポップですが、一方でピアノも同じくらい活躍しているのがポイント。しっとりとした味わいを加えています。透き通るようなファルセットを駆使したヴォーカルは、とても甘やか。とんとん拍子にキャリアを積み重ねているのも納得のインパクトを持っています。寂しく暗い曲が続くものの、耽美的な世界観が素晴らしく一気に聴けてしまいます。また、シンプルな構成の楽曲ばかりが揃っていることは、彼が優れたミュージシャンである証でしょう。

Winners
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Real Estate/In Mind

Real Estate/In Mind
2017年 アメリカ
『気怠さが強調された新作』

 のどかで夢見心地なネオアコ、ギター・ポップで人気を博しているグループ、リアル・エステート。前作から3年を経て4thアルバムが到着しました。
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 アメリカ、ニュージャージー州出身。2009年にデビューした5人組のポップ・バンドです。尚、今回メンバー・チェンジがあり、ギタリストのマット・マンダニルが脱退した代わりに、ジュリアン・リンチが加わっています。
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 前作の延長線上といえる作風で、気怠いヴォーカルとゆらゆらとした陽炎ギターは健在。ギタリストの交代を経ても軸はしっかりしています。そうはいってもマットは中心人物だったようで、その分ヴォーカルが存在感を増幅。インストパートは大人しめ(唐突に挟まれていたインスト・ナンバーも無し)で、ヴォーカルとコーラス、エコーによる気怠さがより強調されている印象です。インスト・パートではピンク・フロイドっぽいサイケデリックなループを数か所で聴くことが出来、それは不穏でダークな雰囲気。気だるいというよりも鬱屈という感じです。こうなると不在だったマットのギターこそが、気怠くなりがちなバンド・サウンドに煌めきをもたらしていた、と気づかされる次第。

 それでも、どんよりとしたインスト・パートで前曲が終わった後のキラキラしたキーボードのイントロ、といったコントラストは素晴らしく、このアルバムの魅力だと思います。加えて、新加入ゆえの遠慮がジュリアンにはあったと思うので、次回作以降での新しい方向性に期待です。

Stained Glass
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Hajk/Hajk

Hajk/Hajk
2017年 ノルウェー
『アンニュイなa-ha、みたいな感じです。』

 男女混合グループならではのカラフルなコーラスと爽やかなメロディー。キラキラとした透明感のあるサウンドは正に北欧ならではのものです。ソウル、フュージョンの要素を加えたネオアコースティックの流れを汲むポップ・ミュージック。なんだか湿度が高くなってきたこの頃、清涼感をもたらす音楽としてちょうどいい感じ。
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 専任ヴォーカル2人(男女一人ずつ)を含むギターレスの5人組グループ、ハルク。オスロを拠点にして活動しています。詳しいバイオを探すことは出来ませんでしたが、2017年1月に初めて楽曲を発表したとのことなので、恐らくここ数年の間にデビューしたグループでしょう。これがデビュー・アルバムとなります。尚、本作は4月に発表されたものですが、日本でも7月にブリッジからリリースが決定済み。
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おっ、て思わせるジャケですよね。

 ギターレス(とは言え、数曲でアコギが登場します)ということで、男女コーラスとキーボードが活躍。儚く蜃気楼のようなコーラスはとても滑らかでさすが北欧と感じさせます。キーボードは透き通った高音ばかりではなく、低音も同時に鳴らして重層的な演奏が特徴。加えて前述通り、ブラック・ミュージックのセンスも併せ持っているので、スタイル・カウンシルのような洗練されたポップ・ミュージックが楽しめます。捻くれたメロディー展開が満載の楽曲群を、男女ヴォーカルがそれぞれ分け合って担当するので華やかで飽きが来ないアルバムとなっています。

 日本盤がリリースされるのも納得で、北欧ならではのキラキラ・ポップが好きならば是非聴いていただきたい。

Not Anymore
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