りりィ/南十字星

りりィ/南十字星
1980年 日本
『ドスを含んだ歌声がAORサウンドからはみ出るところも素敵』

 1970年代半ばからのポップス路線のりりィ作品。その終盤に当たるEMIでの最終作です。中古盤店でつまんだ『りりシズム』に、思いのほかハマっていたところ。そこに初CD化という報を受けては聴かずにはいられません。

 大部分の楽曲を国吉良一が担当している他、木田高介も2曲で参加。尚、本作は発売直前に亡くなった木田高介に捧げられています。
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 AOR度は更に高くなっています。スタジオ・ミュージシャンによる円熟の演奏による爽やかなアンサンブルが存分にフューチャーされており、バンドのアルバムのような趣があり。
なるほど、ライトメロウのシリーズで再発されることにも納得。所々、歌謡曲チックなストリングス・アレンジの曲があるな、と思っていたらやっぱり木田高介さんの曲でした。

 女の子向けアニメの主題歌をりりィが歌ったかのような、『風のランナー』はインパクト抜群。どっしりしたヴォーカル・パートから洗練されたシンセサイザー・ソロへと流れるところが気持ちいいです。

 この他にも70年代中期~後期に於けるりりィのアルバムがCD化されているそうなので、これを機に集めてみようと思います。生み出す雰囲気が好きだったのですが、この時期のアルバムを聴くといい曲を書くソングライターだったのだな、と再認識しました。
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Grace VanderWaal/ Just the Beginning

Grace VanderWaal/ Just the Beginning
2017年 アメリカ
『大人大活躍』

 アメリカンズ・ゴット・タレント2016年度の優勝者、グレイス・ヴァンダーウォールのデビュー作。アメリカンズ・ゴット・タレント、というのはアメリカのオーディション番組のことらしく、その名前から受けるイメージ通りの内容のようです。優勝した頃には12歳だったそうで、つまり本作をレコーディングしていた頃には13歳ということになります。
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 最初に聴いた時にはそのような情報は知りませんでした。オォォォォォ、というような詠唱(ヴォーカリーズ)を駆使したパワフルで清々しい歌唱、ピアノを土台にした大らかな楽曲群が魅力です。デジタル世代ですから、プログラミングやストリングスを被せているのですが、手拍子や自身の歌声、ピアノの音色といった生音を中心に組み立てていて素朴さを十分残しているのが素晴らしい。さすがにこの辺りの編曲は大人が関わっていると思います。一方でスケールが大きくドラマティックな展開になる曲が多く、13歳の新星らしからぬ「いかにもアメリカっぽい商業音楽臭」が鼻についてしまうところもあり。大人のプロデュースは功罪半ばといった感じです。

 13歳の新星sswのデビューと言われると、大人が介入しまくっているのでもやもやするところ。
しかしながら、全体的には元気なフェイストみたいな瑞々しい魅力があり、楽しめました。

Grace VanderWaal - So Much More Than This
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Poppy/Poppy.Computer

Poppy/Poppy.Computer
2017年 アメリカ
『ぴーおーぴーぴーわい、あいむぽっぴー』

 去年「いーすたーいーすたー」というきゃりーぱみゅぱみゅの曲が、仕事中にあまりにもヘヴィローテーションされすぎて、脳みそから離れなくなった体験をしました。(今年は無くて良かった!)それには及ばないものの、「ぴーおーぴーぴーわい、あいむぽっぴー。」という、この能天気なフレーズ、なかなかの脳みそこびりつき具合です。
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 ポピーは「コンピュータの中に住んでいるんだよ」などとのたまっておりますが、マサチューセッツ州ボストンで生まれた23歳の女性。歌手、作曲家、女優、ダンサーと多岐に渡って活躍しているそうです。平たく言うとタレントだと思います。幼少期よりマンハッタンのダンス・カンパニー、ロケッツに憧れを抱き、ダンスに夢中になっていたとのこと。ボストンの学校ではいじめを受けるようになり、その逃げ道として音楽の道を志すことになります。尚、彼女の父親はバンドのドラマーです。ポピーは2007年家庭の事情でナッシュビルに引っ越し、更に2009年、今度は自身が音楽活動をスタートさせるためにロサンゼルスへ移住します。2012年からソーシャルメディアを通じての音楽活動を開始。特にyoutubeでの活動で人気を集め、2017年本作でデビューすることとなります。

 正直、はっちゃけたお嬢さん、というイメージで見ていたので、自分で曲を作る人だと知って驚きました。さて音楽性ですが、彼女は日本文化からの影響を大きく受けており、音楽に於いても80年代から90年代に欠けてのテクノ歌謡からの影響が強いようです。何故そこに?という疑問は残りますが、確かに濃い遺伝子を感じます。全力で演じている風の闇を感じさせるほど、元気はつらつキャピキャピな歌唱と、緻密なプログラミングによるアレンジ、テクノ歌謡由来のポップなメロディー。これら3つの要素が彼女の音楽の特徴と言えます。中毒性は高く、「私は一体何を聴いているのだ。」と、おっさんが我に返っても、再び没頭してしまうほど。「ぴーおーぴーぴーわい、あいむぽっぴー。」と鼻歌しながらカートを運ぶ我、気持ち悪し。

I'm Poppy - Official Lyric Video
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バンバンバザール/えとらんぜ

バンバンバザール/えとらんぜ
2018年 日本
『サウダージも使いこなす』

 本拠地を博多に移しての初のアルバムとのことです。とは言え、従来通り東京でもコンスタントにライブをやってくれているので、ありがたい。5年振り15枚目のアルバム。久しぶりなのですが、収録曲は7曲とやや少なめ。せっかくなので各曲少しずつ感想を書いていきます。(7曲くらいなら)
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1.Stranger(feat.Inotomo) ボサノヴァ曲。イノトモとのデュエットです。本作発表に伴い、ポルトガルヴァージョンもデジタルでリリースしているとのこと。スキャット、フルートも入って本格的な仕上がりです。
2.マフラー オルガン、ピアノ、テナー・サックスが入ったジャジーなナンバー。ミュージカル調。オルガンからテナー・サックス、ピアノへと続くソロ・タイムが素晴らしい。
3.瞬夏終灯 バンジョーのせいなのか、少し沖縄民謡っぽさもあるバラード。
4.おこりんぼう ピアノ、アコーディオンが入っているブルース。サビでファンクが入っているのがポイント。むせび泣くブルース・ギターが素敵。
5. ボーイフレンド これはライブで聴いたことがある気がする。Leyonaへの提供曲のセルフカバーとのこと。高音のキーボード・ソロは幻想的で回顧する気持ちを表現したのかもしれません。
6. BUDDY BUDDY 友情を歌ったフォーク・ソング。これも以前ライブで聴いたことがあると思います。
7.春 リリースのタイミングを考えて、ラストに配された春の曲。ピアノ、トロンボーンが入ったジャズ・ヴォーカル風ナンバーです。落ち着いた感じで終わり。

 全編通して、激しい曲はほとんど無いながら、バラエティーに富んだ構成で起伏を作っています。ただ5年振りと考えるといささかあっさりめかも。ほら、やっぱ博多ですし。最後に、そういえば「えとらんぜ」ってどういう意味だろう、と調べてみたらフランス語で「外国人」という意味でした。なるほど、そういうテーマだと分かってもう一度聴くと、また印象が変わってくるのかもしれません。

 博多の夜を描いたジャケットが音楽と合っていて素晴らしい。こういうところで音楽をやっていますという感じが伝わる。3枚描いてくれているのがうれしいです。

【トレイラー】
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ビンジョウバカネ/ビンジョウバカネ

ビンジョウバカネ/ビンジョウバカネ
2003年 日本
『素人くささも味わい』

 変拍子が大好きなポップ・グループ、ビンジョウバカネが残したファースト・アルバムをご紹介。グループについてはセカンドでのレビューもご参照ください。
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8曲目にドアーズ「Light My Fire」のカバーがあり、それ以外はオリジナルで構成されています。永野亮、中川久史、森ゆに、の3人全員でヴォーカル、ギター、パーカッション、コーラスを分け合っているアットホームなフォーク・アンサンブルが楽しめる編成。

 彼らは3人で楽曲を持ち寄っているという認識でしたが、このファーストでは永野亮と中川久史の楽曲だけで構成されています。後にAPOGEEやソロでも活躍する永野亮はともかく、ビンジョウバカネ解散後、音楽界から消息を絶ってしまった中川久史という方の印象は薄かったです。ただファーストでの楽曲を聴く限り、ビートルズからの影響が強い、ファンタジックなポップ・ナンバーを書いており、これは永野亮へのソロ作の作風とも重なっています。恐らく影響を与えたのでしょう。これだけの素晴らしい曲を書くことが出来るのですから、いつか復活して頂きたいものです。

 ハーモニーが飛び交い、変拍子を多用するポップス、フォーク・ナンバーが並んでおり、のどかな山間の田舎町のような風情のアルバム。素人くささをビシバシと感じさせてくれるのも味わい。
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