The Reverend Shawn Amos/Breaks It Down

The Reverend Shawn Amos/Breaks It Down
2018年 アメリカ
『リバーエンドで神父って意味なのか』

 渋いジャケに心惹かれてチェックしたアルバム。

 ジ・リバーエンド・ショーン・アモス、ショーン・アモス神父は現代のブルース・マンの一人。過去のブルースを検証、再解釈することを自身のスタイルとしているようです。神父と名乗るだけにゴスペルに造詣が深く、ソウルやロックの要素も多く取り込んでおり、シ
リアスなブルース音楽とは言えないものの、取っつきやすい音楽性が特徴です。

 ソロ名義ながら数名のギタリストの他、バンド・メンバーを招いて録音。いくつかの曲ではホーンセクションを加えています。
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 アルバムは2曲のカバーと5曲のオリジナルで構成されています。1曲目「Moved」は三枚目のツェッペリンがやりそうな、ギター弾き語りによる静謐なスロウ・ブルース。響き渡るハーモニカが印象的です。2曲目「2017」はソウル色の強いロック・ナンバー。絞り出すようなヴォーカルとリズム・セクションによるグルーヴが一体となっています。表情の全く異なる2曲で掴みはオーケー。以降、バラエティーに富んだ構成で、滋養がありそうな、ワクワクするブルース・ロックで楽しませてくれます。

 ブルース・ミュージシャンではあるのですが、アルバート・キング的な雰囲気がする人。カバーの選曲はロック寄りでデヴィッド・ボウイ「The Jean Genie」エルヴィス・コステロ「(What's So Funny 'bout) Peace, Love, And Understanding」というラインナップ。前者はデカダンスな部分を残しながら、骨太なギターラインを強調してハードボイルドなブルース・ナンバーへと変貌させており、後者はキーボード主体のゴスペル・ナンバーへと仕上げています。特に「(What's So Funny 'bout) Peace, Love, And Understanding」はメロディーの美しさが際立っており、素晴らしい。

The Reverend Shawn Amos - 2017 (Official Lyric Video)
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Elise LeGrow/Playing Chess

Elise LeGrow/Playing Chess
2018年 カナダ
『チェスやっています。』

 青い写真がブルーノートを想起させます。カナダ、トロント出身のジャズ・ヴォーカリスト、シンガーソングライターであるエリス・ルグロウのデビュー・アルバムをご紹介。
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 彼女は1987年、6月生まれの30歳。フェイスブックのお薦めミュージシャンの欄には、Janelle Monae; Adele; Amy Winehouse; Ray Lamontagne; Martha Reeves & the Vandellas; Bill Withers;Nina Simone; Dinah Washington と記されており、新旧織り交ぜつつ、ブラック・ミュージックに造詣が深いことを伺わせます。なお、ビル・ウィザーズのカバー動画がありましたので参考までにどうぞ。2009年、地元であるNXNE音楽祭に出場することになり(詳しい経緯を探せませんでした)、それを切っ掛けとしてカナダのSony/ATV Music Publishingとの契約に成功。2012年にデビュー・シングルとして「No Good Woman」を発表。トップ10に13週残るヒットとなりました。2016年にはアメリカのレーベル、S-Curve/BMGとも契約し、デビュー・アルバムの制作を開始。2年を経て発表されたのが本作となります。

 タイトルから「チェスを楽しむ為の音楽」という意味かな、と思っていたのですが、これはチェス違いでした。ブルースの名門レーベル、チェスの楽曲をカバーしたアルバムとのこと。「チェスの曲、やっています。」でしたね。シンガーソングライターのデビュー作で、いきなりカバー・アルバムとは、意表を突かれました。

 メインのプロデューサーにはスティーヴ・グリーンバーグが起用されています。デュラン・デュランやベティ・ライト、最近ではダイアン・バーチのセカンド(これは賛否両論作ですが)での仕事で知られている人物。ハンソンやジョナス・ブラザーズなど、多くのミュージシャンを見出したことでも有名です。他、マイク・マンジーニ(ex.エクストリーム)とベティ・ライト(60年代から活動するソウル・シンガー)の二人が、プロデューサーとして名を連ねています。近年はこの3人で組んで仕事をしているようです。
主なゲストとして、ルーツよりクエストラブ(パーカッション)とキャプテン・カーク・ダグラス(ギター)、そしてダップ・キングスがセッションに参加。豪華メンツです。

 情感たっぷりで、伸び伸びとした歌い振りが素晴らしい。支えるのは、シャカポコとしたリズム(突き抜けるようなドラム)に、軽やかなピアノが印象的なバンド演奏。楽曲に合わせてファンキーにも、ムーディにも対応しています。全曲カバーということで、アレンジにも注目したいところですが、正直なところ、数曲しか原曲を覚えていない有様なのでじっくり聴き比べていこうと思います。ただ、原曲の雰囲気を残しつつ、ダイナミックに仕上げている印象。エリス・ルグロウの色気ムンムンの歌い方にハマりつつも、こんなにいい曲があるのか、と改めて思い知らされました。かっこいい。

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 収録曲目は以下の通りです。(尚、10曲目はエタ・ジェイムスの曲)試しにスポティファイなどで聴くときの参考にして、オリジナルと比べて楽しんでください。でも、これは買いです!待っていれば日本盤も出るでしょう。

1. Who Do You Love Written-By – Ellas McDaniel
2. Hold On Written-By – J. L. Webber, Leonard Caston
3. You Never Can Tell Written-By – Chuck Berry
4. Over The Mountain, Across The Sea Written-By – Rex Garvin
5. Searching For My Love Written-By – Bobby Moore
6. Long Lonely Nights Written-By – Bernice Davis, Douglas Henderson , Lee Andrews, Mimi Uniman
7. Going Back Where I Belong Written-By – Bob Geddins
8. Rescue Me Written-By – Carl Smith (2), Raynard Miner
9. You Can't Judge A Book By The Cover / You Can't Catch Me Written-By – Chuck Berry, Willie Dixon
10. Can't Shake It
11. Sincerely Written-By – Alan Freed, Harvey Fuqua

Who Do You Love (Live Video)
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Golden Big Wheeler/Jump In

Golden Big Wheeler/Jump In
1997年 アメリカ

『違いが分からない男のブルース・レビュー26』

 今回、取り上げるブルース・ミュージシャンは、シカゴ・ブルースのシンガー兼ハーモニカ奏者、ゴールデン “ビッグ” ウィーラー。
彼は1929年、ジョージア州バコントンにて生まれました。1941年にイリノイ州シカゴへ移住。自動車整備士、タクシー運転手として生計を立てながら、シカゴの地でリトル・ウォルターと出会い、彼との友情を深めながら、ブルースにも傾倒していくことに。また彼のタクシーの常連には「Fannie Mae」でヒットを飛ばすことになるハーモニカ奏者バスター・ブラウンもおり、その技巧を伝授してもらう機会も得ました。1950年代にはシカゴ・ブルースのハーモニカ奏者として活躍したとのことですが、録音機会には恵まれませんでした。
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若き日の雄姿

そして時は流れて、1993年。シカゴで相変わらず、ハーモニカ奏者として活動していたゴールデン “ビッグ” ウィーラーの元に、地元のブルース・バンド、アイスクリーム・メンが「あなたのアルバムを作りたい。」と協力を申し出たのでした。かくして1993年、63歳の頃。デルマークよりファースト・アルバム『Bone Orchard』が発表されました。また4年後にはセカンド『Jump In』を発表。1998年には心不全で亡くなってしまいますが、生涯続けてきたブルースの記録を晩年に残すことが出来たのは凄いです。
聴いたアルバムはセカンドの『Jump In』。弟であるジェイムズ・ウィーラーがギターを務めており、ピアノを含むバンド編成で録音されています。歌もハーモニカもひょうきんで人懐っこいパフォーマンスが印象的。自身の名前も茶目っ気から付けたのでしょう。60代とは思えないパワフルな演奏で、同年代と思われるベテラン勢によるバックバンドとの息もピッタリです。スロー・テンポでも楽しさが伝わってくるブルース。

Golden "big" Wheeler - Chicago Winter Weather Blues
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Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962

Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962
1950年代 アメリカ
『違いが分からない男のブルース・レビュー25』

 2016年6月以来のブルース記事、ついに復活。本日はロウエル・フルソンを取り上げます。

●経歴
 1921年、オクラホマ州タルサ生まれ。10代の頃からタップ・ダンサーとして活動しており、音楽に理解のある家庭で育ったとのこと。尚、この頃にはテキサス・ブルース・スタイルのバンドに参加していました。成人した1940年代にカルフォルニアへ移住。これを機にブルース・シンガーとしての活動を開始します。彼は時代毎に音楽性を変えています。まず初期(45年~50年頃)は地元カルフォルニア周辺のレーベル(複数)での伝統的なテキサス・ブルース。続いて中期(50年~64年)にはチェッカー・レーベルに移籍。ピアノ、サックスを加えたバンドを結成し、スロー・テンポのブルースを指向しています。ここでは自身のルーツであるゴスペルの要素が加わっているのも特徴。同じく中期の後編としてメジャー・レーベル、ケントに移籍していた時代があります。(64年~)ロックンロール誕生期にあたる、この時期ではビートを強調したブルース・ナンバーでヒットを生んでいます。以後も地道な活動を続けており、1980年には来日公演も実現しています。1999年にカリフォルニア州ロングビーチにてなくなったとのこと。戦後モダン・ブルースの歴史を作った一人です。尚、B.B.キングに影響を与えたブルースマンとしても知られており、B.B.キングは「眠れる巨人」と称していたそうです。

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50年代のロウエル・フルソンと言えば、この写真で決まりだ!笑顔が決まっています。

●チェッカー・レーベルでのロウエル・フルソン
先に書いたように、この頃の彼は弾き語りからピアノ、サックスを加えたバンドへと表現方法を変えています。ピアノはロイド・グレン、アルト・サックスはアール・ブラウンが担当。ソウル、ゴスペルの要素も多く含んだスロー・ブルースが中心です。歌、ギター共に派手さはありません。バンドとしてのサウンドを重視しており、あまり前に出ないのも特徴。ただし、生活感の滲み出る泥臭くもソウルフルな歌唱、ロープ・ギターと自称するザクザクとうねるギター、ともにインパクト十分。ここぞという時の存在感は十分です。曲は技巧で聴かせるというよりはムードを重視しており、ポップなものが多い印象。ゴージャスな雰囲気満点のねっとりとしたサックスと、穏やかに跳ねるピアノも、素晴らしい。

Reconsider Baby
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Pokey LaFarge/Manic Revelations

Pokey LaFarge/Manic Revelations
2017年 アメリカ
『ウキウキ気分にさせてくれる』
 
  自らの音楽ジャンルについて、カントリー、ブルースとアーリー・ジャズを21世紀流で、と記しているポーキー・ラファージ。50年代のキャバレー音楽やパブロックのような市井の人々に囲まれて育まれたような、親しみやすさと軽快さがあります。
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 ポーキー・ラファージは1983年生まれの33歳、イリノイ州ブルーミントン出身。子供時代に祖父の影響から、バンジョーとギターを始めます。しかし彼の夢はアメリカ文学の作家になることで、スタインベックなどの名作を読みながらアメリカの歴史を学ぶ過程で、ブルース、カントリーに触れることになったそうです。その後、近所のピザ屋で演奏しているブルースマンからの影響で、いよいよアメリカのルーツ音楽への興味に目覚め、バンドを組むことになりました。2006年にバンドを率いてのソロ・キャリアをスタート。現在まで7枚のアルバムを発表。既にアメリカのみならず、世界の音楽ファンからtoe-tapping music(足でリズムを取りたくなっちゃう音楽)と呼ばれ、親しまれているとのこと。本作は8枚目となります。
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 今回のアルバムではトランペット、ユーフォニアム、チューバ、ピアノ、サックス、ベース、クラリネット、フルート、グロッケンシュピール、エレキギター、ドラム、パーカッション、洗濯板、アップライトベース、ハーモニカなどを使用する、7人編成のバンドを組んで制作しています。穏やかながら心地よい低音が素晴らしいヴォーカルは、古き良きアメリカを想起させるもの。冒頭に記したアメリカン・ルーツ・ミュージックの他に、所々でウエスタンも混じっています。既に8枚のアルバムを出しているだけに、この音楽が芯まで馴染んでいるのが良く分かります。まだ来日したことが無いみたいですが・・・・・・来ないかな。

Riot In The Streets
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