STEELEYE SPAN/Please To See the King

STEELEYE SPAN/Please To See the King
1971年 イギリス
『「生真面目さ」が伝わってくるエレクトリック・トラッド』

 以前、英キャッスル・レーベルからリマスター盤が再発されていたのですが、本作のみ買い逃してしまっていました。初CD化の盤は音質が激悪だったのでずっと探していたのですが、あってもプレミア価格でげんなり。しかし遂に初期3タイトルがリマスター再発されることになりました。ありがとう!
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 フェアポート・コンヴェンション、ペンタングルと並ぶ3大フォーク・ロック・グループの一角、スティーライ・スパン。英トラッドを探求すべくフェアポート・コンヴェンションから脱退したアシュレイ・ハッチングスを中心として、1970年に結成されました。初期にはトラッド色の強い硬派なグループでしたが、やがて時代と共にポップ化。硬軟ともに柔軟に対応するグループという印象もあります。本作は硬派な時期にあたるセカンド・アルバムです。

 本作より英フォークを代表するギタリストであったマーティン・カーシィと、フィドル奏者ピーター・ナイトが加入。またドラムレスで録音されています。

 「生真面目さ」が伝わってくるエレクトリック・トラッドの数々は、荘厳ではあるもののとっつきにくい雰囲気がプンプン。朗々と歌い上げるマディ・プライアの歌声やリズミカルなフィドル、厳かなギター等によるアンサンブルからは緊張感がビシバシと伝わり、背筋が伸びてしまいます。英トラッドの凄みをそのままエレクトリック化している強力なアルバム。

Lovely on the Water
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松井文/顔

松井文/顔
2017年 日本
『柔和で親しみやすい女性によるフォーク』

 昨年度大いに楽しませていただいた折坂裕太の『たむけ』。リリースされた、のろしレコードから女性SSWのアルバムが発売されていることを知り、購入致しました。

 プロフィールによりますと、平成元年生まれ、横浜出身。元々はガールポップ・バンドのメンバーとして活動していたそうです。現在はギター弾き語りのシンガーソングライターへ転向したとのこと。春一番への出演経験もあり。のろしレコードには2015年の立ち上げから関わっており、今回、折坂裕太のプロデュースによるセカンド・アルバムがリリースされました。
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 音楽性は伝統を踏まえたフォーク、フォーク・ロック・スタイル。折坂裕太やゲスト参加している三輪二郎の影響も感じられます。ロックの疾走感やポップなメロディーをうまく取り入れており親しみやすい。ロックから後天的にフォーク、フォーク・ロックへと音楽性をシフトしたプロフィール通り、素直に古きよきものを自分なりに消化吸収している印象です。歌声は低く落ち着いていながら軽やか。バンドの構成は本人によるギター、ブルースハープを中心に、ギター、ドラム、鍵盤、チャイム、マンドリン、ベース、サックス、チェロが曲によって加わっており、フォーク・ロックとしてはかなり華やか。ジャジーな部分が所々で顔を出しているのがポイントで、前述の軽やかな歌声にもマッチしています。

「いつになったら」
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かみぬまゆうたろう/くすんだ箱の中の物語

かみぬまゆうたろう/くすんだ箱の中の物語
2017年 日本
『くたびれた感じの歌い方が染みる』

 サード・アルバム。ハンバートハンバートとセットで購入しました。全編でバンド録音がされており、これまで以上にSSW寄りのサウンドへとシフトしています。高橋優を彷彿とさせるエモーショナルな熱血ナンバー「はじめぼくはひとりだった」は特にその印象が強いです。
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 アメリカン・カントリーの影響はそのままに、落ち着いた味わいの洒脱なピアノ(THE MICETEETHの次松大助)が効果的に使われており、ウエストコーストやジャズのような雰囲気も加わっています。酒場を回るパブロック・バンドの如き、気安く軽快な演奏が素晴らしい。

 柔和でどっしりと落ち着いた日常の歌が収録されており、ラブソングがテーマだった前作よりも爽やかさが印象に残ります。かす
れ声も渋く、くたびれた感じの歌い方が染みる。

 封筒のような装丁が施された特殊ジャケも素晴らしい出来。ディスクの出し入れには適さないので別のプラケースに移しつつ、本体はボックス置き場で大切に保管しようと思います。

ブルーシート・ブルース
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ハンバートハンバート/家族行進曲

ハンバートハンバート/家族行進曲
2017年 日本
『眩しい、眩しすぎる。なんだこの光は!』

 長いこと、追いかけて来たグループであるハンバートハンバートの新作。企画盤『FOLK』は除外するとして通算9枚目のアルバムです。

 『むかしぼくはみじめだった』はカントリー路線を追求したアルバムでしたが、その一方で、このグループならではの厳かさ(おごそかさ)が表面に現れていたと思います。対して新作。まず収録曲のタイトルから申しますと、「がんばれ兄ちゃん」「あたたかな手」「ぼくも空へ」「おうちに帰りたい」「ひかり」「台所」等々、アットホーム。数曲以外は文字通りのアットホームな曲が並んでいます。何故だ?何故だ?そこでアルバムのタイトルが『家族行進曲』だからか!と気が付きました。当たり前なのですが、ハンバートハンバートの持つ優しさの部分が前に出る分、厳かさや毒はほぼ無くなっているのは寂しい。パーカッション、ペダルスティール、フィドルなどによる演奏は柔和でほのぼのとしており、リズムは緩やかです。これまでになくポップな音作りがされていると感じました。平和、幸せが歌われており、新しいファンにも受け入れやすそう。
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 ただ個人的には物足りません。もちろん、家族行進曲のテーマと僕の環境が相容れないから、ということはあります。(あります)しかし何より、僕はハンバートハンバートの不遇な環境での忍耐、毒を歌った曲が好きだったことが判明しました。これまでも本作に収録されているようなピースフルな曲はあったのですが、忍耐、毒のテーマと混ぜ合わされて提供されていたのでほのぼの出来たのです。これだけ幸せナンバーが固まって来られると、自分が長男だったことを思い出す「がんばれお兄ちゃん」を筆頭に、色々と精神的にダメージを追ってしまう次第。不遇ソングの名手、佐藤良成のメイン・ヴォーカルは本編にはありません。ボートラ的に置かれている、前作収録曲の「横顔しか知らない」の別バージョンが、自分にとってはオアシス。
 
 わたしには眩しすぎましたが、ハンバートハンバートの親しみやすい魅力が凝縮したアルバムです。自分の家族の場合に置き換えてしまうぐらい、丁寧な描写の歌詞も素晴らしい。

 リハビリにクニ河内の『僕の声が聞こえるかい』でも掛けようかな。

がんばれ兄ちゃん
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Deb Talan/Lucky Girl

Deb Talan/Lucky Girl
2017年 アメリカ 
『早口ヴォーカルと爽やかなキーボードの絡み合いが相性抜群』

 バンブーダンスで聴いたような乾いた音の小気味よいリズムと、アコギ、アコーディオン、ハーモニカなどによるアコースティック・アンサンブルによるトラッド由来のメロディーの組み合わせがキラキラとした幻想的な世界観を生み出しています。シンセサイザーや打ち込みも使っており、サウンドはカラフルです。
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 本作はマサチューセッツ州で活動するウィーピーズというフォーク・デュオの片割れ、デブ・タランのソロ・デビュー作。ウィーピーズは2001年にデビュー。これまでに5枚のアルバムをリリースしています。グループではオルガンやシンセの響きを利用したフォークをやっており、穏やかで柔らかなメロディーと男女混声のハーモニーが素晴らしい。
いくつかの曲を聴いただけですが、ソロでも同傾向の音楽をやっている模様。敢えて違いを挙げれば、リズムに躍動感がありポップ度が上がっている印象です。またヴォーカルに若干のエフェクトが掛かっており、且つ落ち着いた歌い口であることもポイント。高低を使い分けたクールな歌声は良く通っており魅力的です。カントリー度は低く、地味ながらしっかりポップな楽曲が揃っているので聴きやすい。
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Growing Up
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