Siv Jakobsen/The Nordic Mellow

Siv Jakobsen/The Nordic Mellow
2017年 ノルウェー
『姿勢を正してしまうような、たおやかさが素敵』

 ここで言及するのは何度目かわかりませんが、ケイト・ブッシュやジョニ・ミッチェルを彷彿とさせる弾き語りの女性SSWに目がありません。そこで最近見つけてきたのがシフ・ヤコブセン。ネット検索をしてみたところ、曰く「新世代ヴァシュティ・バニヤン」「サンディ・デニーの再来」と絶賛の嵐でありました。相変わらず、メディアの皆さんはヴァシュティ・バニヤンやサンディ・デニーの名前を易々と使う悪癖が治癒していないようで残念。まー、僕も使う形容詞がワンパターンだから全然だめだけれども。

 ノルウェーの都市、オスロを拠点に活動するシンガーソングライター。ローラ・マニングを手掛けているプロデューサー、マット・イングラムのバックアップを経て制作されたのが、このデビュー・アルバムとなります。
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 歌声は美しい。こちらが姿勢を正してしまうような、たおやかさがあります。キリッとした芯の強さを感じさせる。メロディーは甘くなり過ぎず、言葉が詠唱の様に流れる滑らかさを優先させています。ジョニ・ミッチェルからの影響は大でしょう。敢えて英国の女性SSWからイメージとして挙げるとすれば、ブリジット・セント・ジョンが近い印象です。

 マット・イングラムによるヴァイオリンを中心としたストリングス・アレンジは、彼女の歌とギターを神秘的に演出。パーカッションの入れ方も仰々しく、雰囲気作りはバッチリです。一部過剰かな、と感じるところもありますが、概ねシフ・ヤコブセンの個性を大切にした出過ぎない演出が素晴らしい。
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 霧のかかった森の中にいるような寒々とした雰囲気は北欧フォークらしく、突出した名曲こそないものの、大いに楽しめました。

Shallow Digger
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Spencer the Rover/The Late Album

Spencer the Rover/The Late Album
2017年 ベルギー
『英国のポップ職人へのリスペクトが詰まったアルバム』

 大学が密集しているというベルギーの都市、ルーベンを拠点に活動しているポップ・グループ、スペンサー・ザ・ローバー。2001年にデビューしており、本作は3枚目のアルバムとなります。
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 影響を受けたミュージシャンではRon Sexsmith, Wilco, Rufus Wainwright, Joni Mitchell, Steely Dan, Paul McCartney, Neil Young, XTC, Beach Boys, Richard Thompson, Bob Dylan, Hayden、という具合に英米、カナダのメロディー・メイカーが並んでいます。

 編成は基本的な4人組でキーボードやシンセサイザー、フルートなどを各メンバーで分け合っているとのこと。ヴァイオリンなどの
ストリングスはセッション・プレイヤーが参加しているようです。音楽性はフェアポート・コンヴェンションや中期ビートルズからの影響を感じさせる、ほのぼのとした優雅なポップス。所々で荘厳且つスペーシーなアレンジが挿入されておりクリムゾンやピンク・フロイドの影響も垣間見えるのが印象的です。

 英国ポップスをよく研究されたのであろう、と推察されるほどに耳馴染みが良く落ち着いて聴ける良曲が揃っています。加えて細かいところにヴァイオリンや笛の音を入れているなど、凝ったアレンジも聴きどころ。再生する度に新しい音に気付かされる楽しさがあります。

 英国らしい仕掛け時計を題材にしたジャケからも分かる通り、英国のポップ職人へのリスペクトが詰まったアルバムでした。
Spencer the Rover/Late March
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Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau

Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau
2017年 アメリカ
『ジャズだけどジャズで敬遠されたらもったいないってアルバムがある』

 ジャケットに惹かれ、1分ほど試聴した後に購入したアルバムです。ピアノとマンドリンの打ち付けるような演奏に情緒豊かな男性ヴォーカルが乗る、というスタイルで、ジャンルはジャズとなっていました。
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雰囲気がいいジャケ、としか言えないのですが好きなジャケです。

 ブラッド・メルドーはフロリダ州出身。1970年生まれの47歳。95年にデビュー作を発表して以来、現在まで19枚のアルバムを発表しているジャズ・ピアニストです。フリー・ジャズを交えた叙情的なメロディー展開が魅力。近年は様々なジャンルのミュージシャンとの共演作を発表しており、本作のその流れに乗っています。ジャズのみならず、クラシックやロックにも興味を持っており、しばしばジャンルを横断している点もポイント。

 クリス・シーリはプログレッシヴ・カントリーのグループとして知られるパンチ・ブラザーズのマンドリン奏者。そういえば、パンチ・ブラザーズの最新作はここでレビューしていたような・・・していましたね

 二人は共にノンサッチというレーベルに在籍しており、その縁でデュオを組んだのでしょう。

 ジャンルはジャズとなっていますが、メロディーはポップで優しいものが多く、とても聴きやすいです。収録曲はオリジナルとカバーが半々という構成。ディランの「Don't Think Twice, It's All Right」やビリー・ホリデイの「I Cover the Water Front」を取り上げています。マンドリン、ピアノ、ヴォーカルというシンプルな構成ながら、寂しいフォーク・ナンバからダイナミックで幻想的な、まるで初期ジェネシスのようなプログレ・ナンバーまで、表情豊かな楽曲群で楽しませてくれます。

 一粒一粒の音がくっきりしていてとても綺麗なピアノ。ブラッド・メルドーという存在を知ることが出来て良かったです。クリス・シーリの在籍するパンチ・ブラザーズの旧作共々、色々集めてみようかな。

 輸入盤で買ったのですが、日本盤が出ているらしくそちらではボートラも入っている模様。買い直そうと思います。

Chris Thile and Brad Mehldau - Don't Think Twice It's Alright (Dylan Cover)
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COLIN SCOT/JUST ANOTHER CLOWN

COLIN SCOT/JUST ANOTHER CLOWN
1973年 イギリス
『本場のピエロはやっぱり怖いな。』

 イギリスのシンガーソングライター、コリン・スコットのセカンド。長らくファーストのみがCD化されていた状況でしたが、この度、ビッグピンクよりセカンドが再発されました。ロバート・フリップ、ブリンズレー・シュウォーツ、リック・ウェイクマンなど豪華なゲストが参加していたファーストに関しては、その豪華な客演を楽しむといった趣が強かった一方で、どんな曲があったのか曖昧な印象。
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 セカンド・アルバムではほぼ全編がオリジナル曲で固められており、バックバンドも固定。シンガーソングライター然とした作風になっているとのこと。アメリカへの憧れが堂々と現れているたそがれフォーク・ロックが大勢を占めた内容です。渋みのあるスライド・ギターに枯れた歌声の組み合わせが、この種の音楽にとっての王道となっている他、シンセサイザーがカラフルでポップな魅力を引き出している点もポイント。バックバンドのメンバーにはヴァンダー・グラフ・ジェネレーターやレア・バードに関連するメンバーが集まっており、一部楽曲では管楽器やストリングスが導入されています。これによりドラマティックなアレンジが為された楽曲もあり。それが功を奏しているかというと否。ファーストと同じく、軸がぶれてしまっている気がします。

例えばマッギネス・フリントやアラン・テイラーのような、イギリス人による米国憧憬フォークの第一人者に比べると、各楽曲の出来も地味。しかしながら、後続の人知れず発表されたシンガーソングライターの作品として楽しむことは出来ると思います。(解説でも楽曲に関しては全く触れていませんでしたし・・・・・・)

I am A Dreamer
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Aliocha/Eleven Songs

Aliocha/Eleven Songs
2017年 フランス
『素はセンチメンタル、アレンジでデカダンス』

 慎ましやかな歌い出しから、もったりとしたドラムが従い、やがてオルガンが唸るクライマックスへ。そういう曲調のオープニング・ナンバー「The Start」は、何だかジョン・レノンの「(Just Like) Starting Over」を彷彿とさせます。基本スタイルは米ロックンロールの腰の強さと、ブリティッシュ・フォークの侘しさを併せ持ったフォーク・ロック。フランス出身だけに、退廃的でロマンティックなムードが特徴的です。また、しぶとさを感じさせる低い歌声や、哀愁味のあるメロディーも魅力。

 フランス、パリ出身のSSW、アリオカ。姓はシュナイダー。映画俳優の父と、実業家兼モデルの母を持っています。
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そういうことなので、フランスでは既に男前なSSWとして人気は博しているようです。

父の知り合いだったという、カナダのケベック州出身のSSW、ジャン・ルルーと出会うことで自作自演歌手への憧れが芽生えたとのことです。ジャンと彼のバンドの助太刀を得てレコーディングを経験。これらの成果として2016年にはデビュー作を発表します。同年、フランスのパリ、カナダのモントリオール、アメリカのロサンゼルス、スウェーデンのイエテボリと音楽旅行を敢行。パリのプロデューサー、サミー・オスタやスウェーデンのドラマー、ルドウィック・ダールバーグを始めとする若い才能達との出会いによって、1枚のEPと1枚のアルバムを完成させています。今回ご紹介するのは2017年6月にヨーロッパでリリースされたセカンド・アルバム。
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 ギター弾き語りをベースにした楽曲が11曲並んでいるものの、録音はバンド編成。鍵盤の入る曲も多く、加えてヴォーカルにエコーが入るところがあるので、アコースティックながらカラフルな印象です。前述した通り、英フォーク、米ロックンロール及びそこから派生する英ロックの影響が強いサウンドです。ケベック出身のジャン・ルルーの指導が入っている成果なのか、フランスらしい、どんより、あるいはどろり、と形容するような耽美性は控えめ。その代わり俳優の父を持つからなのか、楽曲にはドラマティックで演劇的な特徴があり。特にキーボード・アレンジが神秘性を演出しており、ドイツ時代のデヴィッド・ボウイやサイケ時代のドノヴァンのような醒めた退廃ムードが楽しめます。

Sarah
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