古川豪/羅針盤で星占いはできない

古川豪/羅針盤で星占いはできない
1973年 日本
『トラッドは古くならない』

 現在でもユニオンやタワー・レコードなどで行われている、独自のCD再発企画。2003年、アマゾンが企画したURC再発リクエスト企画もそういった独自再発企画の一つだったのでしょう。ファン投票で選ばれただけあるマニアックなラインナップが揃っていたのですが、オムニバス盤が多めの構成。その中に本作や五つの赤い風船の『五つの赤い風船’75』『ボクは広野に一人居る』中川イサト『1970年』といった作品が混ざっていました。自分がこの存在を知ったのは売り切れてプレミアが付いた後だったので、かなり悔しかったです。URCの再発はグリーンウッドが頑張ってくれており(もう終わりが見えてきたっぽい?)、五つの赤い風船も再発されましたが・・・・・・上記のアルバムは一度再発されたということでオミットされています。残念ながら再発時に入手できなかったので、コツコツと納得できる中古を探索していた訳ですが、この度本作を手に入れることが出来ました。(後は『ボクは広野に一人居る』だけであります。)

 京都を拠点に活動するフォーク・シンガー、古川豪のデビュー作。ちなみに本作の前に自主盤があり。初めて聴いてみるといくつかあるセックスソングの印象が強烈ですが、死についての哲学的な歌、京都の暮らしの歌も収録されています。バンジョー、ダルシマーも操るギター弾き語りで、一部ではフィドルも参加。既にセカンドのレビューでも触れていますが、アイルランド民謡のカバーが1曲収録されている他、アメリカ民謡の影響を強く受けた楽曲が多いです。セックスソングでの愛嬌を含めて、全編でトラッドソングらしい泥臭い反骨精神が貫かれています。1973年のURC、ここにありという風情。ファーストはギタリストの弾き語りをベースにしており、セカンドはアレンジが凝っています。どちらも素晴らしい。

※ これを書いた後で、10月頃に紙ジャケで本作がcd化されることを知りました。
まぁそういうものですよねー。

トカトントン/古川豪
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Timothy Seth Avett As Darling/IV

Timothy Seth Avett As Darling/IV
2017年 アメリカ
『ニック・ドレイク、ロン・セクスミスのラインを通っているフォークが好きなあなたに。』

 甘く切ないメロディーと軽妙な歌い口。田舎の家の軒先で演奏しているかのような、素朴で気安い佇まいはまるで70年代の日本語フォークの如し。この寂しいギターの音色は何だ!これはいいシンガー・ソングライターです。

 ティモシー・セス・エイベット。3人兄弟の末っ子として、ノースカロライナ州コンコードにて、1980年に生まれました。現在36歳。兄であるスコットと共に幼少期よりバンド演奏を始めています。兄のスコットがバンジョー、セスがギター、幼馴染のボブ・クロフォードがダブル・ベースという編成。2000年よりエイベット・ブラザーズと名乗って活動しており、その後、キーボード奏者のジョー・クォンを加えて現在は4人編成です。ブルーグラス、アメリカーナといった伝統音楽に根差したカントリー・ロックをやっています。→音源(youtube) 本国アメリカでは人気を獲得しており、日本語のページもちらほらと。実績を積んでいるグループです。初めて聴きましたがルーツに根差していながらも渋くなり過ぎず親しみやすい音楽で素晴らしい。さて、セスの話に戻ります。グループとして9枚のアルバムをリリースする傍らで、セスはソロ活動をしており、これまで3枚のアルバムをリリース。2005年のサード以来、ブランクが空いていましたがこの度12年振りの4作目がリリースされました。
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このジャケからするとフォークというよりも甘いピアノ・バラードが似合いそうですが・・・

 エイベット・ブラザーズと比べるとメロウで淋しげな表情が印象的な作風。ギター弾き語りを中心に、曲によってはバンド・セット、ヴァイオリンが入る曲もあり。もちろんアメリカ発の音楽なので、陰よりも朗らかさが先に立つ部分もありますが、総じて穏やかなことは確か。メロディーの質が素晴らしい。ニック・ドレイク、ロン・セクスミスのラインを通っているフォーク好きな音楽ファンには是非聴いてもらいたいです。まずは以下の曲をどうぞ。

should we move
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森田童子/夜想曲

森田童子/夜想曲
1982年 日本
『停滞もまた彼女らしい』

 5枚目のアルバム。前作から引き続いての千代正行と、今回新しく参加した比呂公一が編曲を半分ずつ分け合っています。比呂公一については『果樹園』というアルバムで知っていましたが、映画音楽や特撮ヒーローの音楽(ミラーマンなど)に携わっていた方だったようです。
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 情緒を強調したような作風は前作から繋がるもの。ピアノが主役の曲が多くなり、寂しい美しさが印象に残ります。前作で自身の活動に区切りを付けたはずですが、歌われる内容は依然として孤独の寂しさや思い出について。音楽性としては停滞しているとも取れますが、元々後ろ向きな歌なのでまったく問題はありません。

麗子像
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Entrance/Book Of Changes

Entrance/Book Of Changes
2017年 アメリカ
『土着的であり宇宙的』

 ピアノ、シンセ、ギターが溶け合うソフトなサイケデリック・サウンドに掠れた裏声が乗る。幻想的なストリングスもあり。爽快感十分。

 エントランスはガイ・ブレイクスリーによるソロ・ユニット。ガイはバルティモアを拠点とするグループ、The Convocation Of…のメンバーとして音楽活動をスタートしています。サイケデリックなハード・ロックを演奏していたバンドでしたが、2枚のアルバムを発表後、解散。その後、シカゴへ移り、エントランス名義を名乗ってソロ活動を開始。2003年のデビュー作以来、5枚のアルバムを発表しています。アメリカのカントリー、フォークをサイケデリックと掛け合わせる手法で、アシッド・フォークやネオアコのような作品を指向しているシンガーソングライターです。本作は6枚目のアルバム。
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 掠れた裏声は時に朗々と響き、トラッド的。ギターのつま弾かれる様も素朴。アメリカン・ルーツは濃厚です。一方でシンセ、ストリングスが幻想的なサイケ要素を担っているわけですが、こちらはとても立体的。カントリー、トラッドの持つ田舎臭さをセンチメンタルな装飾で消しているのがポイントです。

 土着的でありながら宇宙も感じさせる音楽。アルコールでもトリップ出来そうです。

ENTRANCE - Always The Right Time (Official Audio)

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森田童子/ラスト・ワルツ

森田童子/ラスト・ワルツ
1980年 日本
『洗練されつつも彼女自身のやりたいことを突き詰めたアルバム』

 4枚目のアルバム。千代正行編曲。不勉強で知りませんでしたが、石川さゆりや中森明菜、竹内まりやなど女性歌手を中心としたセッション・ギタリストとして活躍している凄い方です。アコースティック・ギターを得意としていますが、編曲はストリングスがフューチャーされたドラマティックなものとなっています。前作のライブ盤からの流れとして「讃美歌」のような楽曲もいくつか収録されているのもポイント。
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 震えて不安定なヴォーカルが魅力だった森田童子ですが、このアルバムから少しずつ歌声が安定していきます。寂しさは相変わらず纏っています。また前述した「讃美歌」のような楽曲、例えば「グリーン大佐答えて下さい」では、学校の唱歌のようなソプラノ・ボイスを披露。Ipodなどを使って、シャッフルでこの曲が流れてきたら最初は森田童子の曲と分からないかも、というくらい、これまでと異なる歌い方をしています。

 『ラスト・ワルツ』というタイトルからは、彼女の生きた世界への区切りとして制作されたことが伺えます。これまでの集大成を感じさせる楽曲が多く、それぞれの楽曲にある物語をストリングスが盛り立てています。洗練されつつも彼女自身のやりたいことを突き詰めたアルバムだと思います。

みんな夢でありました
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