Beans On Toast/Cushty

Beans On Toast/Cushty
2017年 アメリカ
『ジェイ・マカリスター、誕生日おめでとう』
 
 エセックス出身のSSW、ジェイ・マカリスターが名乗っているステージ・ネーム。
それがビーンズ・オン・トースト。当ブログで扱うのはこれで2回目となります。前回の記事では毎年12月1日(彼の誕生日)に新譜を出す、と書いていまして、今調べてみると2016年の12月1日にも『A Spanner In The Works』というアルバムをリリースしておりました。本作で通算9枚目となります。
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 息継ぎをしないでどこまで一息で歌えるか、というような言葉を浴びせ続ける歌唱法が特徴。ポエトリーディングにも近いです。抑揚をつけた哀愁味のあるメロディーを、枯れた歌声とアコギで彩っています。他にはピアノ、ハーモニカを使用。初期ボブ・ディランにも通じる穏やかながら反骨心を感じさせる歌です。
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 自分が聴いた前々作と比べても区別がつかないほど、同じことをやっています。ちなみに前々作は日本盤もリリースされていましたが、本作はなし。輸入盤がタワーで取り扱っているのみです。日本盤が歌詞対訳付きでリリースされたなら、より深く楽しめるのに、と思う次第。
Beans on Toast - Secret Garden Party (SGP)
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坂口恭平/アポロン

坂口恭平/アポロン
2018年 日本
『芸術の神を冠したファーストアルバム』

 熊本出身。建築家や画家として活躍している坂口恭平が、今度はシンガーソングライターとしてアルバムを発表。自分はそんな凄い経歴を知らず、寺尾紗穂参加ということで試聴した結果、購入しました。
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 アコギ弾き語りを坂口恭平、ベースに厚海義朗(GUIRO)、ドラムに菅沼雄太、ピアノに寺尾紗穂という布陣。

 ほぼ全編でゆったりとしたリズムのカントリー、フォーク・ロックをやっています。寺尾紗穂のピアノが前面に出ているので、室内楽の雰囲気が漂っている印象。坂口恭平の歌は声域が狭いので地味目ながらも、伸び伸びとしていて良いです。一方でほぼ全編、のんびりな楽曲で統一されているので、少しダレる部分もあり。ヒップホップを取り入れた「あの声」のような変化球がもう少し入っていれば良かったかも。
 
 ハンバートハンバートの佐藤良成がリードを取る曲のような劣等感を含んだ味わいを期待したのですが、もっと穏やかで平和な音楽となっています。また、寺尾紗穂がコーラスや時にはリード・ヴォーカルも務めており、華やかさを添えているのがポイント。晴れた休日の始まりに聴くべきような、期待感を静かに盛り上げてくれる音楽です。

休みの日
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Danielle Cawdell/Silence Set Me Free

Danielle Cawdell/Silence Set Me Free
2018年 イギリス
『厳しい冬の屋内で暖を取っているような聴き心地』
 
一粒一粒、しずくが滴り落ちるようなピアノと、わななくエレキギターの倍音。寒々しく幻想的な音楽は、ジョニ・ミッチェルからの影響をイギリスの地で実践したスタイル。70年代のブリティッシュ・フォークをも彷彿とさせます。
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 ダニエル・コーデルはピアニストにして、シンガーソングライター。イギリスのバーミンガムを拠点として活動しています。ウェスト・ミッドランドに住むシンガーソングライター、ダン・ホワイトハウスが主催するソングライター・サークルのワークショップに参加。これをきっかけとしてダンの後援を取り付け、更にもう一人、バルセロナのプロデューサー、ジェイソン・ターバーの助力を得ることとなり、二人のプロデュースによりデビュー・アルバムが完成しました。
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 ピアノの弾き語りをベースとした楽曲群で、いくつかの楽曲でエレキギターやストリングスが加えられているものの、総じてシンプルに仕上がっています。前述した通り、ジョニ・ミッチェルからの影響が顕著で、静かな中に厳しさを感じさせる楽曲群が印象的。歌声は高音が澄み切っていて伸びやか。厳しい冬の屋内で暖を取っているような聴き心地。

Danielle Cawdell - Silence set me free - Treehouse Sessions Live Stream - #TreeTV
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折坂悠太/ざわめき

折坂悠太/ざわめき
2018年 日本
『開放的な清々しさが感じられるのが特徴』

 祭囃子や民謡、昔の歌謡曲のエッセンスなどと、ジャズ、レゲエ、シャンソンの要素を混ぜ合わせた、土臭さたっぷりの音楽。そんな音楽をやる折坂悠太の5曲入り新作が出ました。
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 今回は弾き語りではなく、バンド編成での録音。1曲目「芍薬」のみ、ドラムが打ち鳴らされるお祭りソングで、他は穏やかな曲が並んでいます。ピアノ、管楽器を交えた室内楽という風情。

 歌詞の日本語の美しさは健在。相変わらず古風な表現を使いながらも、以前よりも分かりやすくなっている気がします。山あり谷ありで、うねるような節回しも相変わらずで、合奏となっても歌を軸に据えています。発声に気持ちが乗っていて何を歌っているのか分からないところも魅力のひとつ。

 弾き語りの内省的で穏やかな魅力とは異なる、開放的な清々しさが感じられるのが特徴です。

折坂悠太 - 芍薬 (Official Music Video)
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Tom Brosseau/Treasures Untold

Tom Brosseau/Treasures Untold
2017年 アメリカ
『歌が人々を温める様子をパッケージ』

 ノースダコタを拠点に活動しているフォーク・シンガー、ソングライターの9枚目。2014年に7枚目のアルバム『Grass Punks』を発見、このブログで紹介してからファンになりました。カントリーからの影響を感じさせる、内省的でしんみりとしたメロディー、語り口が魅力的。
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 今回のアルバムはケルンでのライブを録音したもの。ギター弾き語りのみです。かつてあった「古い歌を伝承しながら、そこに自分の歌を加えていく」というカントリーやトラッド歌手の在り方。トム・ブロッソーは、そのスタイルを守っていたようで、今回のアルバムでは全12曲中6曲がカバーとなっています。本作は、今もフォーク・シンガーによって伝承歌が生き続けている、という状況を伝える役目を果たしているのだと思います。
曲目は以下。右側は作曲者です。

Empire Builder/Tom Brosseau
You Win Again/Hank Williams
Don't Forget This Song/A.P. Carter
I Am the Light of the World /Rev. Gary Davis
Love to Play Guitar /Tom Brosseau
Cologne (Monologue) /Tom Brosseau
The Horse Will Not Ride, the Gospel Will Not Be Spoken /Tom Brosseau
When I'm Gone /Elizabeth Cotton
Dreaming With My Tears in My Eyes /Waldo O' Neal / Jimmie Rodgers
Today Is a Bright New Day /Tom Brosseau
Jimmie Rodgers (Monologue) /Tom Brosseau
Treasures Untold /Ellsworth T. Cozzens / Jimmie Rodgers

 目を惹くクレジットはジミー・ロジャース。トム・ブロッソーのオリジナル曲として「Jimmie Rodgers」なる曲も捧げられており、思い入れが深いことが伝わります。ジミー・ロジャースは1820年代に活躍した人物。トリビュート・アルバムを企画したボブ・ディランを始め、ボノやジョン・メレンキャンプなど多くのミュージシャンから尊敬を集めているカントリーの父と呼ばれている偉人です。ヨーデルから影響を受けた歌唱とメロディーが特徴であり、その音楽性が後のカントリー・ミュージックの礎となりました。

 仕事終わりにお酒を飲みながら聴き入っている観客と、歌うトム・ブロッソー。ほのぼのとした空気感が素晴らしく、自分もそこにいるような気分になれます。昔々、鉄道職員へ向けて歌っているジミー・ロジャースもこういう感じだったのかもしれません。

Tom Brosseau - The Horses Will Not Ride, The Gospel Won't Be Spoken - Treasures Untold
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