Thundercat/Drunk

Thundercat/Drunk
2017年 アメリカ
『80年代のプログレのような、目まぐるしくも楽しい音楽』

 半魚人現る、という感じの強烈なジャケを切っ掛けとして聴いてみました。フュージョン、ソウル、テクノ、サイケ・ポップなどを混ぜ合わせた、幻想的なポップ・ソングが次々表情を変えて現れるカラフルなアルバム。既に様々なHPにレビューが掲載されていますが、その注目度も納得。楽しいアルバムです。
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 サンダーキャットは、ロサンゼルス出身のベーシスト。16歳の頃、スイサイダル・テンデンシーズのメンバーとして抜擢されることでプロデビュー。(彼の音楽性からすると意外な経歴です)セッション・プレイヤーとしてエリカ・バドゥなどの作品へと参加した後、2011年よりソロ・ミュージシャンとして音楽活動を開始しています。本作は3枚目のアルバム。
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 プロデューサーとしても活動しており、ミュージシャン仲間からも評価が高いサンダーキャットだけに人脈が広く、ゲストが豪華。ケニー・ロギンス、マイケル・マクドナルド、ケンドリック・ラマー、フライング・ロータス、ファレル・ウィリアムズ等々。

 土台となっている音楽はフュージョンですが、ソウルの持つ温かみとテクノ・ビートによる無機質さが混ぜ合わさった結果、極上のサイケデリック・ミュージックに仕上がっています。影響されているのかは不明ですが、ソウル、テクノの要素を取り入れたイエスやバグルスのような、80年代のプログレのような、目まぐるしくも楽しい音楽だと感じました。1分台を多く含んだ20曲という曲数をスムーズに聴かせる構成力もプログレッシヴ。先述したゲストを引き立たせる楽曲、アレンジが用意されており、それがカラフルさに拍車を掛けています。

Thundercat - 'Show You The Way (feat. Michael McDonald & Kenny Loggins)
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META META/MM3

META META/MM3
2016年 ブラジル
『ジャズかブラジルかプログレかはさておき、この混沌は凄い』

 妖しさたっぷりに物語を紡ぐ女性ヴォーカル、ブルージーにしてアンダーグラウンドなギター、暴れまわるサックス。70年代アンダーグラウンドのような混沌としたサウンドが魅力のアルバムです。めためた、という言葉の響きはかわいいのですが、音楽性はかなりシリアス。

 まずこのジャケが強烈。
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イサカを思い出してしまいました。
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だがしかし、彼らはブラジルのグループ。女性ヴォーカルのジュサーラ・マルサル、ギタリストのキコ・ヂヌッシ、サキソフォンのチアゴ・フランサによるトリオで2008年に結成され、2011年にデビューしています。これまで3枚のアルバムと1枚のEPを発表。本作は4thアルバムとなります。先入観でプログレ・バンドだと勘違いしていましたが、彼らはジャズ畑で活躍しているミュージシャンが集まったバンドで、ジャズ・グループとして活動しているようです。初期の作品は一部輸入盤ショップなどでレビューもされており、それによるとアフロ・ジャズ的な音楽性で、コルトレーンにも影響されているとのこと。
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 さて本作の内容について。本体である彼らトリオに加えて、キーボード、ドラムが参加しています。ドタバタしたドラムを加えたサックス、ギターが絡むバンド演奏はとにかく不穏でダーク。女性ヴォーカルによる妖しい語り口も絶妙で、改めて聴いてみてもやはり英アンダーグラウンドのような音楽性だと実感出来ました。躍動するリズム辺りにブラジルらしさを感じることが出来ます。ムタンチスに共通する熱気を発しているロック・バンドだと思います。

Mano Légua
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Sarah McKenzie/Paris In The Rain

 まだ2016年のアルバムで紹介できていないものもあるのですが(しかもすごくいいもの)、今日から2017年の新譜紹介を始めたいと思います。
尚、2016年の総括記事は2月末に更新予定です。

Sarah McKenzie/Paris In The Rain
2017年 オーストラリア 
『上品でゆったりとした時間が流れる雨の日のジャズ』

 軽やかなピアノとヴォーカル。上品でゆったりとした時間が流れる雨の日のジャズ。しとしと雨の中の室内楽といった趣です。ただ、最近の日本の雨は容赦が無い時が多いですね。

 オーストラリア、メルボルン育ちのジャズ・ヴォーカリスト、サラ・マッケンジー。アメリカにあるバークレー音楽大学を卒業後、ジャズ・フェスティバル等で経験を積み、2010年にデビュー。2015年には世界進出を果たしており、本作は4枚目のアルバムとなります。
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 本作はニューヨークで録音されています。プロデュースはノラ・ジョーンズの作品でも知られるブライアン・バッカスが担当。主なセッション・メンバーは以下の通りです。
Ingrid Jensen(トランペット)
Warren Wolf(ヴィブラフォン)
Hugh Stuckey(ギタリスト)
Alex Boneham(ベーシスト)
Marco Valeri(ドラマー)

 ヘンリー・マンシーニ、ガーシュイン、デューク・エリントン、ジェローム・カーン、コール・ポーター、ケニー・ランキン、アントニオ・カルロス・ジョビンといった作曲家のスタンダードと、自作3曲を織り交ぜた構成。
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 オーストラリアからアメリカ、アメリカからヨーロッパ、という彼女が経験した旅を歌集として表現しています。女性のジャズ・ヴォーカル、雨の日のジャズ、といったイメージ通りのしっとりとした雰囲気が楽しめるアルバムです。

Paris In The Rain
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Dinosaur/Together, As One

Dinosaur/Together, As One
2016年 イギリス
『ウマグマのような解放感を感じることもあり』

 禍々しくスペーシー、それでいながらとても清々しく透明感のあるサウンド。サイケデリック感満点のジャズ作品をご紹介。

 キーボードを含む4人編成のグループ、ダイナソー。エディション・レコードというジャズ・レーベルに所属するメンバー達が集合して出来たグループで、今回のアルバムがデビュー作となります。ロンドンを拠点に活動しているとのこと。
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 電化マイルスの影響を強く受けたサウンドが印象的で、そこにスペーシーなキーボードが絡むことで、往年のプログレッシヴ・ロックのような味わいが生まれているのが彼らの個性でしょう。電化マイルスに影響を受けたジャズ・ロック系の英グループと言えば、ニュークリアスが挙げられますが、そこまでのストイックさと緊張感はありません。あくまでも悠々としていて牧歌的。メルヘンチックなメロディーにはイギリスらしさを十分感じ取れました。ジャケットの野原で演奏している風景に引っ張られている部分もありますが、ピンク・フロイドのウマグマのような解放感を感じることもあり。
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Awakening
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Victor Gould/Clockwork

Victor Gould/Clockwork
2016年 アメリカ
『英ジャズっぽさを感じさせる新鋭ピアニストのリーダー作』

 ラテンのグルーヴを感じさせるリズム隊(パーカッションの叩きっぷりがアツイ)、飄々とフリーなフレーズを奏でるサックスと透き通った音色で冷やしてくれるピアノ。70年代のブリティッシュ・ジャズの如き、クールさを持ったミュージシャン。久しぶりにジャズの新譜を購入。
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 ビクター・グールド。ジャズの新譜は、一年に数枚しか買わないので最新ジャズ事情に詳しくない私。早速インターネットで教えてもらいました。「jazzyell」というショップのページで丁寧な解説がされていました。参考にさせていただきます。「ポスト・ロバート・グラスパーの一番手との声も高いピアニスト」とのこと。
ロバート・グラスパー?誰のことでしょう。調べてみると現在、ブルーノートに在籍しているピアニストでした。アルバムでグラミー賞を受賞しており、作曲家、プロデューサーとしても優秀とのこと。曲はこちら。これはいい曲です。欲しくなりました。しかしながら、今回はビクター・グールドの話なので、ロバート・グラスパーの話はこの辺で。とにかくビクター・グールドは「ロバート・グラスパー」の次に来る、と思われている実力者なのですね。
バークリー音楽院卒業という経歴と、エスペランサ・スポルディングとの共演歴も素晴らしい。現在はブルックリンを拠点に活動しているとのこと。リーダー作は今回が初めてとなります。
作品は第一印象通り、クールな英ジャズを彷彿とさせるもの。アフロ・ジャズのようなノリを持っており、クリス・マクレガー等、南アフリカからの移民が参加したアルバムに近い魅力があり。一部でフルートが参加している曲があり、その辺りも英ジャズっぽいです。
ピアノ先導によるはっきりしたメロディーがあり、加えて各楽器の派手なソロパートも存分にある、とても分かりやすいアルバムでした。ジャズ・ロックなどを聴く人にはおすすめ。
Clockwork
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