Elise LeGrow/Playing Chess

Elise LeGrow/Playing Chess
2018年 カナダ
『チェスやっています。』

 青い写真がブルーノートを想起させます。カナダ、トロント出身のジャズ・ヴォーカリスト、シンガーソングライターであるエリス・ルグロウのデビュー・アルバムをご紹介。
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 彼女は1987年、6月生まれの30歳。フェイスブックのお薦めミュージシャンの欄には、Janelle Monae; Adele; Amy Winehouse; Ray Lamontagne; Martha Reeves & the Vandellas; Bill Withers;Nina Simone; Dinah Washington と記されており、新旧織り交ぜつつ、ブラック・ミュージックに造詣が深いことを伺わせます。なお、ビル・ウィザーズのカバー動画がありましたので参考までにどうぞ。2009年、地元であるNXNE音楽祭に出場することになり(詳しい経緯を探せませんでした)、それを切っ掛けとしてカナダのSony/ATV Music Publishingとの契約に成功。2012年にデビュー・シングルとして「No Good Woman」を発表。トップ10に13週残るヒットとなりました。2016年にはアメリカのレーベル、S-Curve/BMGとも契約し、デビュー・アルバムの制作を開始。2年を経て発表されたのが本作となります。

 タイトルから「チェスを楽しむ為の音楽」という意味かな、と思っていたのですが、これはチェス違いでした。ブルースの名門レーベル、チェスの楽曲をカバーしたアルバムとのこと。「チェスの曲、やっています。」でしたね。シンガーソングライターのデビュー作で、いきなりカバー・アルバムとは、意表を突かれました。

 メインのプロデューサーにはスティーヴ・グリーンバーグが起用されています。デュラン・デュランやベティ・ライト、最近ではダイアン・バーチのセカンド(これは賛否両論作ですが)での仕事で知られている人物。ハンソンやジョナス・ブラザーズなど、多くのミュージシャンを見出したことでも有名です。他、マイク・マンジーニ(ex.エクストリーム)とベティ・ライト(60年代から活動するソウル・シンガー)の二人が、プロデューサーとして名を連ねています。近年はこの3人で組んで仕事をしているようです。
主なゲストとして、ルーツよりクエストラブ(パーカッション)とキャプテン・カーク・ダグラス(ギター)、そしてダップ・キングスがセッションに参加。豪華メンツです。

 情感たっぷりで、伸び伸びとした歌い振りが素晴らしい。支えるのは、シャカポコとしたリズム(突き抜けるようなドラム)に、軽やかなピアノが印象的なバンド演奏。楽曲に合わせてファンキーにも、ムーディにも対応しています。全曲カバーということで、アレンジにも注目したいところですが、正直なところ、数曲しか原曲を覚えていない有様なのでじっくり聴き比べていこうと思います。ただ、原曲の雰囲気を残しつつ、ダイナミックに仕上げている印象。エリス・ルグロウの色気ムンムンの歌い方にハマりつつも、こんなにいい曲があるのか、と改めて思い知らされました。かっこいい。

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 収録曲目は以下の通りです。(尚、10曲目はエタ・ジェイムスの曲)試しにスポティファイなどで聴くときの参考にして、オリジナルと比べて楽しんでください。でも、これは買いです!待っていれば日本盤も出るでしょう。

1. Who Do You Love Written-By – Ellas McDaniel
2. Hold On Written-By – J. L. Webber, Leonard Caston
3. You Never Can Tell Written-By – Chuck Berry
4. Over The Mountain, Across The Sea Written-By – Rex Garvin
5. Searching For My Love Written-By – Bobby Moore
6. Long Lonely Nights Written-By – Bernice Davis, Douglas Henderson , Lee Andrews, Mimi Uniman
7. Going Back Where I Belong Written-By – Bob Geddins
8. Rescue Me Written-By – Carl Smith (2), Raynard Miner
9. You Can't Judge A Book By The Cover / You Can't Catch Me Written-By – Chuck Berry, Willie Dixon
10. Can't Shake It
11. Sincerely Written-By – Alan Freed, Harvey Fuqua

Who Do You Love (Live Video)
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Tony Allen/The Source

Tony Allen/The Source
2017年 アメリカ(ナイジェリア出身)
『レゲエのリズムとロックの熱狂、テクノの没入感。全部入ってジャズ』

 ナイジェリア出身。アフロ・ビート・ドラマーの巨匠、トニー・アレンのブルーノート・デビュー・アルバム。(←宣伝文そのまま)色合い、レタリング共にブルーノートらしいジャケだったので、ついつい聴いてみました。
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 トニー・アレンは元々、ナイジェリアのラジオ局で働いていたそうです。そうした中でアート・ブレイキーの音楽に感銘を受けて、ドラムの演奏を始めることに。60年代にはフェラ・クティのメンバー・オーディションを受け、彼のバックでドラム、パーカッションを担当。アフロビートの感覚を身に付けました。その傍らで、自身のソロ作も多く発表しており、本作はフル・アルバムとして20枚目にあたります。

参加メンバーは以下。
Mathias Allamane(b) Jean Philippe Dary(p) Indy Dibongue(g) Yann Jankielewicz(ss) Nicolas Giraud(tp) Nicolas Giraud(flgh) Jean-Jacques Elangue(ts) Rémi Sciuto(bs) Rémi Sciuto(as, fl) Daniel Zimmerman(tb,tuba) Vincent Taurelle(clavinet) Tony Allen(ds)

テナー・サックスとしてクレジットされているヤン・ジョンキエレヴィックスは、共同プロデューサー的な立場でアルバムの方向性を決めた人物とのこと。また上には記載されていませんが、ゲストとしてブラーのデーモン・アルバーンがキーボードとして参加しています。トニー・アレンはセッション・ドラマーとしても活躍しており、デーモン・アルバーンとも共演しているのでその縁でしょう。その他、多彩な楽器が揃ったビッグバンド編成でのセッションとなっています。

 2017年の初めにはアート・ブレイキーのトリビュート盤も発表しており、且つビッグ・バンドでの演奏ということで、モダン・ジャズ以降の伝統を受け継いだ、アフロ・ビート・ジャズをやっています。ゆったりとしたグルーヴを作り出すトニー・アレンのパーカッションとスペーシーなピアノが鮮烈。ふくよかなサックス群のうねりと合わさって、とても神秘的に響いています。てっきりケニー・ドーハムのようなアフロ・キューバンだろうと思っていたのですが、レゲエのリズムとロックの熱狂、テクノの没入感が加わったジャズとして想像を上回るインパクトがありました。

Tony Allen - Ewajo (Album The Source, 2017)
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Thelonious Monk/ Underground

Thelonious Monk/ Underground
1968年 アメリカ
『ジャケとの相乗効果で楽しさ倍増』

 ボブ・ディランの『地下室』と似たジャケットが気になって購入。(調べてみましたが確たる情報は見つからず)セロニアス・モンクは今回で5枚目です。即興と本筋の境界線が見えないような、スリリング且つ美しい旋律を聴かせてくれるピアニスト兼作曲家。
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本作での参加メンバーは以下。
Thelonious Monk(piano)
Charlie Rouse(tenor sax)
Larry Gales(bass)
Tommy Williams(bass)
Ben Railey(drums)
Jon Hendricks(vocal)

 セロニアス・モンクはこの時、50歳。53歳(1971年)には隠居体制に入ってしまうので、晩年の作品ということになります。収録曲は全7曲で5曲目の『Easy Street』のみスタンダードであり、他の曲は全て自作曲となります。

 この時代のセロニアス・モンクは初めて聴きました。ピアノのスタイルが落ち着いている。いや、音数を抑えて表現しようとしているように思えます。これはこれでやはりかっこいい。自在に閃くアドリブも健在です。また、アンサンブルも、モンクのコロンビア期を支えてきたメンバーが多く参加しているだけにコンビネーションはバッチリです。

 個人的に気に入ったのはまず3曲目「Raise Four」。延々と続くと思われるピアノのリフレインから徐々に崩れてアドリブ・パートへ。最初の無愛想な冷たさから一転、お茶目なセッションへと表情が変わるのが楽しい曲です。そしてラストに置かれた「In Walked Bud」。
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Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau

Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau
2017年 アメリカ
『ジャズだけどジャズで敬遠されたらもったいないってアルバムがある』

 ジャケットに惹かれ、1分ほど試聴した後に購入したアルバムです。ピアノとマンドリンの打ち付けるような演奏に情緒豊かな男性ヴォーカルが乗る、というスタイルで、ジャンルはジャズとなっていました。
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雰囲気がいいジャケ、としか言えないのですが好きなジャケです。

 ブラッド・メルドーはフロリダ州出身。1970年生まれの47歳。95年にデビュー作を発表して以来、現在まで19枚のアルバムを発表しているジャズ・ピアニストです。フリー・ジャズを交えた叙情的なメロディー展開が魅力。近年は様々なジャンルのミュージシャンとの共演作を発表しており、本作のその流れに乗っています。ジャズのみならず、クラシックやロックにも興味を持っており、しばしばジャンルを横断している点もポイント。

 クリス・シーリはプログレッシヴ・カントリーのグループとして知られるパンチ・ブラザーズのマンドリン奏者。そういえば、パンチ・ブラザーズの最新作はここでレビューしていたような・・・していましたね

 二人は共にノンサッチというレーベルに在籍しており、その縁でデュオを組んだのでしょう。

 ジャンルはジャズとなっていますが、メロディーはポップで優しいものが多く、とても聴きやすいです。収録曲はオリジナルとカバーが半々という構成。ディランの「Don't Think Twice, It's All Right」やビリー・ホリデイの「I Cover the Water Front」を取り上げています。マンドリン、ピアノ、ヴォーカルというシンプルな構成ながら、寂しいフォーク・ナンバからダイナミックで幻想的な、まるで初期ジェネシスのようなプログレ・ナンバーまで、表情豊かな楽曲群で楽しませてくれます。

 一粒一粒の音がくっきりしていてとても綺麗なピアノ。ブラッド・メルドーという存在を知ることが出来て良かったです。クリス・シーリの在籍するパンチ・ブラザーズの旧作共々、色々集めてみようかな。

 輸入盤で買ったのですが、日本盤が出ているらしくそちらではボートラも入っている模様。買い直そうと思います。

Chris Thile and Brad Mehldau - Don't Think Twice It's Alright (Dylan Cover)
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Terry Smith/Fallout

Terry Smith/Fallout
1968年 イギリス
『モッズをひきずった英ジャズアルバム』

 近所のブックオフで何気なくピックアップして来たもの。テリー・スミスという名前に聞き覚えがあるような、ないような、と思っていたら70年代に英ジャズ・ロック・グループとして活躍することになるIFのギタリストでした。本作はバンド結成前に録音された純粋なジャズ・アルバムです。彼にとって初のリーダー作でもあり。
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クレジットは以下の通り。

Arranged By – Harry South, Jimmy Deuchar
Bass – Ron Mathewson (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Drums – Chris Karen* (tracks: A3, B3), Ronnie Stephenson (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Engineer – David Voyde, Peter Olliff, Roger Wake
Guitar – Terry Smith
Organ – Bob Stuckley (tracks: A3, B3)
Percussion – Denis Lopez* (tracks: A4, B1, B4), Peter Aherne* (tracks: A1, A2, B2)
Piano – Gordon Beck (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Producer – Scott Walker
Saxophone [Alto], Flute – Ray Warleigh (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2), Roy Willox (tracks: A1, A2, B2)
Saxophone [Baritone] – Ronnie Ross (tracks: A4, B1, B4)
Saxophone [Tenor], Flute – Bob Efford (tracks: A4, B1, B4, A1, A2, B2)
Trombone – Don Lusher (tracks: A4, B1, B4)
Trumpet – Derek Watkins (tracks: A1, A2, B2), Greg Bowen (tracks: A4, B1, B4), Kenny Wheeler (tracks: A1, A2, A4, B1, B2, B4), Les Condon (tracks: A4, B1, B4), Tony Fisher (2) (tracks: A1, A2, B2)
Vibraphone, Marimba – Jim Lawless (tracks: A1, A2, B2)

ピアノのゴードン・ベック、トランペットのケニー・ホィーラー辺りは聞いたことがあるのですが、他は勉強不足につき良く分かりません。プロデューサーがスコット・ウォーカーってところは意外です。(違う人なのかな?)

 クレジットを見ても分かりますが、半分はビッグバンドでの演奏となっています。残りの曲もオルガンとギターの絡みが中心となったモッズっぽい仕上がり。1968年ということを考えるとソウル風味がノスタルジーな音楽性ですが、グルーヴィな魅力が強調されていて楽しいです。ガーシュインやバートバカラックの曲を取り上げていることからポップス畑を意識しているのが伺えます。演奏は英ジャズらしいカッチリとしてクールな切れ味が感じられるもの。2分で終わってしまうビッグバンドによるアップテンポ「I Love You」の躍動感が素晴らしい。

動画が無かったです。
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