Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau

Chris Thile & Brad Mehldau/Chris Thile & Brad Mehldau
2017年 アメリカ
『ジャズだけどジャズで敬遠されたらもったいないってアルバムがある』

 ジャケットに惹かれ、1分ほど試聴した後に購入したアルバムです。ピアノとマンドリンの打ち付けるような演奏に情緒豊かな男性ヴォーカルが乗る、というスタイルで、ジャンルはジャズとなっていました。
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雰囲気がいいジャケ、としか言えないのですが好きなジャケです。

 ブラッド・メルドーはフロリダ州出身。1970年生まれの47歳。95年にデビュー作を発表して以来、現在まで19枚のアルバムを発表しているジャズ・ピアニストです。フリー・ジャズを交えた叙情的なメロディー展開が魅力。近年は様々なジャンルのミュージシャンとの共演作を発表しており、本作のその流れに乗っています。ジャズのみならず、クラシックやロックにも興味を持っており、しばしばジャンルを横断している点もポイント。

 クリス・シーリはプログレッシヴ・カントリーのグループとして知られるパンチ・ブラザーズのマンドリン奏者。そういえば、パンチ・ブラザーズの最新作はここでレビューしていたような・・・していましたね

 二人は共にノンサッチというレーベルに在籍しており、その縁でデュオを組んだのでしょう。

 ジャンルはジャズとなっていますが、メロディーはポップで優しいものが多く、とても聴きやすいです。収録曲はオリジナルとカバーが半々という構成。ディランの「Don't Think Twice, It's All Right」やビリー・ホリデイの「I Cover the Water Front」を取り上げています。マンドリン、ピアノ、ヴォーカルというシンプルな構成ながら、寂しいフォーク・ナンバからダイナミックで幻想的な、まるで初期ジェネシスのようなプログレ・ナンバーまで、表情豊かな楽曲群で楽しませてくれます。

 一粒一粒の音がくっきりしていてとても綺麗なピアノ。ブラッド・メルドーという存在を知ることが出来て良かったです。クリス・シーリの在籍するパンチ・ブラザーズの旧作共々、色々集めてみようかな。

 輸入盤で買ったのですが、日本盤が出ているらしくそちらではボートラも入っている模様。買い直そうと思います。

Chris Thile and Brad Mehldau - Don't Think Twice It's Alright (Dylan Cover)
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MR.BIG/Defying Gravity

MR.BIG/Defying Gravity
2017年 アメリカ
『黄金期は原点では無かった。』

 今調べてみると自分のMR.BIG歴は『ACTUAL SIZE』までで終わっていました。一度の解散を挟んだものの、オリジナル・メンバーで再結成。通算8枚目のアルバムです。
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 プロデューサーには黄金時代を支えていたケヴィン・エルソンを起用。またパット・トーピーがパーキンソン病を患っている為、ドラムの録音にもサポートが付いています。

 「原点回帰」という煽りを前面に出している本作。アコースティックなバラードや躍動感とポップなメロディーが合わさったロック・チューンが収録されており、その意図は十分伝わります。元々、フリーの「MR.BIG」という曲名から取られたバンド名を冠しているだけに、ヘヴィなリフを主軸としたブルース・ロックがいくつか収録されているのがポイント。これがポップな楽曲よりも主張が激しい為、全体的には地味で渋い印象を受けてしまう結果に。『LEAN INTO IT』制作スタッフが再び集結、などと書かれているのでついつい比べてしまうのですが、華やかさ、曲のクオリティで足りていないと思います。とびきりポップなキラーチューンや有無を言わさぬ勢いが無いので仕方ありません。

 ただ比べることを止めれば、どっしりとしたグルーヴ感が楽しめるブルース・ロック作として十分な出来だと思います。変わらぬソウルフルな喉を披露しているヴォーカルを初め、
年相応の落ち着きを見せる各メンバーそれぞれの演奏は相変わらず素晴らしい。
『LEAN INTO IT』制作スタッフ云々を抜きにして、もう一度原点回帰というキーワードで連想すると、
ファーストってこういう地味で渋いアルバムだったかもしれない、などと思いました。

Defying Gravity
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Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962

Lowell Fulson/Reconsider Baby: The Complete Checker Singles 1954-1962
1950年代 アメリカ
『違いが分からない男のブルース・レビュー25』

 2016年6月以来のブルース記事、ついに復活。本日はロウエル・フルソンを取り上げます。

●経歴
 1921年、オクラホマ州タルサ生まれ。10代の頃からタップ・ダンサーとして活動しており、音楽に理解のある家庭で育ったとのこと。尚、この頃にはテキサス・ブルース・スタイルのバンドに参加していました。成人した1940年代にカルフォルニアへ移住。これを機にブルース・シンガーとしての活動を開始します。彼は時代毎に音楽性を変えています。まず初期(45年~50年頃)は地元カルフォルニア周辺のレーベル(複数)での伝統的なテキサス・ブルース。続いて中期(50年~64年)にはチェッカー・レーベルに移籍。ピアノ、サックスを加えたバンドを結成し、スロー・テンポのブルースを指向しています。ここでは自身のルーツであるゴスペルの要素が加わっているのも特徴。同じく中期の後編としてメジャー・レーベル、ケントに移籍していた時代があります。(64年~)ロックンロール誕生期にあたる、この時期ではビートを強調したブルース・ナンバーでヒットを生んでいます。以後も地道な活動を続けており、1980年には来日公演も実現しています。1999年にカリフォルニア州ロングビーチにてなくなったとのこと。戦後モダン・ブルースの歴史を作った一人です。尚、B.B.キングに影響を与えたブルースマンとしても知られており、B.B.キングは「眠れる巨人」と称していたそうです。

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50年代のロウエル・フルソンと言えば、この写真で決まりだ!笑顔が決まっています。

●チェッカー・レーベルでのロウエル・フルソン
先に書いたように、この頃の彼は弾き語りからピアノ、サックスを加えたバンドへと表現方法を変えています。ピアノはロイド・グレン、アルト・サックスはアール・ブラウンが担当。ソウル、ゴスペルの要素も多く含んだスロー・ブルースが中心です。歌、ギター共に派手さはありません。バンドとしてのサウンドを重視しており、あまり前に出ないのも特徴。ただし、生活感の滲み出る泥臭くもソウルフルな歌唱、ロープ・ギターと自称するザクザクとうねるギター、ともにインパクト十分。ここぞという時の存在感は十分です。曲は技巧で聴かせるというよりはムードを重視しており、ポップなものが多い印象。ゴージャスな雰囲気満点のねっとりとしたサックスと、穏やかに跳ねるピアノも、素晴らしい。

Reconsider Baby
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BARTOK:CONCERTO FOR ORCHESTRA & MUISC FOR STRINGS,PARCUSSION AND CELESTA etc./FRITZ REINER:CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA

BARTOK:CONCERTO FOR ORCHESTRA & MUISC FOR STRINGS,PARCUSSION AND CELESTA etc./FRITZ REINER:CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA
1955&1958年 アメリカ
『失った故郷を思う曲』
 久しぶりのクラシックCDレビュー。今日はバルトークを学ぼうと思います。以下、解説などを参考に書いたものです。

●バルトーク・ベーラについて
1881年生まれ。ハンガリーで育った彼ですが、1940年にアメリカへ亡命しています。そのきっかけは1931年のこと。イタリアの指揮者、トスカニーニはボローニャでファシスト党賛歌の演奏を拒否して、暴徒から殴打される事件が起こりました。トスカニーニはこれにより国外追放。トスカニーニに触発されたバルトークは、ドイツでの演奏を拒否するなど反ナチスの思想を行動で示しました。結果としてヨーロッパでは生きづらくなり、身の安全も確保できなくなった彼は母の死を機としてアメリカへ亡命したのでありました。亡命先のアメリカでは音楽活動が思うようにいかず、ライフワークであった民族音楽の研究により没頭するように。しかし同じベルギー出身の指揮者フリッツ・ライナーが支援したことにより復活。1944年には民族音楽の研究をクラシックへと転化させた「管弦楽のための協奏曲」という傑作を生みだしたのでした。バルトークはその翌年、1945年に亡くなっています。ナチズムに勇気をもって抵抗した結果、自身の故郷を追われ、作曲家としての評価も失ってしまったバルトークですが、最後に作曲家として活躍することが出来て良かった。

●アルバムについて
先述したハンガリーのライナーが指揮したアルバム。彼は指揮棒を最小限の動きで細かく振るベスト・ポケット・ビート〈チョッキのポケット式のビート〉というスタイルで知られています。抑揚のメリハリ、爆発力が特徴。録音当時となる1950年代半ばは、彼にとって世界的な名声を得ていた全盛期。バルトークの名演として知られるアルバムです。
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管弦楽のための協奏曲
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Bedouine/Bedouine

Bedouine/Bedouine
2017年 アメリカ
『穏やかなフォーク・ナンバーをオルガンやストリングスが幻想的に彩る』

 穏やかなフォーク・ナンバーをオルガンやストリングスが幻想的に彩る。かつてアメリカ西海岸で流行したSSW作品をそのまま受け継いだようなアルバムです。

 ベドウィンという名前でデビューしていますが、本名はアズニヴ・コーカイアンだそうです。アルメリア人の両親の元シリアのアレッポで生まれ、サウジアラビアで育ち、やがてグリーンカードを得て、アメリカへ移住。ボストン、ヒューストン、レキシントン、オースティン、サバンナと転居を繰り返し、現在はロサンザルスに住んでいます。映像音楽ディレクターとして働いている彼女(30代)は、ジョニ・ミッチェルやレナード・コーエンからの影響を受けているとのこと。仕事の関係で、マシュー・E・ホワイトと交流を持つことが出来、それを切っ掛けとしてプロデューサー、ガス・シーファート(アデルなど)の協力も得て、今回のデビュー作を完成させました。尚、ベドウィンという名前はアラブ系の遊牧民から取られています。
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 マシュー・E・ホワイトが所属するSpacebomb Recordsからのリリース。ストリングスやオルガンによる幻想的でサイケデリックなアレンジはレーベル・カラーと言っていいでしょう。ヴォーカルについては少し声量が物足りないところがありますが、独白調で落ち着いた歌声は魅力的。紛争地帯で育ったこともあり、アメリカからの武器供給などについての政治的なメッセージも含んでいるとのこと。歌声は悟ったように落ち着いていますが、退廃的でダークなムードも多々あり。ポエトリーリーディングっぽい曲があることも含めて、なるほど、レナード・コーエンの影響を感じることが出来ます。
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One of These Days
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