PJ Morton/Gumbo

PJ Morton/Gumbo
2017年 アメリカ
『ナイス!スティーヴィー・ワンダー・フォロワー』

 スティーヴィー・ワンダーのフォロワーにして、正統派のニューソウル。絹の歌声と華麗なストリングスによる柔和なメロディーが、トロトロにしてくれます。

 PJモートンという方は新人SSW、だとばかり思っていましたが無知でした。マルーン5の鍵盤奏者だったのですね。2013年、ニューオリンズの地にマルーン5のツアーで初めて訪れたPJモートンは、音楽の坩堝である熱気に圧倒されソロ活動を決意。フェイスブックの影響を受けたミュージシャンの欄にはシンプルに「スティーヴィー・ワンダー」としか書いておらず、色濃く影響されたことが伺えます。2013年にはそのスティーヴィー・ワンダーとの共演を果たした「Only One」を発表しグラミー賞のベスト・オブ・R&Bソングを獲得。以降、楽曲制作を続けた成果がこのデビュー作になりました。
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ジャケも正しく70年代ニューソウルを彷彿とさせます。

 スティーヴィー・ワンダー(三部作時代)が乗り移っているかのような、そのまま過ぎる音楽性が潔い。実際の所、ラップを披露していたり、アフロっぽいリズムを取り入れたり、一部でのボイス・エフェクトなど、異なる部分もあるのですが、それでもアルバムを聴きとおしてみると「スティーヴィー・ワンダー」という単語だけで十分だと感じます。これは褒め言葉です。「この曲のオリジナルってスティーヴィー・ワンダーだよね、なんて曲だっけ?」という人が現れても驚かない完成度。ラストに入っているのがビージーズのカバー「How Deep Is Your Love」(愛はきらめきの中に)も「らしい」仕上がりになっています。

CLAUSTROPHOBIC feat. Pell
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Balto/Strangers

Balto/Strangers
2017年 アメリカ
『よそものとして自身のルーツを探求する』

 引退してしまいましたが、把瑠都というお相撲さんがいました。あの方の名前は自身の故郷である旧エストニアが面していたバルト海から取られたものだそうです。そして本日、ご紹介するバルトというグループ。そのリーダーであるダニエル・シャロンはシベリア(ロシアの南東部)にある、バイカル湖のほとりで生まれ育ったとのことで、やはりバルト海からグループ名を取っています。(バイカルでも良かったのでは、と思わなくもない)

 幼少期をシベリアで過ごしたダニエルは、オレゴン州ポートランドへ移住。そこで2010年に結成された4人組のグループがバルトです。アメリカーナのルーツを探求しているダニエルが音楽性をリードする形でファースト・アルバムを完成させました。オレゴン州にある農業島(田んぼとかしかないのかな)のスタジオを発見した彼らはそこに数多くの楽器を持ち込み、9日間籠って作り上げたとのこと。アルバムでの音楽を「Mercurial(気まぐれな)」アメリカン・ロックンロールと命名しています。
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うーん、このジャケだと中古新入荷でエサ箱漁っててもスルーしちゃいそう。

 メンバークレジットにはありませんが、鍵盤が大活躍しています。ギター、鍵盤ともに残響のある高音が印象的な、抜けのいいアメリカン・ロックをやっており、この辺りは看板通りのサウンド。ただダニエルの出自が影響しているのか、メロディーには哀愁が漂っており、とにかく湿っぽい。アメリカ特有のカラッとしてサウンドとは一線を画しています。隙間が多く、土着的な雰囲気を醸し出しているのも特徴です。これがシベリアの風土なのかは分かりかねますが、異邦を感じるのは確か。感傷的にコブシを回すヴォーカルが素晴らしい。
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 ダニエルはシベリアで孤独な幼少期を送っていたそうです。その後、アメリカに渡ってからはアメリカーナを探求するほどアメリカの音楽を愛しつつも、いざ表現するときには自身のルーツであったシベリアの音が混ざってしまうことに気が付いたのでしょう。そして吹っ切れたタイトル『Strangers』。だからこその個性が発揮されています。次回作が楽しみ。

Balto - Shots In The Dark
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Rachael Kilgour/Rabbit in the Road

Rachael Kilgour/Rabbit in the Road
2017年 アメリカ
『情緒でもたれ気味』

 ミネソタ州ミネアポリス出身のSSW、レイチェル・キルガー。2009年にセルフタイトルのデビュー作を発表。これまでにアルバム2枚とミニアルバムを1枚リリースしています。2013年に結婚した後、一度音楽活動から離れましたが、2015年に再び活動を開始。その年に、ニューソング・ミュージックが主催するコンテストを二つ受賞しています。本作は3枚目のアルバムです。
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 情緒豊かなフォーク・ミュージックが並んでいます。アコギ弾き語りを主軸に、ピアノ、シンセ、フィドル、リズム隊という編成。情緒をたっぷり込めたヴォーカルとそれに寄り添うストリングス・アレンジが聴きどころで、トラッド由来のメロディにもメロウな雰囲気がたっぷり加えられています。

 1枚通して聴くと少しもたれる感じはあり。ただ、睡眠前に聴いていると心地よく眠りに付けるので、リラックス効果は大です。

Rabbit in the Road (Live from Studio A)

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Real Estate/In Mind

Real Estate/In Mind
2017年 アメリカ
『気怠さが強調された新作』

 のどかで夢見心地なネオアコ、ギター・ポップで人気を博しているグループ、リアル・エステート。前作から3年を経て4thアルバムが到着しました。
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 アメリカ、ニュージャージー州出身。2009年にデビューした5人組のポップ・バンドです。尚、今回メンバー・チェンジがあり、ギタリストのマット・マンダニルが脱退した代わりに、ジュリアン・リンチが加わっています。
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 前作の延長線上といえる作風で、気怠いヴォーカルとゆらゆらとした陽炎ギターは健在。ギタリストの交代を経ても軸はしっかりしています。そうはいってもマットは中心人物だったようで、その分ヴォーカルが存在感を増幅。インストパートは大人しめ(唐突に挟まれていたインスト・ナンバーも無し)で、ヴォーカルとコーラス、エコーによる気怠さがより強調されている印象です。インスト・パートではピンク・フロイドっぽいサイケデリックなループを数か所で聴くことが出来、それは不穏でダークな雰囲気。気だるいというよりも鬱屈という感じです。こうなると不在だったマットのギターこそが、気怠くなりがちなバンド・サウンドに煌めきをもたらしていた、と気づかされる次第。

 それでも、どんよりとしたインスト・パートで前曲が終わった後のキラキラしたキーボードのイントロ、といったコントラストは素晴らしく、このアルバムの魅力だと思います。加えて、新加入ゆえの遠慮がジュリアンにはあったと思うので、次回作以降での新しい方向性に期待です。

Stained Glass
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Thundercat/Drunk

Thundercat/Drunk
2017年 アメリカ
『80年代のプログレのような、目まぐるしくも楽しい音楽』

 半魚人現る、という感じの強烈なジャケを切っ掛けとして聴いてみました。フュージョン、ソウル、テクノ、サイケ・ポップなどを混ぜ合わせた、幻想的なポップ・ソングが次々表情を変えて現れるカラフルなアルバム。既に様々なHPにレビューが掲載されていますが、その注目度も納得。楽しいアルバムです。
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 サンダーキャットは、ロサンゼルス出身のベーシスト。16歳の頃、スイサイダル・テンデンシーズのメンバーとして抜擢されることでプロデビュー。(彼の音楽性からすると意外な経歴です)セッション・プレイヤーとしてエリカ・バドゥなどの作品へと参加した後、2011年よりソロ・ミュージシャンとして音楽活動を開始しています。本作は3枚目のアルバム。
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 プロデューサーとしても活動しており、ミュージシャン仲間からも評価が高いサンダーキャットだけに人脈が広く、ゲストが豪華。ケニー・ロギンス、マイケル・マクドナルド、ケンドリック・ラマー、フライング・ロータス、ファレル・ウィリアムズ等々。

 土台となっている音楽はフュージョンですが、ソウルの持つ温かみとテクノ・ビートによる無機質さが混ぜ合わさった結果、極上のサイケデリック・ミュージックに仕上がっています。影響されているのかは不明ですが、ソウル、テクノの要素を取り入れたイエスやバグルスのような、80年代のプログレのような、目まぐるしくも楽しい音楽だと感じました。1分台を多く含んだ20曲という曲数をスムーズに聴かせる構成力もプログレッシヴ。先述したゲストを引き立たせる楽曲、アレンジが用意されており、それがカラフルさに拍車を掛けています。

Thundercat - 'Show You The Way (feat. Michael McDonald & Kenny Loggins)
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